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第8章:境界の向こうで ― 自衛隊とNATOの会合

幻想郷・迷いの竹林の外れ


《きりさめ》乗員らが設営した臨時キャンプ地に、NATOの先遣部隊が到着したのは、日没前のことだった。


霧を割るようにクーガー装甲車・MTVRトラックなど出現し現れた戦闘装備の兵士たち。その先頭に立つのは、マクファーソン准将。

アリスの案内のもと、Global ForceとGhost Armyの合同調査部隊は、ついに《きりさめ》との接触を果たす。


互いに銃口を向け合うような緊張のなか、まず前に出たのは《きりさめ》艦長代理の倉田2等海佐だった。


「こちら、海上自衛隊むらさめ型護衛艦きりさめ。所属不明空間にて任務中。貴隊の所属と目的を問う」


「こちら、NATO即応調査部隊・指揮官、マクファーソン准将。国連安保理およびNATO協議に基づく異常空間調査任務中。そちらが《きりさめ》か。無事で何よりだ」


握手を交わす二人の軍人。

その周囲で、日本の自衛官とNATO各国の兵士たちが装備や携行食を交換し、互いの状況を確認し合う姿が見られ始めた。


会議:幻想郷議会(仮称)設立準備会合

竹林の小空き地、仮設テント内

ここで行われたのが、幻想郷における現地調整会合。出席者は以下の通り:


自衛隊代表:倉田3佐、作戦幕僚の小谷1尉

NATO代表:マクファーソン准将、アレン少佐、ラミレス大尉

幻想郷側:アリス・マーガトロイド(通訳兼立会人)

議題は以下のとおりだった:


この空間がどのように形成されたか(共有情報の整理)

 アリスが説明する幻想郷の構造、結界の不安定化、および外界との接触歴。

帰還手段の検討と連携体制

 NATOと自衛隊は独自の帰還手段の模索をしていたが、空間安定装置の共通利用が提案された。アリスが「八雲紫」や「永琳」らの知識を紹介し、協力の可能性が示唆された。

現地での行動規範とルール策定

 現地住民(妖怪・人間・賢者等)との接触方針又は保護。

武力衝突の回避や、幻想郷独自の文化への配慮が必要とされた。

ロシア勢力の可能性と警戒

 アリスが“裂け目”を通じて他勢力の気配を感じていることを指摘し、マクファーソン准将は「ザリヤ装置」の可能性を共有。

 倉田2佐は、「それが事実なら、日本本土側にも危機が迫る可能性がある」として、防衛情報の一部共有に踏み切った。


兵士たちの交流

会議の傍らで、兵士同士の交流が進んでいた。

アレン少佐は自衛隊の整然とした野営技術に驚き、ラミレス大尉は、海自の非常食「カレー缶」に目を輝かせた。


「これ、うまいな。MREの100倍マシだ」


「うちの誇りですよ。アメリカさんの分も少しストックありますから」


基地警備を兼ねた合同パトロールが始まり、無線の互換調整、通信手順の確認など、互いの軍事常識を尊重しつつの統合作業が進んでいく。


その一方で、アリスはぽつりと呟く。


「ここまで大きな力が干渉しているのなら……“あの結界”が破れた時、本当の戦争が来るかもしれない」


彼女の視線の先には、空に浮かぶ亀裂のような“裂け目”――そして、その向こう側にぼんやりと“赤い星”のような光が瞬いていた。


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