外と内側の情勢
【幻想郷 会議室/夕刻】
静かな会議室の一角で、マクファーソン准将は窓の外に広がる紫色の空を眺めながら、独りごちた。
マクファーソン准将(…これで直接衝突の危機は回避できた…が、問題はロシアがこれをどう見るか、だな…)
彼の手元には各国の状況報告が並んでいたが、その中でもロシア政府の動向を示す報告書には赤線が引かれていた。
【現実世界:ロシア・ウクライナ情勢】
ロシア政府は、**“ウクライナ軍による攻撃により、部隊数個が壊滅・行方不明”**と公式発表していた。
大統領府報道官は、国営テレビでこう述べた。
「ウクライナ側の一方的な攻撃により、我が軍の若き兵士たちが命を落とした。我々はこれを重大な挑発とみなし、相応の報復措置を検討している」
一方、ウクライナ国防省も同日に会見を開き、まったく逆の主張を繰り返した。
「ミサイル攻撃によって行方不明になった我が兵士たちは、ロシア側の攻撃対象となった地域にいた。明らかにこれは計画的攻撃だ」
両国は互いに非難し、緊張が激化する形となっていた。
【幻想郷:静かな変化】
だが、その間にも幻想郷では確実に何かが変わりつつあった。
ロシア軍兵士たちが、博麗神社での清掃作業に参加した。
自衛隊の給水支援部隊と共に、妖怪の里での井戸修復にも協力した。
自由ロシア軍の将校が、妖怪の子どもたちにロシア語を教え始めた。
そして、何よりも変化を感じさせたのは、ハルコフ大佐と霊夢の交流だった。
【ハルコフ大佐と霊夢】
境内の掃除を手伝っていたハルコフ大佐は、箒を手にしたまま霊夢にふと語った。
ハルコフ大佐「……幻想郷は、奇妙な場所だな。だが、ここでは民間人と軍人が同じ場所で笑っていられる。そういうのは、ずいぶん昔に忘れていた感覚だ」
霊夢「……あんたたち、もっと冷たいと思ってた。心なんか、ないものだって。でも……違ったんだね」
大佐は一瞬、目を伏せた。
ハルコフ大佐「……我々は兵士だ。しかし、心を捨ててしまったら、それはただの獣だ。私はまだ、人間でいたいと思っている」
【幻想郷という鏡】
幻想郷は、彼らの人間性を映す鏡となっていた。
血に染まった軍服の下に、父であり、兄であり、教師でもあった彼らの素顔があった。
若い兵士たちも、初めて「戦わずに役立つ」自分の価値を知った。
【マクファーソン准将の決意】
報告書を静かに閉じたマクファーソン准将は、小さく呟いた。
マクファーソン准将「……この世界が持つ意味を、ロシア政府も、ウクライナ政府も理解できるだろうか。幻想郷という“異界”が、何よりも現実を映しているというのに…」
彼は立ち上がり、部屋を出た。
これから先、国際社会と幻想郷との橋渡しをするには、戦場を知り、平和の価値を知る者たちの言葉こそが必要になる。
そしてその時、ハルコフ大佐の言葉もまた、確かな力を持つだろう。