表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/218

黒い計画の輪郭


漆黒の闇が幻想郷の夜を覆う頃、一機のU-2偵察機が高空を静かに滑空していた。ゴッドアイ・レーダーがその機影を捉えるも、シエラデルタ基地の対空監視部隊はあえてスクランブルを出さなかった。明確な命令が横田基地から下っていた。


その頃、博麗神社では、霊夢がぼんやりと空を見上げていた。


「……また、あの黒いやつ?」


隣にいた魔理沙が呟く。「なんか、前のと似てるけど、違う。もっと……不気味だ」


一方、地上のシェルター内、NATO合同情報本部。マクファーソン准将は表情を曇らせながら、壁面に映し出されたU-2の飛行経路を見つめていた。


「ジョン、なぜCIAが動き始めたんだ?」


ジョン・マクファーレン中将はため息をつく。「マク、この件は国防総省からの直接命令だ。“魔理沙計画”……耳にしたな?」


「まさか、名前だけの脅しではなかったのか?」


ジョンは、次のスライドを表示する。そこにはロシア連邦保安庁(FSB)傘下の特殊作戦司令部が作成したとされる文書の抜粋が記されていた。


極秘文書「ПРОЕКТ: МАРИСА(プロエクト・マリサ)」

目標:幻想郷の要人である霧雨魔理沙を拉致・洗脳し、西側高官・幻想郷指導者への心理的打撃および暗殺任務へ転化

手段:西側兵士に偽装した特殊部隊による接触後、麻酔剤を使用し確保。旧ウラジオストク海軍施設に移送。閉所環境・薬物誘導・虚偽情報により認知変容を誘導

背景装置:「ザリヤ物理転送装置」(量子テレポーテーション+核融合エネルギー)を用い、幻想郷⇔現実世界間の短期移動を実行

マクファーソンの眉がぴくりと動いた。「MKウルトラの亡霊が、ここまで来たというのか……」


「それだけじゃない。奴らは幻想郷の“地下間欠センター”をターゲットにしている。君はあの核融合炉の意味を知っているはずだ」


「守矢神社と河童たちの共同開発。地熱と磁場制御、太陽風のエネルギー応用……それが幻想郷の安定の要だ」


「だからこそ、彼らは狙う。事故を装ってブラックアウトを起こさせ、デモを誘発させる。そしてそのデモに西側への敵意を植えつけた“共産系扇動員”を送り込む。幻想郷を、混乱の火種にするつもりだ」


同時刻、永遠亭では輝夜が言葉少なにレーダー情報を確認し、永琳が深く息を吐いていた。


「月のものではありませんね。あれは地上の…軍用機です」


「紫も呼ぶべきでしょう。これは、政治の話になるわ」


博麗神社の裏手、特設会議室。依姫が、淡く光る装甲服を纏い、慎重に足を踏み入れた。対面には日本の中谷防衛大臣、マクファーソン准将、マクファーレン中将、南雲司令、吉田統幕長、アメリカ大使らが揃っていた。


「私たち月の民は、地上の秩序に干渉すべきではないと考えてきました。しかし、貴方方がここまで真摯に幻想郷を守ろうとしているのなら、話を聞かせてください」


中谷防衛大臣が頷いた。「地政学的に見て幻想郷は、ユーラシア・太平洋・北極航路の交点に位置し、仮にこれが現実の国土であったならば、NATO・米国・ロシア・中国が黙っているわけがない場所です」


「しかも、魔力を用いずとも実用可能な“核融合炉”や“地熱システム”、貴重な鉱物資源を保有している。幻想郷が単なる幻想ではなく、現実世界に物理的影響を与える以上、もはや“幻想”では済まされません」


依姫は静かに頷いた。


「……わかりました。では、私もこの“現実”に立ち会いましょう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ