第27章:「交わる心、そして賢者の声」
幻想郷――人間の里の中央広場。
そこには色とりどりの国旗と、幻想郷の意匠が融合した万国博覧会場が広がっていた。
幻想郷住民と外の世界の人々――兵士、外交官、子ども、巫女、妖怪たちが共に笑い、食し、語り合う姿があった。在日米軍高官『こういうのだな…我々が守るべきものは…』在日米高官は隣に居た宮永陸将補に話しかけ談話を始める
その談話に興味を持った慧音等が参加する
各国の展示ブースは常に賑わい、幻想郷の少女たちも積極的に足を運ぶ。
魔理沙がアポロ計画で使用された宇宙服を着てはしゃぎ、早苗はフランスの料理人と語り合い、天子は韓国の伝統衣装を着て記念撮影していた。
その光景を見守る韓国代表は
『我々はいつか分かり合える、そのために努力を怠らないように』と静かに語る
◆ 一方その頃、世界の首脳陣は…
その平和な表舞台の裏側では、外の世界の緊張はなお続いていた。
東京・永田町、ワシントンD.C.、ロンドン、パリ、ソウル、キャンベラ、ベルリン――
各国首脳陣が安全回線で電話会談を行っていた。
通話先には、幻想郷を代表する賢者の一人――茨木華扇の姿があった。
彼女は静かに、しかし毅然と語る。
「私たち幻想郷は、戦争のためにこの扉を開いたわけではありません。
私たちは理解と共存の可能性を信じている――それが“外”のあなた方にも届くと、信じています」
その声を、石破総理が丁重に受け止める。
「我々日本政府も、幻想郷の自治を最優先に考えています。
国際法上の特例、外交的地位、文化的保護――その全てを今、世界と調整中です」
華扇の後ろでは、紫、八意永琳、蓬莱山輝夜、さらに守矢神社の面々や聖白蓮なども控え、緊張感をもってその会議を見守っていた。
イギリス政府高官で若きエリートのリチャード・スチュアートは、電話越しにその光景を想像しながら、ふと呟いた。
「……まるで現代の円卓会議だな。
だがこの会議には、かつての“王”や“騎士”よりも、ずっと清らかで意志ある者たちがいる」
◆ 平和の灯、幻想博の熱気
その一方で、「幻想博」には温かな時間が流れていた。
・自衛官たちが子どもに敬礼され、思わず涙をこらえる姿
・BBC記者団と文が真剣に報道の自由について語り合う場面
・イタリア代表と魔理沙が英語で“魔法”について熱弁を交わし、会場が爆笑に包まれる場面
『大使は何を言っているんだ…』
大使の側近等は苦笑いしつつもユーモア溢れるその姿に感銘を
受けていた
そこには国家の威信や軍事的圧力ではなく、“わかり合いたい”という心があった。
一人の小さな里の少女が、カナダの女性兵士に言う。
「また来てくれる? ……怖くないから、もう、ね」
その手を取った兵士の目には、涙が浮かんでいた。
母国に残してきた自分の家族を見出したのだろう
◆ 言葉の壁を越えて
無数の言語が飛び交う中で、それでも人々は理解しようとしていた。
「我々は複雑化する世界の中で、大切な“なにか”を失ったのではないか?」
そう語ったのは、参加していた国連職員の一人だった。
そしてその言葉に、ふとマクファーソン准将が目を伏せ、あるフレーズを思い出す。
「Ask not what your country can do for you — ask what you can do for your country.」
――『国家があなたに何をしてくれるかを問うのではなく、あなたが国家に何ができるかを問え』
(ジョン・F・ケネディ)
その言葉が、幻想郷の空に新たな意味を持って響く。
そして、彼は静かにつぶやいた。
「この地で……我々は“何をできる”のだろうな。守るべきは、きっと……」
彼の視線の先には、祭で笑い合う幻想郷の少女たちと、それを見守る兵士たちの姿があった。