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【忍び寄る赤い影】


幻想郷・シエラデルタ基地


シエラデルタ基地のメインエントランス前、午前の太陽がやや高く昇るなか、1台の軍用トラックが静かに滑り込んできた。乗っていたのは、新たに配属されたフランス軍兵士4名と、東欧出身の核技術者たち。彼らは、それぞれ正式な軍服とIDを携え、装備・身なりともに不審な点は見られない。


タラップの下で待っていたのは、NATO幻想郷派遣部隊司令官――マクファーソン准将である。


「ようこそ、諸君。シエラデルタ基地司令のマクファーソン准将だ」


准将は一人ひとりと目を合わせ、しっかりとした握手を交わしていく。フランス兵たちは礼儀正しく頷き、続いて、後方にいた技術者の一団が前に出た。


「さっそく、核融合炉を視察したいのですが」と一人が口を開く。


「わかっています。ラミレス大尉!」


「はっ!」


呼ばれたラミレス大尉が小走りで近づく。彼は敬礼しながら応じた。


「技術者の皆様を地下間欠センターへ案内して欲しい』


「はっ!車両(M-ATV)をすでに手配しております。ご案内します、こちらへどうぞ」


技術者の一団は無言のまま、ラミレス大尉率いるアメリカ軍兵士に従って基地内部へと消えていった。


マクファーソン准将は、残ったフランス兵に向き直る。


「さて、君たちに紹介しておこう――マルク大尉、そして朝田三佐だ」


背後から現れたのは、フランス人の将校エマニュエル・マルク、そして陸上自衛隊の若き佐官、朝田寛人三佐だった。


「マルク大尉だ」


「朝田三佐です。よろしくお願いします」


「ハッシュ中尉です!」


「フォルシュ少尉です!」


「レオナルド中尉です!」


「スペッシュ少尉です!」


4名の“フランス兵”たちは力強く敬礼し、順番に握手を交わしていった。


「君たちの任務は――」マルク大尉が口を開いた。


「霧雨魔理沙の護衛だ。朝田三佐と我々と共に、彼女を守ってもらう」


「了解!!」


「では、案内します。車(三菱ジープ)が外に待機してあります、ついてきてください」


「我々はPVP装甲車で後ろから同行する」


一行は準備を整え、幻想郷の広大な森と山道へと向かって出発した。


同時刻:シエラデルタ基地・司令部棟内

監視モニターを見つめていたケース少佐が、僅かに眉をひそめる。


「……なんだ、あのフランス兵……。何か違和感があるぞ。それに技術者たちも……」


「ケース少佐?」後ろから声をかけたのは、マクファーソン准将だった。


「どうしたんだ?」


「准将、先ほど出て行ったフランス兵と技術者、本当に正規の人員なんですか?」


「もちろん。私も事前に彼らの経歴には目を通した。確かにフランス軍と、東欧の核エネルギー技術者だが……?」


ケース少佐は警戒心を隠さずに言葉を続ける。


「にしては……あまりにも口数が少なく、目線が妙に周囲を警戒していました。まるで、何かを探っているような……」


「……気になっているなら、調べて構わん。アレン少佐をつけよう」


「ありがとうございます。もう一度、彼らの身元を洗い直してみます」


博麗神社・境内

ジープが神社前の坂道を登りきり、砂利の上で停止した。続けてPVP装甲車が停まり、後部ハッチが開く。


「おーい!」


「戻ってきました」朝田三佐が声を上げる。


神社の縁側に座っていた霊夢と魔理沙が、顔を上げた。


「おかえりなさい」霊夢がやや微笑む。


「よう!」と元気に手を振る魔理沙。


だが、その瞬間――。


フランス兵の一人の目に、一瞬だけ鋭く獣のような視線が走った。まるで、ターゲットを確認したかのように。


すぐにその表情は消え、彼らは軽く敬礼をして名乗り出た。


「今度、一緒に任務に当たるフランス兵だ。よろしく頼む」マルク大尉が紹介する。


「よろしくお願いします」


「よろしくね。博麗霊夢よ」


「私は霧雨魔理沙! よろしくな!」


挨拶を交わすその裏で、静かに始まっていた――赤い作戦の“第一段階”が。

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