【支える力・繋ぐ力を持って】
朝靄の中、幻想郷駐屯地の一角。重機と工兵装備を積んだ車両が静かにエンジンを鳴らす。
その中心で、山森一佐が声を張り上げた。
「今度は災害後のインフラ復旧訓練を行う!」
「良いか!インフラは生命線だ!道路・水道・電力・通信、これらが止まれば、避難所も救助活動もすべて機能を失う!」
隊員たち、郷土防衛隊、そして幻想郷の協力者たちが静かに頷く。
「一刻も早く復旧させなければならない。しかし、倒壊した建物にはまだ要救助者がいる可能性もある。余震や崩落の危険もある。作業には細心の注意を払え!」
「了解!!」
【重機始動――妖怪たちと現代技術の融合】
萃香が、肩に巨大なボルトクリッパーを担ぎながら笑みを浮かべる。
「ふふっ、私たちの腕がなるね!」
その隣で、にとりがゴーグルを引き下ろし、誇らしげに指差す。
「コマツの協力もあって、ブルドーザー・パワーショベル・クレーン・ダンプの準備は万端だよ!」
巨大な機械が唸りを上げ、瓦礫の山へと突き進んでいく。にとりは熟練の手つきでレバーを操作し、山となった崩壊建物を少しずつ切り崩していく。
「ここは壁が浮いてるな。……支柱を魔力で押さえてくれる?」
アリスが静かに頷き、人形部隊を操って残骸を安定させた。
「任せて。人形たちはこういう作業、意外と得意なのよ」
萃香と勇儀の“力仕事コンビ”は、地面を踏みしめながら鉄骨を抱え、クレーンのフックに正確に繋ぐ。
勇儀が叫ぶ。
「おう! あと一本で梁が通るぞ!」
【要救助者捜索と情報網】
霊夢と早苗は被災地に見立てたセット内を移動しながら、魔理沙とアリスに無線で状況を伝える。
「2階部分に人影あり。瓦礫の隙間から動いてるように見えたわ!」
「了解、照明班と支援班を送る!」
水道管の破損を検知したのはにとり。
「ここだ、水圧が落ちてる!止水作業開始!誰か照明を!」
隊員が懐中電灯を持参しアリスの魔力が灯りを作り出し、暗所が一瞬にして昼間のような明るさに包まれる。
にとりが配管を調整しながら言う。
「幻想郷にも、こういう配管網を整備できたらいいのにね」
魔理沙が苦笑しながら呟いた。
「それ、やるなら人海……じゃなかった妖怪海戦術しかないな」
【訓練終了・個別評価】
夕刻、作業は一段落し、訓練は終了した。
整列した隊員たちを前に、山森一佐は一人ひとりに声をかけていく。
■ 天子(比那名居天子)
山森一佐「天子どの、資材運搬・現場警備、見事な統率と現場理解だった」
天子は胸を張って応える。
「ふふん、だいぶ“様になってる”でしょ!」
隣に控える衣玖が微笑む。
「はい。総領娘さま、前線に立つ者として十分な理解と責任感をお持ちでした」
■ 正邪(鬼人正邪)
山森一佐は一瞬、正邪をじっと見て口を開く。
「正邪三等陸尉、状況の撹乱と裏道の調査を指示したが……予想以上の動きだった。あなたの視点は、組織の“ほころび”を見つけるには最適だ」
正邪は珍しく照れたように目を逸らす。
「へぇ……評価されるってのは、悪い気分じゃないな……」
■ 萃香・勇儀(力仕事担当)
「両名とも、支柱撤去・資材移動ともに精密作業を重視し、安全確保に努めていた。力に頼るだけではない動きが印象的だった」
勇儀がニッと笑う。
「やっぱり、力だけじゃ役に立たねぇもんだな。学んだぜ」
萃香も手を振って言った。
「訓練って楽しいね! またやろーよ!」
■ にとり(技術・重機部門)
「工兵部隊と協力し、幻想郷における実装の可能性を模索しつつ、正確な重機運用を指導。非常に有用だった」
にとりは満面の笑みで頭を下げた。
「へへっ、もっとすごいの持ってくるから、次もよろしくね!」
【訓練の終わり、そして次へ】
日が沈み、整備区域に灯がともる。魔理沙が空を見上げながらぽつりとつぶやいた。
「幻想郷のために、こうして“手”を動かすってのも、案外悪くねぇな」
霊夢も、瓦礫の隙間から見える空を見上げて、小さく頷いた。
「……誰かの“日常”を守るってのは、こういうことなのね」
重機の唸りが消え、訓練は終わった。
だが――その静けさの先に、新たな課題が浮かび上がる。