紅き記憶、黒の回廊」
湿った空気が流れる地下通路。
その奥――厚い鋼鉄扉の内側に、魔理沙は座り込んでいた。
手足には拘束具。
頭には微弱な電磁干渉が残る神経インターフェース装置の名残。
光の差さない空間に慣れた目が、扉の微かな揺れに気づく。
「ん……?」
金属音とともに扉が開く。
そこに現れたのは、黒い戦闘服を纏った兵士だった。
肩にはアメリカ海軍のパッチ。無言で腰から鍵を取り出し、錠を解除していく。
「あんたは……?」
「アメリカ海軍だ、さぁ……帰るぞ」
兵士の声には感情の揺らぎはない。だが、その背に感じたもの――"希望"。
ふらつきながら立ち上がった魔理沙が、その手にすがる。
「……夢じゃない、よな」
兵士は軽く頷くと、インカムで短く通信。
「ナッシュよりゼロワン、対象確保。回収準備完了。合流ルートを指示されたし」
【別動隊:中央制御室】
中央制御室では、CIA戦術チームのハッシュ大尉が、研究責任者・バルコフをSIG MPXの銃口で追い詰めていた。
「終わりだ、バルコフ。手を挙げろ!もう逃げられんぞ!」
バルコフは顔を歪め、薄く笑う。
「貴様らの勝利だと思っているのか?……私は、死んでも任務を果たす」
そう言うと、左手をわずかに上げ、監視塔に向けて手信号を送った。
パンッ!!
鋭い銃声。
次の瞬間、バルコフの額に血の花が咲いた。
「スナイパーだ!! 11方向、監視塔!」
ハッシュ大尉が叫ぶ。
「くそっ……アルファ4-3からブラボー1-2へ!そちらから75メートル、11時の塔に狙撃兵!SR-25で抜け!」
【ブラボー1-2】「了解、狙撃する。ターゲットロック、風3m西、補正完了……撃つ」
再び銃声――
監視塔の影から覗いたスナイパーが、首を撃ち抜かれて沈む。
(……研究者は、捕虜になって情報を吐くより、死を選んだ)
【脱出:魔理沙、咲夜との再会】
合流地点。
魔理沙はふらつく足で歩きながら、誰かの姿に気づいた。
「……咲夜……?」
スモークの奥から現れたのは、十六夜咲夜だった。
「無事でよかった……ほんとに……!」
咲夜は駆け寄ると、思わず魔理沙を抱きしめた。
魔理沙は顔を少し上げて呟く。
「……あんたらに、話しておきたいことが……。この場所で起きたこと……誰かが……あたしの記憶に……」
「後にして……いいから」
咲夜はその言葉を優しく遮った。
「まずは――帰るわよ。潜水艦 【グリーンビル】が待ってる」
【最終フェーズ:潜水艦脱出】
バンカー25を脱出した部隊は、森を抜け、夜の海辺へ急行。
そこで浮上していたのは、アメリカ海軍ロサンゼルス級
原子力潜水艦「グリーンビル」。
甲板には、SEALs専用に改良された回収装置(DDS:Dry Deck Shelter)が開き、浮上した小型揚陸カプセルがスタンバイしていた。
「全員、乗艦完了! 潜航開始!」
ハッチが閉じられ、潜水艦は音もなく海中へ消える。
任務完了の無線が暗号回線を通じて送信される。
《こちらネプチューン・ゼロ、グリーンビル。対象回収完了、帰還行動に移る》