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第88章:闇より来たる影

 

「なに?!オーストリアでまたテロだと?!」

司令室に怒声が響いた。通信端末からの報告を受けた直後、マクファーソン准将は机を拳で叩いた。


「はっ!」

アレン少佐が手早くタブレットを操作しながら答える。

「先程の報告によれば、ウィーン市内にて銃撃事件が発生。容疑者は『ガザを解放せよ!』と叫びながら通行人を無差別に銃撃、警察の対応によって射殺された模様です」


「……くっ。去年も、その3ヶ月前も同じだ。やはりパレスチナ関連か……」


「当局もその可能性を視野に入れています。容疑者の身元は現在調査中ですが、背後関係は不明。ただし、過激派ネットワークとの接点があるとの情報も出ています」


マクファーソンはしばらく黙考し、やがて低く息を吐いた。


「それともう一件、日本政府からの報告があります」

アレンが続ける。「島嶼防衛の一環として、極超音速滑空体の試験配備が進められています。また、24式装輪装甲車・11式改対空ミサイルの実戦配備、さらに12式地対艦誘導ミサイル改の前線展開も発表されました」


マクファーソンの表情が険しくなる。

「……何かあったのか?」


「はっ。本日午後1400時頃、尖閣諸島沖にて、中国海軍空母《遼寧》《山東》の航行を海自のP-1哨戒機が確認しました。現在、海上自衛隊の護衛艦"ありあけ"が哨戒監視を続行中です」


「そうか……。台湾有事も、もはや『いつ』ではなく『どこで』の段階に入ったか」


「そのように見えます」


マクファーソンは重々しく頷いた。


「少佐、中国側の動きは海上自衛隊と連携し監視を継続してくれ。そして……オーストリアの件。ハマスやヒズボラとの関連を徹底的に洗え」


「了解!」

アレンは敬礼すると、即座に司令室を後にした。


室内に再び静寂が訪れる。マクファーソンは無言で端末を操作し、暗号通信ラインに接続する。


「やはり…あの部隊が必要になるか…こちらマクファーソン。コードネーム“レッドフォックス”。……あの部隊を動かす。『ゴーストフォース』を要請する」


その頃、幻想郷南部の森林地帯で、グロウラーITVにて哨戒中のアメリカ海兵隊が異変に気付いた。


「フレド、あれを見ろ。MTVRか?あんな塗装……黒すぎねぇか?」

「またクロウの連中か?FOGか?いや、ベクターハウンドじゃねえ…」


ナンバープレートも、所属部隊の記章も一切なし。ただ、静かに暗闇の中を進む黒い車列。


翌未明。霧の立ちこめる幻想郷の外縁部にて、それは現れた。


黒い戦闘服にナイトビジョンゴーグル、JSOCのワッペンを肩に貼り付けた特殊部隊員たち。顔には特徴的なゴーストマスク。装備はSCAR突撃銃にMk45拳銃、戦闘ナイフとホルスター、すべてが実戦仕様で構成されている。


「よく来てくれた、諸君……」


マクファーソン准将がゆっくりと前に進み出る。彼の声は、確信と期待に満ちていた。


敬礼する影の男――部隊指揮官と思しき人物が前に出た。


「ケース少佐、報告せよ」


「はっ!マクファーソン准将」

彼は迷いなく答える。「我々ゴーストフォース、要請に基づき即時展開を完了。全員、現地適応訓練済み、作戦行動準備完了です」


マクファーソンは短く頷いた。


「ケース……お前がいてくれて助かる。今回の件には、ロシアが深く関与している可能性がある。幻想郷もその標的となる恐れがある。お前たちの力が必要だ」


「我々は常に影にあって祖国を守る――その使命に変わりはありません」

ケースは静かに言った。


「……頼む。幻想郷の彼女たちを、そして未来を守ってくれ」


「イエッサー!」


その瞬間、幻想郷に新たな影――“亡霊部隊”が降り立った。

影の中から、戦場を見据える目が、確かに光っていた。


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