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第76章:第2の火種



幻想郷――

それは幻想と現実の境界に存在する異界。だが今、この地に最も現実的な脅威が上陸していた。


魔法の森にウクライナ軍 第145歩兵小隊、

迷いの竹林には自由ロシア軍 第7分隊、

そして――マヨヒガにはロシア連邦軍 第27親衛機械化歩兵連隊が転送された。


各部隊は突然の地形変化、電子機器の機能不全に混乱しつつも、それぞれ陣形を整え警戒態勢を敷く。だが、最も恐るべきは――この3つの軍が敵対関係にあるという事実だった。


即応調査隊司令室(幻想郷拠点)

モニターに映し出される最新の偵察ドローン映像。確認された兵力、部隊章、配置。

そのすべてを見終えたマクファーソン准将は、沈痛な表情で両手を組んだ。


「……ここに彼らが来る可能性は、想定していた」

「だが……ウクライナ軍、自由ロシア軍、ロシア連邦軍……この三者がこの狭い空間で遭遇すれば――」

彼は視線を各幕僚たちへ向ける。


「間違いなく第2のクリミアになるぞ……しかも今回は“境界の内側”でな」

誰もが黙り込んだ。

ロシア正規軍と自由ロシア軍、ウクライナ軍の間にある憎悪と歴史的確執は、幻想郷といえど無縁ではない。

ましてや、もし我々NATO軍が介入すれば――。


「我が軍とロシア軍が対峙すれば、たとえここが異世界だろうと――それは**“NATOとロシアの武力衝突”**に他ならん。国際社会はそれを大戦の口実として捉える」

副官が沈黙を破る。


「……それが、ザリヤ計画の狙いでは?」

「幻想郷という“誰のものでもない領域”にて、戦端を開かせることで、互いを引きずり込む……」

マクファーソンは頷いた。


「連中はその可能性に賭けている。そして我々は今、その舞台に立っている」

「……だが、この地を地獄にはさせん。必要なのは、情報と接触、そして時間だ」

彼は即座に指示を飛ばした。


「各接触部隊、交戦厳禁! ただちに各軍との接触任務に移れ」

「ロシア軍には“幻想郷内の即時停戦と調査協力”を通達、ウクライナ・自由ロシア軍とも会談の場を設けるよう交渉しろ」

霊夢の独白

その頃――博麗神社にて。

霊夢は空を見上げながら、誰に言うでもなくつぶやいた。


「争いはまた始まろうとしてる……あたしたちが、何も知らないうちに」

「でも、この幻想郷を戦場にしていいわけがないわ

わたし達が立たないと』



極限の均衡の最中


幻想郷・NATO即応調査隊 司令部――


「……もし向こうから攻撃してきた場合は限定的な自衛手段を取れ。ただし、こちらからの攻撃は一切禁ずる!」


マクファーソン准将の声が作戦司令室に響き渡る。

幕僚たちは静かに頷き、緊張した面持ちで通信機やデータ端末に視線を戻す。


准将は、机上に置かれた地図と転送された3つの軍の位置情報を見つめる。


「……我々から手を出せば、それはロシアが武力行使に踏み切る口実を与えることになる。ロシア軍が来るぞ……」

彼の声は低く、重く、そして決して楽観視できない未来を暗示していた。


准将の脳裏には、いくつもの最悪のシナリオが浮かんでいた。

ロシアとアメリカの直接衝突――それは即ち、

NATO全体を巻き込む世界規模の全面戦争を意味する。


「……次にそれが起これば、前の大戦をはるかに超える犠牲を生む。通常兵器では済まない」


彼は深く息をつく。

その視線は地図から幻想郷の空へと向けられる。


「ウクライナ軍、自由ロシア軍――彼らとは交渉の余地がある。だがロシア軍正規部隊が相手となれば、話は別だ……」

そこには、現場指揮官としてだけでなく、一人の軍人としての誓いと苦悩が滲んでいた。

武力に頼らず、可能な限り言葉と理性で事態を収める――

それは幻想郷という特殊な空間だからこそ可能な、唯一の選択肢でもあった。


「だが、それでも武力衝突は避けねばならない。どんな代償を払っても……」

彼は最終命令を告げる。


「NATO・自衛隊、各展開部隊は現地との接触任務を優先。第一目標は“戦闘の回避”、第二に“真相の究明”、そしてザリヤ装置と現象の原因追跡だ」

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