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証言と構想


【アメリカ合衆国連邦議会・公聴会場】

照明がまぶしい。

記録カメラが赤く光り、会場の壁に“Special Hearing: PMC Oversight Committee”と浮かび上がる。


証言席に座るのは、マクファーソン准将。

その背筋は正しく、だがその瞳には葛藤が滲んでいた。


議長の叩く木槌の音が、場を静めた。


「この公聴会は、幻想郷における民間軍事会社(PMC)の運用に関する責任追及を目的とする。

 証言者、マクファーソン准将──あなたは、米陸軍の現役将校として、この作戦全体における最上位現場指揮官である。質問に真実を述べることを誓いますか?」


「誓います」


議員の一人が立ち上がった。

民主党のリベラル派──ハリス上院議員。


「准将……質問は単純です。

 なぜ、あの“クロウチーム”というPMC部隊を、幻想郷の市街地──人間の里に展開させたのですか?」


「……彼らは、正規軍が届かない非公式領域における危機対応と、諜報連携を目的として投入された影の部隊です。NATOの作戦における補完要素として――」


「その結果、住民が拘束され、憲兵と乱闘が起き、我が国は“イラクの亡霊”として再び槍玉に上がった。これが『補完』ですか?」


「……それは私の責任です。彼らの運用に関しては、軍として制御可能な枠を超えた部分が存在していた。認めざるを得ません」


記者席にざわめきが走る。


共和党側のベネット上院議員が続く。


「では問う。あなたは、今後もPMCの投入を支持しますか?

 それとも、廃止を勧告する立場に変わるのか?」


マクファーソンは、拳を握りしめた。


「私は──PMCという存在を否定しません。

 だが、“透明性のない作戦”は、国家を腐らせます。

 幻想郷のような未曽有の環境下においては、正規の軍と住民の信頼が何よりの武器だ」


「よって私は、PMCクロウチームの一時運用停止と、国防総省の直接統制下への移管を提案します」


静寂。

その答弁は、議会に重く響いた。


【告発:クロウチーム内部文書・機密解除版(抄)】

発信元:元クロウチーム3-1隊員 "グレイウルフ"

宛先:国防監察官室・機密通信課

――本報告は、幻想郷展開における違法行為および指揮系統逸脱に関する内部告発である。

我々は、現地の商人が**“中朝の工作員と接触した”**という曖昧な報告を理由に、

正規の捜査命令なしで民間人の住居を急襲、拘束した。

上官(コード名:コルヴォ)はこれを「先制措置」「拷問未満なら報告義務はない」と発言。

警務隊および陸軍憲兵との衝突は、指示によって意図的に起こされた可能性がある。

このような行動は、幻想郷という地域の特殊性を鑑みても、越権であり非合法的である。

我々は兵士である前に、正義の使い手であるべきだ。

幻想郷での信頼は、銃よりも重い。

【博麗神社・緊急会合】

すだれ越しに夕陽が差し込み、神社の縁側に霊夢は腰掛けていた。


その前に、朝田三佐。制服の前をきちんと閉じ、真面目な目で応える。


「朝田さん……聞かせて。あなたたちは、勝手に住人に危害を加えたりはしないでしょう?」


霊夢の問いは、言葉に棘があった。だが、それは“信頼を得たい”という本音の裏返しだった。


朝田は、ぴしりと姿勢を正し、即答する。


「はっ!不当な危害は、自衛隊において原則として禁止されております」


霊夢はゆっくりと息を吐き、うなずいた。


「だったら……協力体制を強化しましょう。

 あと、警務隊──あの人たちと連携を取ってほしい。もし何かあったら、幻想郷の住民を守るのは“力”じゃなくて“秩序”よ」


「……わかりました。警務隊と共同で幻想郷内の治安連絡所を設置します。

 監視ではなく、“連絡と調整”のためのものとして──」


霊夢の背後、魔理沙と早苗も頷いた。


「人間の里にも、妖怪の山にも、地底にも……きっと協力してくれる人はいる。

 あたしたちがまず、信用しなきゃね」


【数日後:幻想郷統合治安連絡本部構想(仮称:コード・静霊)】

陸上自衛隊警務隊、アメリカ陸軍MP、幻想郷住民(代表霊夢・守矢神社・里の町役)で構成

クロウチームは直接的治安活動を原則禁止、必要時は連絡・支援のみに徹する

自衛隊・NATO各部隊は、幻想郷側との「三者協議」による作戦実施を義務付け

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