幻想の盾 ― それでも、守るために」
◆ 幻想郷・博麗神社仮設会議棟
蝉の声が遠くに響く静かな午後。博麗神社裏手に設営された臨時会議棟では、
幻想郷代表団と日本・NATO軍幹部らによる「幻想郷防衛協議会合」が静かに始まっていた。
参加者:
幻想郷代表:八雲紫、藍、霧雨魔理沙、アリス・マーガトロイド
日本側:統合幕僚監部・防衛審議官、外務省代表
米軍:マクファーレン中将(アメリカ陸軍出身)
NATO代表:マクファーソン准将(Global Force指揮官)
◆ 紫の告白と現実の認識
八雲紫(手を組み、静かに語る)
「確かに私たち幻想郷の独立的立場は、世界に認められました……。けれど、それはあくまで“政治的”な意味での話です。
私たちは“幻想”の住人。軍事力は……持ちません。持とうとも思ってこなかった。
神々も、妖怪も、確かに強い存在ですが――」
(紫はふっと目を伏せ、目を細める)
「……外の世界の戦車・艦船・巡航ミサイル、空母打撃群にドローンの群れ、それらの“現実”には……私たちは勝てないのです。
たとえ河童の技術がどれほど進んでも、“現代の軍事力”には届かない。
だからこそ……あなたたちの力が必要だと思っています」
◆ 外の世界の反応
マクファーソン准将(ゆっくりと椅子に身を預けながら)
「つまり、我々に“駐屯”してほしい、と……?」
魔理沙(肩をすくめて)
「そういうことになるかな。なにせ、自衛隊だけじゃあ正直キツそうだしな。幻想郷の境界を守るには“内”と“外”の両方から見てなきゃな」
藍(紫の隣で静かに頷き)
「……妖怪の力では防ぎきれない“戦争”というものが、外にはあると学びました。
だから、あなた方の軍事的な協力は、今後の外界との関係維持において不可欠であると判断したのです」
◆ 国連軍派遣への是非
マクファーソン准将(厳しい表情で問いかける)
「では、国連軍はどうされますか? 国際承認された独立地域であれば、UN Peacekeeperの展開も検討されるべきかと」
魔理沙(即座に、やや挑発的に返す)
「いや、それは必要ないと思うぜ。だって、NATOに米軍に自衛隊がいるんだろ?
三枚看板が揃ってりゃ、それ以上は混乱するだけだ。ここは国連に任せるには“幻想的すぎる”んだよ」
アリス(静かに付け加える)
「国連には国連の役割があるけど……幻想郷のことを一番理解してくれたのは、今ここにいるあなただった」
◆ 防衛枠組みの正式決定
マクファーレン中将(重々しく)
「了解した。NATO側としては、幻想郷への限定的駐留部隊(Forward Liaison Unit)の展開と、合同演習計画への参加を提案する。
米陸軍・海兵隊も必要に応じて即応部隊を展開可能だ」
統合幕僚監部・防衛審議官
「日本政府も“幻想郷防衛協定”に基づき、必要な人員・物資・通信インフラ整備に着手します」
マクファーソン准将
「これで……この場所は、世界で最も奇妙で、だが最も守るべき前線になる。
NATOとしても、幻想郷との協力を最重要任務のひとつと位置付けよう」
◆ 綿月依姫の通信
会議の終盤、月からの通信で依姫の声が届く。
綿月依姫(通信)
「……あなた方が築こうとしているのは、“幻想と現実”の共存のための防衛体制。
それは月の民にとっても重要な実験です。
こちらも、静かに見守ることとします」
◆ ナレーション(章末)
幻想の住人が、外の現実を受け入れた日。
軍靴の音が響く神社の境内には、未だ見ぬ戦火よりも先に、**「対話の火花」**が灯っていた。
世界は一歩、“幻想”に近づき、幻想は一歩、“現実”に寄り添った。