第80章:【イランのタンカーを追え!】
――幻想郷外連絡拠点・臨時野戦司令室(新潟県・上越市郊外)
通信機器が並ぶ司令室内に、低い緊張が漂っていた。
マクファーソン准将は、地図とAIS(自動識別システム)の記録を睨みながら考え込んでいた。
「……あのタンカー。イランの大手商社船籍【アルージャ】号。
だが、糸魚川漁港に5万トン級が入港?常識じゃ考えられん……」
そこへ、ラミレス大尉が勢いよく入ってきた。
「准将!奴らはイラン船籍の5万トンタンカーで糸魚川漁港に入港したようです…
現地の海保と連携した結果、黒い車列がその船に乗り込んだという情報が!
“ランクル300系・UAZ-469・BJジープ”――目撃者は釣り人と港湾作業員です!」
「その名も【アルージャ】号。イランの大手貿易会社の船ですが、いくつか不審点があります…
船籍情報と積載記録に乖離があり、トランスポンダー信号のログにも“空白時間”が存在する。
詳細は調査中ですが、現在、その船がどこに向かったか追跡中です!」
マクファーソンは即座に判断を下す。
「至急!その船の詳細な情報を収集せよ!何かわかったら報告!行方を捜索しろ!
イランであれば、バンダル・アッバース、ホルモズ海峡、ブーシェフルあたりが疑わしい。
第5艦隊、在中東海軍、FBI国際部、イギリス情報局SIS、全部通せ!
世界中の海軍と連携し、徹底的に洗え!」
ラミレス大尉『はっ!』
一礼し、通信端末を持って司令室を出ていく。
マクファーソンは一人残り、コーヒーを口に含みながら呟いた。
「どうも怪しいな……“偽装タンカー”…か。
わざと見せたんじゃないか……我々に“情報”を与えるために。
それとも、誰かの“脱出経路”だったのか?」
彼の頭をよぎったのは、“赤い月計画”の中核を担っていたもう一つの謎、**「中東工作員網」**の存在。
「FOGLはあのベラルーシ部隊を潰した…が、イランの動きだけが不透明だ。
つまり――あれが“予備工作網”だった可能性がある」
マクファーソン准将はそのまま地図を睨み続けた。
【挿入:衛星通信ログ断片】
アルージャ号、糸魚川出港後、AIS信号ロスト(※三国沖 60km地点)
最終ログ:針路は東シナ海南下 → その後通信不通
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