"黒き守護者"
“黒の守護者たち”は監視している
幻想郷に降り立った漆黒の影たちは、決して表舞台には姿を見せなかった。だが、彼らの存在は確かにそこにあり、冷たく鋭い視線と、張り詰めた空気を各所にもたらしていた。
旧都の地下、紅魔館の湖畔、地霊殿の深層、人間の里の外周、そして妖怪の山——
重要拠点とされる地点には、必ず数名の黒装束の兵士たちが配置されていた。
全身黒のタクティカルギア、顔の半分を覆う黒いマスク。携帯するのはSIG MCX、HK416、または無刻印のカスタムM4A1 SOPMOD。弾倉は拡張式、光学照準器は暗視・熱探知対応。肩のパッチには鴉の紋章と白文字でただ「CROW」とだけ。
どこにも「USA」も「軍」も「CIA」もない。
そして——彼らは決して多くを語らなかった。
その日、妖怪の山近くの連絡所に詰めていたラミレス大尉は、偶然にも補給ルート確認のために現れたクロウチームの兵士とすれ違った。
その兵士は、かつてラミレスがイラクのファルージャで見た“あの存在”に酷似していた。
「……Black Opsか……」
思わず口をついた言葉に、隣のミハイル中尉が振り向いた。
「ラミレス大尉、今の部隊、知ってるんですか?」
「正確には“見たことがある”ってだけさ。アレは……イラク戦争の後期、米軍の報道にも映らなかった“影”の部隊だ。バグダッドの裏通りで、誰にも気づかれずに消えていく車両。殺気をまき散らすような目付きの連中。PMC、民間軍事会社だ……いや、表向きはな。」
ミハイルは無言でクロウチームの背中を見送った。
「彼らは……我々の味方なんでしょうか?」
ラミレスは答えを出せなかった。ただ、口を固く閉ざした。
【クロウチームの実態】
幻想郷に派遣された彼ら**“クロウチーム”は、トランプ大統領の大統領令によって極秘裏に投入された非正規部隊**である。
米国本土のCIA本部——特別行動センター(Special Activities Center)が直接指揮。
その目的はただ一つ——「幻想郷の重要拠点の警備と情報収集」。
そして彼らの構成員は、すべてが“国家の裏側”で戦ってきた者たちだった。
元陸軍デルタフォース
元海兵隊MARSOC
元SWATの上級射手
元警護局(DSS)の対テロ部隊
そしてCIA作戦課から流れた者たち
「軍」ではない。「諜報」でもない。
あくまで“国家の意志”に従って動く、任務に特化した闇の専門家集団。
彼らの出現は、正規軍である自衛隊やNATO軍の一部士官たちにも、静かな波紋を広げた。
山森一佐(陸自)もこう漏らしていた。
「警備対象の拠点に彼らが入ったことで、連携は困難になる。だが……もし彼らが我々と同じ目的で来ているなら、共存はできるはずだ。」
朝田三佐は警戒を隠さなかった。
「……善悪を決めるのは我々の眼だ。現場の判断に任せられない力を幻想郷に持ち込むのは危険だ。だが、我々が弱腰になるのもまた……敵に隙を与える。」
やがて、博麗霊夢やアリス・マーガトロイドの耳にも、“黒い兵士たち”の噂が届く。
霊夢は眉をひそめながら、紅茶を口にした。
「幻想郷を守るのはいいけど……そのために不気味な兵士を置いていくってのは、ちょっといただけないわね。」
アリスは本を閉じて静かに言った。
「裏に国家が絡んでる以上、これは単なる警備じゃないわ。彼らは“ここで何かを監視し探している”。幻想郷の何かを。」
霊夢はため息をついた。
「……また面倒ごとにならなきゃいいけどね。」
“黒は守護か、監視か”
クロウチームの出現は、幻想郷に新たな力をもたらした。
それは希望か、混乱か、あるいは——**もっと深い意図を秘めた“監視”**なのか。
だが彼らは今、確かにそこにいる。
静かに、重く、幻想郷を見つめながら。
——続く——