第20章:「人間の里にて ― 静かな希望」
紅魔館を後にした各国の大使たちは、幻想郷における最も人間らしい暮らしが残る場所――人間の里へと足を運んだ。
日が傾き、柔らかな橙色に染まった空の下、
小さな広場では、NATO軍や自衛隊の兵士たちが村の子供たちと輪になって遊んでいた。
「ほら、もう少し右だ!」「それ、それ!」
米軍兵士が手作りのサッカーゴールに向かって、子供と一緒に笑いながらボールを蹴り込む。
その傍らでは、日本の自衛官が焚火の前で年配の村人に
カップラーメンの作り方を教え、
若い村娘たちは自衛隊の車両(73式大型トラック・高機動車)を興味深そうに見つめながら、英語と片言の日本語で会話を試みていた。
イギリス大使 リチャード・ベネットは、その様子を見てふと立ち止まり、帽子を取って小さく息をついた。
「……これが我々の世界ではほとんど見られなくなった光景だな」
隣にいたカナダ大使が静かに頷く。
「言葉が通じなくても、人は互いに笑い合える……それだけで何かが変わると、私は信じたい」
大使たちの誰もが、目の前に広がる小さな平和の光景に、かすかな希望を見出していた。
それは外交の駆け引きの中では見落とされがちな、もっとも根源的な“平和”の在り方だった。
子供が笑う声。兵士が冗談を飛ばす声。
賢者の一人、八雲紫がベンチに腰掛け、その様子を遠くから静かに見守っている。
言葉を超えて我々は交流する
誰一人、外交的な発言はしなかった。
この場では、握手もスピーチも不要だった。
ただそこにあるのは、「まだ希望はある」と思わせてくれる人と人との触れ合い。
オーストラリア大使が、近くの少年に手を振ると、
少年は恥ずかしそうにしながらも、満面の笑みで手を振り返した。オーストラリア大使も僅かに微笑みながら日本語で"『少年、気を付けて遊ぶんだぞ』と声を掛けた、『はーい!』少年の返事が返ってくる…短い会話だが確実に伝わるものがある
その横で側近等は笑顔をこぼす…今まで背負ってきた肩の荷が落ちたような雰囲気だった
人間の里の茶屋でフランス代表は、手帳に静かにこう記した。
「幻想郷はまだ“孤立した国”ではない。
ここに暮らす人々と、彼らを守ろうとする兵士たちが希望を繋いでいる。
言葉はなくとも、我々にできることは、まずこの希望を守ることだ。」
そして未来へ紡ぐべきものであると
夜が来れば、また紅魔館での会談が始まる。
中国、ロシア、そして西側諸国の緊張も、決して去ったわけではない。
それでも――
この人間の里に吹く風は、どこか懐かしく、温かい。
その静かな時間の中で、兵士たちも、住民も、外交官たちも、
それぞれの胸に「何かを守らねばならない」という思いを抱き始めていた。特に外交官や軍人は自分達の持つ能力を最大限生かそうと考えていた、そのための外交・軍事力であることを信じて それが、どんな言葉よりも強く、深く、静かに伝わっていた。