【レッド・ライト】
― 1 ― 警視庁・特別拘束室
鉄格子越しに座る男の目は虚ろだった。
白髪混じりの髪、痩せこけた頬――かつての「革命戦士」の面影は、もうない。
だがその目には、今なお色濃く“狂信”の残滓が宿っていた。
公安調査庁・加藤室長が口を開いた。
「……元・連合赤軍、野田恒一郎。君は幻想郷の魔術師と接触し、生物兵器の共同開発を画策していた。その資金はベラルーシの財閥、バリスキー・グループから流れていた。なぜそんなことを?」
野田は、薄く笑った。
「“幻想郷”は、革命にとっての“純粋空間”だったんだよ。
国家の法も、監視社会もない。欲望も理性も、剥き出しのまま共存してる。
そこに“赤い火種”を放り込めば、どんな炎が広がるか……見てみたくてねぇ」
「……赤い月計画、とは?」
「旧KGBの残党と組んだ奴らが考えた幻想郷版“ルワンダ計画”だ。
人間と妖怪の間に武器を売って、互いを殺し合わせる。
制御不能になったら、それを理由に“平和維持軍”を送り込んで、幻想郷を“外の国際社会”が奪うんだよ」
― 2 ― 幻想郷・化学防疫展開地域(魔法の森南部)
「感染反応あり!スキャン照合、FOGL隊員“ジェームズ・ウィック中尉”!隔離を要請!」
NBC偵察車 からの警告が響き渡る。
自衛隊中央即応連隊・NBC対処部隊が全装備展開。
・化学防護車による環境除染
・ブッシュマスター装甲車による負傷者搬送
・NBC偵察車が空気中の浮遊粒子と化学マーカーを即時解析
部隊長・山口一尉は叫ぶ。
「感染区域、ここを境界線とする!外部進入禁止!隊員はレベル4防護装備に切り替えろ!」
FOGL隊のオペレーターが、隔離された仲間の名をつぶやく。
「ウィック……あいつ、笑ってたんだ。
“幻想郷まで感染させねえよ”って、注射器持って自分に抗ウイルス薬打ったよ……」
― 3 ― 第5作戦指令所・自衛隊×公安×NATO合同会議
【投影スクリーン:北朝鮮経由の武器密輸ルート、コルバフの記憶ファイル内の地図、そして“赤い月計画”の全体構造】
霊夢が苦い顔で呟いた。
「このままだと……本当にこの世界が壊される」
朝田三佐は前に出る。
「我が国は、NBC対処部隊を増派し、同時に幻想郷治安維持部隊構想を正式に発令します。
公安との連携下に、**“武器流入阻止、感染阻止、そして裏切り者の排除”**を柱に行動します」
加藤室長が重ねる。
「敵は単純なテロリストではない。情報工作、思想、資金、人脈、すべてが“赤い糸”でつながっている」
霊夢は言った。
「私たち幻想郷も、もう人ごとではいられない。妖怪も人間も、“赤い計画”の炎で焼かれる前に――立ち上がるべきだと思うの」
― 4 ― “赤い月”の正体
赤い月――それは幻想郷を“未管理区域”と定義し、段階的に“武力自治州”として分断・武装化させ、最終的に外の世界が政治支配するという計画だった。
そのために流入していた兵器の実例:
AK-74M
AK-101(NATO弾仕様)
RPG-7
Makarov PM
地雷・IED製造キット(イラン製)
背後にいたのは、ロシアの非公式武器商人イワノフ・コーシュキンと、イランの生物兵器ブローカー“アル・ハッサン”。
そして計画全体の戦略草案を練ったのが、ロシア参謀本部直属の大将――ヴェルニエフ大将だった。