【世界の真実より】
(場所:八雲邸・座敷 夜。障子越しに月が照らす)
八雲紫(静かに煙管をくゆらせながら)
「……つまり、我々は“知らなければならなかった”ということね。幻想郷という小さな箱庭では到底測れない現実が、あのバンカーにはあった」
隠岐奈(腕を組んだまま)
「だが、それを知ってどうする。今さら幻想郷が軍隊を持つとでも? 笑わせる」
天子(比那名居)
「外の世界ってさ、言っちゃえば“正義の顔をした悪党の集まり”じゃない?
でも……それでも、力がなきゃ何も守れない。私たち、幻想郷を“無垢”だと思い込みすぎてたんじゃない?」
紫(目を細める)
「“無垢”は脆い。だが、脆さゆえに守るべきものでもある。
……マクファーソン准将は、それを分かった上であえて突き付けてきたのよ。“理想だけでは戦えない”とね」
橙(不安そうに)
「……じゃあ、紫様、どうするの? 私たち、外の世界に巻き込まれるの……?」
(紫は微笑を浮かべ、だがその瞳には冷たい光が宿っていた)
紫
「……こちらから一歩、出てみましょう。“現実”とやらの土俵へ。
幻想郷が黙って飲み込まれるような存在でないこと、示してあげなければならないわ」
【月の監視室──依姫の沈黙】
(場所:月面・監視区画、綿月依姫、豊姫、衛士たち)
「地球側からの衛星回線、また異常な接続記録が。音声は……“巫女たちと外界人による倫理会話”との分析」
豊姫(不機嫌そうに)
「また面倒を引き寄せたわね……幻想郷の連中は、自分たちが“世界に影響されうる存在”だという自覚が足りない」
綿月依姫(黙して聞いていたが、やがて口を開く)
「……違うわ。彼女たちは“知らなかった”だけ。
そして、いま知った。問題は、知ったあとで“どう選ぶか”」
豊姫「人間風情に何ができるの?」
依姫(淡々と)
「……その傲慢さが地上を三度焼いた。愚かなのは彼らじゃない。私たちよ」
(監視映像:霊夢が神社で一人空を見つめている。無言のまま、彼女は御札を一枚、握りしめる)
依姫(独白)
「幻想郷が選ぶ未来が、地上の最後の希望かもしれないわね……」
【第六幕:沈黙の夜──未来への伏線】
(場所:博麗神社・夜)
(霊夢は焚き火の前で一人佇んでいる。魔理沙、咲夜、早苗、アリスが現れる)
魔理沙「……なあ、霊夢。もう、誰かが教えてくれるのを待ってるだけじゃダメだよな」
咲夜「情報を集める。立場を整える。そして、備える……それが世界という“戦場”の常識です」
アリス「でも、“幻想郷らしさ”を手放すべきではないわ。それだけは、忘れないで」
早苗「……私たちの“信じたい理想”を、あの人たちに示すべきじゃないでしょうか」
(霊夢、ゆっくりと立ち上がり、夜空を見上げる)
霊夢「――だったら、あたしたちのやり方で、あたしたちの“戦い方”を見せてやる。
幻想郷を、ただの箱庭にさせない。けど、あいつらの戦場にも染まらない。
その中間に、道があるって信じてる」
そしてテレビ画面では外の情勢が伝えられる
【“ウクライナ代表団”、ロシアとの恒久的な和平を正式通達】
【自由主義勢力、イエメン反政府組織における動向に関する介入方針を協議中】
【国連機関、イスラエルのガザ地区への軍事作戦を非難】
『ガザに必要なのは、“沈黙”ではなく“発信”だ』】
魔理沙『これが冷戦か……』