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ポーランド危機

ポーランド共和国


東部ルブリン県・国境管理局指令センター

現地時間 08:42


突如として地平線の向こうに現れた、“空がひび割れるような光の縦断”。レーダーには映らず、センサーも反応しない。だが、あれは確かに「空間の裂け目」だった。目撃した兵士は、報告直後に失語症と視覚障害を発症し、今も軍医の監視下にある。


緊急放送:ポーランド国家安全保障局(BBN)

「本日未明、ルブリン県及びスビニウ市近郊にて未確認の空間異常が発生。国家非常事態宣言を発令。全軍は即応態勢を維持、国境管理庁は最高警戒レベル“Červený Alarm”を発動せよ。」

1981年、ポーランドが戒厳令を発したあの「冬の危機」を彷彿とさせる事態だった。街にはイェルチ軍用トラックとロソマク装甲車が出動し、主要交差点には警察と兵士が配置された。住民には地下避難所と物資備蓄の案内が配布され、国営テレビは一切の娯楽放送を停止した。


ワルシャワ・首相官邸 地下戦略会議室


ポーランド首相、ヤクブ・オルスキーは厳しい表情でモニターを見つめていた。現象の映像、国境監視所の無音の録画、そして——量子波形のデータパターン。


首相 オルスキー

「…間違いない、これは**制御を失った“何か”**だ。いや、もっと恐ろしい可能性がある。あれは、向こうから現実へ干渉している。我々が無理に扉を開いた結果かもしれん」


その言葉に、場の空気が凍った。


国家情報庁長官

「首相、過去の極秘研究記録——**“プログラム・リニアカ”**における量子トンネル実験ファイルが一致しています。失敗とされ凍結された装置、それが“ザリヤ”の原型……ポーランドがその原罪の一端を担っていた可能性があります」


部屋の壁にあるファイル収納装置から、一冊のファイルが取り出される。そこにはこう記されていた:


「ZARIA-0試作機:転移実験第5段階・量子座標不安定化・自我干渉リスク」

【実験中止・記録抹消 1983年12月】

NATO本部・緊急連絡線


ポーランド政府は即座にNATO・EU各国政府へ次の内容を通達する:


ザリヤ開発におけるポーランド側の過去の関与

1980年代の量子転移実験失敗記録と関連データの開示

最新の異常現象の波形記録・空間干渉パターンの提供

NATO共同対処タスクフォース(J-RIFT)の設立提案

ドイツ・チェコ・バルト諸国との国境における異常拡散の懸念

首相 オルスキー(最後に)

「ザリヤはもはや一つの国家の手にあるものではない。いや、誰の手にも負えない。これは現実そのものが、“外側”に引かれていることを意味する。我々はこの“侵食”に立ち向かうため、過去の罪と向き合わねばならん」


彼の声は深く、重く、そして決意に満ちていた。

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