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【極秘命令、山の契約】

「黒き命令、山の盟約」


【妖怪の山・山中の仮設会議所】

木々に囲まれた仮設会場。

軍用の通信車両と発電機の唸り声が遠くで響く。

そこに、山の賢者・茨木華扇が、慎重な足取りで現れた。


迎えたのは、アメリカ陸軍対外連絡部のウォルター・マイヤーズ准将。

かつてボスニアで国連部隊とともに和平交渉をまとめた軍政官であり、マクファーソンの信任も厚い。


「茨木殿、お越しいただきありがとうございます。我々は、幻想郷と米軍及び自衛隊との協調体制の確立を希望しています」


「希望……ですか? 本音を言えば、信用しろと言われて素直に頷けるほど、私たちも単純ではありませんよ」


華扇の言葉に、周囲の通訳官たちが緊張する。だがマイヤーズは手を上げて制した。


「……理解しています。我々の一部が越えた一線についても、軍として調査を行い、今後の展開を改めるとお約束します。

 その上で提案があります。共同治安協定の締結です」


「共同?」


「はい。妖怪の山および幻想郷域内の治安行動については、

 必ず幻想郷側の“代表部”の事前承認を要件とし、実力行使は例外的に限定する。

 また、警務隊・陸軍MP・幻想郷代表者で構成される連絡評議会の設置を提案したい」


華扇は一瞬言葉を失い、目を伏せた。

その目に去来するのは、“過去”の記憶――幻想郷が力で蹂躙されかけた、古の外界との戦争の記憶だった。


「……博麗の巫女も、きっと同じことを望んでいます。

 “話し合いで済むなら、それが一番”――とね」


【クロウチーム元指揮官「コルバー」の告白】

深夜、収容施設。

監視カメラに囲まれた尋問室で、手錠をかけられた一人の男が座っていた。


コルバー大佐――かつてクロウチームの現地指揮官だった男。

尋問に立ち会うのは、マクファーソン准将と陸軍憲兵、そして1人のCIA職員。


「コルバー、お前が実行した“越境作戦”──人間の里での非合法拘束、それは誰の命令だった?」


「……命令などない。ただ、“暗号文書”が来た。ブラックチャンネルを通して」


「誰からだ?」


「署名はなかった。ただ、形式とコードからして……FOG部隊だろう」


室内の空気が一変する。


CIA職員が小さく呟いた。


「……“FOG(Force Of Ghosts)”──特別行動センター直轄、存在が公にはされていない非正規部隊だ」


【博麗神社・未明】

霊夢が掃除を終え、朝の空気に顔を上げたその時だった。


黒い影が一つ、鳥居の上に佇んでいた。


迷彩ではなく、黒一色の特殊戦闘服。

標準的なアサルトライフルに消音器、そして顔はバラクラバで覆われている。


「誰……?」


「Black Ops FOG部隊だ――“影の戦争”が始まった。

 博麗の巫女、貴女にも無関係ではいられない」


「……ふざけないで。私は、幻想郷を“人間と妖怪のための場所”に守る。それがすべてよ」


男は答えなかった。だが一つ、小さなデータ端末を落とした。


「それでは…これを見るといい。君たちの中に裏切者がいる」


そして、音もなく闇に消えた。


【会談:統合幕僚長 吉田・米軍アイザック・妖怪三将】

妖怪の山の山腹。

小規模ながら防衛省と在日米軍による警護の下、重要な会談が開かれていた。


吉田統合幕僚長(現実同様の階級)

在日米陸軍・アイザック・ハドラー大佐(前線経験のある冷静な軍人)

伊吹萃香・茨木華扇・星熊勇儀(妖怪の山代表格)


吉田幕僚長はまず、深く頭を下げた。


「本日はお時間を頂き感謝申し上げます。まず、先のPMCによる不祥事について、日本国としても深くお詫びを」


伊吹萃香は酒を呷りながら言った。


「へぇ、偉い人ってのはちゃんと頭下げるんだな。あのクロウとかいう連中とは大違い」


星熊勇儀が重い声で続ける。


「私たちも、力で物事を解決するのは本意じゃない。だが……我々にも“譲れない一線”がある。分かるな?」


アイザック大佐が応じた。


「もちろんです。だからこそ本日は、“明文化されたルール”を提案させていただく」


机に置かれた文書にはこう書かれていた:


「山岳地域における協定共同防衛協定案」


妖怪の山域における作戦は、山側代表者の承認を必須とする。

緊急時を除き、全ての武装行動は三者会談によって検討。

クロウチーム等PMCの単独行動は禁止。

必要に応じ、幻想郷側と自衛隊・米軍で構成される「防衛評議会」の設置。

萃香は煙管を咥えながら、一言だけ返した。


「……面白くなってきたね、外の世界」


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