第36話 写し火
「≪スキル合成≫使用。写し絵と焚き火の癒し」
――『写し火』スキルを入手。火を写す事が出来ます――
倉庫の裏でこっそりスキルを作成したのだが……よく考えたら、合成スキルは他の人に見られる訳でもないので、隠れる必要はなかったかもしれない。
とはいえ、今回合成しようとしているのは、あからさまに攻撃に使うというか、戦いの為のスキルだ。
あまり大っぴらに使って、村の住人へ変な不安感を抱かせたくはない。
だが、このスキルは流石に効果を確認しておく必要がある。
「んー……これで良いかな?」
収穫が終わり、畑でそのままにされた大豆の茎を何本か引っこ抜く。
既に茎が枯れたような状態なので、有効活用させてもらおうと思う。
「≪フレイム・アロー≫」
火の攻撃魔法を出来るだけ弱くして放ち、纏めた茎を燃やす。
小さな焚き火が出来たので、腰の剣を抜いて、その火の上で保持すると、
「≪写し火≫」
先程合成したスキルを使ってみる。
焚き火も剣も何も変わったようには見えないが、俺の推測通りなら……うん、温かい。
いや、火で温めたのだから当然だと言われれば当然なのだが、ほんの数秒の事だし……とりあえず、時間が経過しても温かいままか確認しよう。
そう思ったところで、
「えーいっ!」
突然ソフィの声が聞こえたかと思うと、冷たい水が掛けられ、俺も剣もびしょ濡れになり、焚き火が完全に消火された。
「領主様! 火遊びはダメなんだよーっ! お兄ちゃんがいつも言ってたもん! 危ないし、おねしょもしちゃうって」
「あ、うん。ありがとう……いや、俺も悪かったよ。ちゃんと説明していなくて」
「説明って?」
「いや、ちょっと実験をしていただけなんだけど……ごめんごめん。もう火は使わないから、安心して」
そう言うと、手に大きな桶を持ったまま俺を見つめていたソフィが、何故か泣きだしそうな表情に変わる。
「も、もしかして、ソフィ余計な事しちゃった? 領主様のお仕事の邪魔?」
「いやいやいや、むしろ助かったぐらいだよ。実験が終わって火を消そうとしていたところだったから……ックシュン!」
これは本当。ソフィが水をかけなければ、水魔法で消化するところだった。
まぁ剣に水がかかったのはちょっと想定外だけど、未だに剣の刀身がじんわりと温かい。
これは俺が作ろうと思った通りのスキル……武器への火属性の付与が上手くいったのではないだろうか。
死の山は火属性に弱い魔物が多いので、ブレアたちの武器に火属性を付与してあげれば、序盤装備でも何とかなるのではないだろうか……と考えた訳だ。
次の検証としては、さっきは小さな焚き火だったから、ほんのり温かいだけに思えるので、キャンプファイヤーみたいな大きな火を写せば、強い武器になるのか否かの確認だな。
村で使っている薪を大量に使う訳にはいかないので、森で大量に落ち葉を集めようかと考えていたところで、
「領主様ぁぁぁっ! ソフィのせいで風邪をひいちゃったの!? ごめんなさぁぁぁいっ!」
何を思ったのか、ソフィが抱きついてきた。
いや、普通に剣が危ない! あと、抱きついてくる力が強すぎて、身体が痛いっ!
「ソフィ! ストップ! さっきのくしゃみは、たまたま! たまたま出ただけ! 寒くないし、あれくらいで風邪はひかないから!」
「でも、領主様が倒れたら、この村は大変な事になっちゃうの! 領主様が来てくれたから、すっごくすっごく村が変わったの! だから、ソフィが温めるの!」
「いや、大丈夫だから! ソフィも濡れて風邪を引いちゃうから、一旦離れようか」
「服なら脱ぐから大丈夫! 領主様はソフィが守るの!」
「本当に平気だから! というか脱がないで! 守るどころか、社会的に死んじゃうから!」
こんなところをクレアやシモンに見られたら、これからの村での生活が大変な事になってしま……あっ!
「……アデル様。お食事の準備が出来たのですが……ソフィちゃんはまだ十歳ですよ?」
「クレア、違うんだ! 本当に違うんだ! これは悲しい事故であって……」
「領主様。ソフィ、責任を取るの!」
いや、ソフィは更に誤解させるような事を言わないで……ちょっと待った!
クレアは生ゴミを見るかのような、冷たい目を止めてくれ! これは本当に誤解なんだぁぁぁっ!




