【スピアーフィールド】
『アルファ3-6!展開完了!』
ABC-79Mが停車する
――幻想郷西縁・旧鬼ヶ城跡周辺・0400時
夜の静寂を切り裂くように、M252 81mm迫撃砲が火を噴いた。
その照明弾が天を焦がす頃、地上では陸上自衛隊普通科連隊・第302即応機動連隊が、重装備で進軍を開始していた。
「――こちら“斜陽”。前線、交戦中。NBC偵察車両は先行せよ。
化学反応はゼロ、現在のところ生物兵器反応もなし」
化学防護車2型のガイガーカウンターは沈黙を保っていた。
それが逆に、マクファーソンの“確信”を強める。
「これはバイオじゃない。武器の拡散が狙いだ」
――幻想郷・風穴渓谷地帯・0500時
ポーランド軍GROM(特殊部隊)が、崖を背にベラルーシ秘密部隊の拠点を急襲する。
先頭には、グウォヴナ作戦担当官ダミアン・クルツク少佐。
彼は声を荒らげた。
「Czyszczenie!(掃討しろ!)ベラルーシの亡霊どもを排除するぞ!」
援護するように、ウクライナ第151独立歩兵連隊が周辺山岳地帯に進軍。
カティンスキー大佐の指揮下で、JavelinとAGS-17自動榴弾機の連打が谷間にこだまする。
「この幻想の地に、我々のような“亡霊の手”は不要だ――!」
――幻想郷・人間の里北部・0600時
FOGL(Forward Observation Global Light)の強襲チームが突入した。
そこは、ベラルーシ秘密部隊が秘密裏に設けた武器流通拠点。
AK-74、SVD、Makarov、果てはRPO-A シュメル火炎放射器までもが並ぶ。
「こんなもん、幻想郷に持ち込むってのか……?」
アレン少佐は怒りに声を震わせる。
「まるで“コーカサスの再現”だ……」
――スイス代表団・襲撃阻止作戦「レッド・ムーン」
その情報はCIA クロウ部隊の傍受によってもたらされた。
「FSBの残存工作班が、代表団を襲撃する。目的は幻想郷中立宣言の破壊だ」
SAS(英特殊空挺部隊)、陸上自衛隊特殊作戦群、FOGL本隊が迎撃に回る。
暗号名「レッド・ムーン」――それは最後の陽動作戦。
目標は、スイス代表団が滞在する永遠亭。
「突入まで60秒――」
だがその時、紫が現れた。
「幻想郷の“結界”はただの境界じゃない。意思の壁よ。
その意思が今、あなたたちを拒んでいるわ」
空間ごと、FSBの工作員たちは飲み込まれ、外へと弾き出された。
生き残った者もいたが、任務は失敗。
――ロシア・カリーニングラード・0820時
黒幕・ロダニア――ベラルーシ代表団の背後で全てを操っていた男。
彼は、カリーニングラードのスヴャトイ港の地下カジノ施設で拘束された。
突入したのはCIA特殊部隊“クロウ”。
「ヴィクトール・ロダニア、お前を"内戦扇動罪”により拘束する」
ロダニアは笑った。
「幻想郷など幻想だ。
だが武器と憎悪は、どんな幻想よりも現実だ」
直後、口腔内に仕込まれた青酸カリが反応し死亡。
“処分”は、アメリカの意志だった。
クロウ1『クロウ指揮官から全ユニットへ対象は死亡した』
――博麗神社
作戦のすべてが終わった時、博麗神社には再び静けさが戻った。
ただし、それは以前とまったく同じ静けさではなかった。
霊夢は、ふと一人の妖怪に問う。
「……なぜ、あんたは武器を手に取ったの?」
武器を抱えていたのは、幻想郷でも特に名の知られていない古妖怪。
差別され、恐れられ、村を追われていた。
「誰かが……初めて、怖がってくれた。
怖がらせるって、こんなにも……自分が“存在する”って気がしたんだ」
霊夢は黙っていた。
紫が横に来る。
「幻想郷は、存在の否定をしない場所であるべきなの。
武器じゃなくて、言葉で、“怖い”を伝える場所であってほしいわ」
霊夢は小さく息をついた。
「でもそれは……それこそ、幻想みたいな話よ?」
紫は微笑んだ。
「幻想郷ですもの」