トワイライト・ゾーンへ:3つ勢力
【魔法の森:ウクライナ軍第145歩兵連隊】
「総員に告ぐ、周辺警戒を厳にせよ!確認が取れるまでここを動くな!」
カティンスキー大佐の声が魔法の森に響いた。
兵士たちは即座に戦闘態勢を整え、視線はあらゆる方向に向けられる。
「一体、ここは……なんだ?」
ある兵士が呟く。彼の視界には、現実では考えられない光景が広がっていた。
人間の背丈を優に超えるキノコ。ねじれた巨木。どこか幽玄で懐かしさすら漂う風景――
それはまるで、子供の頃に読んだ“お伽噺”の一節のようだった。
「こんな場所、ウクライナにあったか……?」
【迷いの竹林:自由ロシア軍 第7分隊】
「なんなんだここは?」
「竹が……やたら高い。まるでベトナムか中国の密林だぞ」
自由ロシア軍の兵士たちは、異様な静けさと青々とした竹の森に、誰もが困惑していた。
そこには戦争で焼け焦げたウクライナの荒野も、冬の凍土もない。むしろ、命の気配に満ちた深い緑が、辺りを圧していた。
「おいおい、冗談だろ……ここはウクライナじゃないのか?」
「いや、土の感触が違う……匂いも湿度も……完全に別世界だ」
「まるでアジアに来た気分だぜ」
彼らの脳裏に、どこか“見覚えのない記憶”がかすめる。
懐かしくも、恐ろしくもある幻想の領域――それが幻想郷だった。
【マヨヒガ跡地:ロシア軍第27親衛機械化歩兵連隊】
「霧がすごい…100メートル先も見えないぞ!」
「地図を照合したが、全く一致しない。地形図も使えない……我々はどこにいるんだ?」
ロシア軍の精鋭たちでさえ、混乱を隠しきれなかった。
BMP-3装甲車のハッチが開き、通信士が顔を出す。
「GPS、復旧しました!」
「表示地点は……**“マヨヒガ”**です」
「マヨヒガだと?そんな都市、聞いたことがないぞ……」
「秘密都市か?軍のブラックゾーンか?」
「わかりません!」
霧の向こうで、何かが“視ている”気配がする。
だが、それが味方か敵かも分からない。
今ここで戦闘になれば、自分たちが生きて戻れる保証はない。
【全軍共通】
共通していたのは、“ここが戦場ではない”という感覚だった。
しかしそれは、決して安堵には繋がらない。
敵も味方も正体不明、理が通じぬ“幻想郷”という世界に、
数百名の兵士たちが今、取り残されたのだ。
そして彼らの行動ひとつで、この地が――
**「第二のクリミア」**となる危険性すら孕んでいることを、
誰もが、漠然と感じていた。