【決断の時間】
幻想郷国際会議の臨時会合。
場所は永遠亭の仮設ホール。木造の天井と提灯が揺れ、だがその空気は重苦しかった。
会議には以下の面々が出席していた:
マクファーソン准将(アメリカ軍/Global Force指揮官)
アレン少佐、ラミレス大尉(即応調査隊)
カティンスキー中佐(自由ロシア軍)
ハルコフ大佐・ウォルコフ少佐(ロシア正規軍)
八意永琳(中立監査役)
博麗霊夢、アリス・マーガトロイド(幻想郷代表)
その中で、ウォルコフ少佐はある案を提出した。
内容は明白だった――
「ロシア本国が我々を発見した場合 ハルコフ大佐およびその部隊は“行方不明扱い”を解除され、即時帰還命令が出された。命令を拒否した場合、軍法違反および反逆罪が適用される」
通信は冷徹な見込みがあり、そこに感情はなかった。
【会議後、ハルコフの静かな言葉】
沈黙の中、ハルコフ大佐が口を開いた。
ハルコフ大佐「……我々は帰らん。帰ったところで、再び戦線に送り込まれるだけだ」
その声は重く、だが迷いはなかった。
ハルコフ大佐「今度はおそらく、ヴェルニエフ大将の“計画”に参加させられる……君たちに、銃を向けることになるだろう…ヴェルニエフ大将とは友人だが前々からザリヤという装置を使ってある飛地を拓たいと言っていた」
霊夢やアリスが眉をひそめる。
彼が言っているのは、自衛隊や幻想郷の住人たちへの敵対を意味していた。
ハルコフ大佐「我々は鬼ではない。受け入れてくれた者たちに銃を向けるなど……慣れてはいるが、それでも……心までは慣れていない」
【ウォルコフ少佐との決断】
夜、作戦室での密談。
ウォルコフ少佐「本来は……祖国に背くというのは、命を捨てる覚悟と等しいですが…」
ハルコフ大佐「祖国に服従しても、すでに我々の部隊員の命は消耗品だ。ならば……ここで守るべきものがあるなら、私はそちらを選ぶ」
二人は静かに頷き合い、翌朝、正式に通達を行った。
【幻想郷国際会議:翌日】
各国代表と幻想郷側の合意により、以下の決定がなされた。
ハルコフ大佐率いるロシア正規軍部隊は、幻想郷においては“中立協力軍”として活動を継続
自由ロシア軍との連携を許可し、防衛協力を構築
軍法上の責任を問われる懸念に関しては、幻想郷の自治権に基づき一時的に庇護対象とする
本件を国連・NATOにも報告、保護の是非を議論する予定
【霊夢とハルコフの会話】
夕暮れ時の神社の縁側にて――
霊夢「……よく決断しましたね。簡単なことじゃない」
ハルコフ大佐「ああ……本当は、簡単ではない。だが私はもう、見てしまったんだ。ここに“戦わずに守る”という選択肢があることを」
霊夢「戦うことしか知らなかったと思っていました、それを言うなんて……皮肉だけど、嬉しいんです」
二人は沈黙の中で、遠くで鳴くカエルの声を聞いた。
それは、戦争と無縁な音だった。