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【備えるために】デモ対応訓練


「……突撃準備!盾、上げ!」


アレン少佐の指示が無線を通じて響いた。


濃い灰色の訓練服に身を包んだ郷土防衛隊員たち――その中には霊夢、魔理沙、フランドール、早苗、椛の姿もあった――は、前列に大盾シールドを持った者を配置し、後列に指揮・無線・サブ装備の隊員を従えた縦深防御陣形を構成していた。


隊列は、道路を横断する形で展開され、中心は市役所に見立てたコンクリート製バリケード前。後方にはにとりが整備した模擬放水車、そして脇を固めるのはアリス率いる後方支援班だ。


「盾、半腰!隊形密集を保て!後列、威嚇棒装備確認!」


霊夢は右手に長い警棒、左手に楕円型の防護盾を持ち、動きやすい姿勢をとる。隣で魔理沙がふん、と鼻を鳴らした。


「盾ってのも悪くないな……だけど、私の“マスタースパーク”の方が――」


「やめなさい、魔理沙」早苗が横から冷たく制する。


「これは武力で勝つ訓練じゃない。感情と衝動を抑える訓練です」


「よし……暴徒役、進行!」


マルク大尉が声を上げると、反対側から20名ほどの隊員が「暴徒」に扮して、拡声器を手に近づいてきた。

それは、掛け声や怒号とともに、ペットボトルに見せかけた模擬火炎瓶、発泡スチロール製の「石」などを手にしていた。


「幻想郷に軍は要らんぞー!」

「外の世界を持ち込むなーッ!」

「退けーっ! 支配はごめんだ!」


その叫びに、霊夢たちの足元が一瞬すくむ。


「接近5メートル……!」無線手がつぶやいた。


前列のフランドールが顔をしかめる。


「……この距離で何かが起きる、そんな気がする」


魔理沙が歯を食いしばる。


「飛んでくるぞ!盾、上げろッ!」


ヒュッ――ゴン!


模擬火炎瓶が盾にぶつかり、赤いペンキが爆ぜた。続けざまに白い煙筒が転がり、目の前を白煙が覆う。


「後列、ガスマスク装着!」


訓練用の発煙筒であっても、視界は大きく妨げられた。


フランドールは反射的に腕を広げそうになるが、ぐっとこらえた。


(だめ……今の私は“力”じゃない。冷静に、冷静に……)


「第一列、耐えろ!第二列、警棒前方突き、威嚇!」


アリスの冷静な声が全体無線から響いた。


第二列の隊員たちは盾の間から一斉に警棒を前へ突き出し、「暴徒」に見立てた隊員たちを圧迫する。


「放水車、始動準備完了!」にとりの報告。


指揮官の許可を得て、放水が始まった。


ブワァァァァァッ!!


水の柱が一直線に「暴徒」たちの前方に走り、あくまで直撃は避けるように、牽制目的での使用だった。

それでもその圧と迫力に、「暴徒役」の隊員たちも大きく後退した。


「……これが現実の対応……」

早苗は煙越しに呟いた。


【10分後 ― 訓練終了】

アレン少佐が無線で終了を通告し、全員がマスクを外す。


フランドールは肩で息をしていた。


「すごい……あたし、なんとか我慢できた……制御できた」


魔理沙も額の汗をぬぐいながら笑った。


「想像以上だな……これ、実戦じゃ本当に命がけかもしれねぇ」


霊夢は静かに言った。


「でもやるしかない。私たちの幻想郷を、内から壊させるわけにはいかないんだ」


アリスはそれに頷いた。


「これはただの戦いじゃない。これは“秩序を守るための闘志”よ」

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