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第18話 お隣のスピター村

 移動疲れでテレーズとクレアが眠ってしまったという事くらいしか特筆する事がなく、夕暮れ前に一番近い村、スピター村へ無事到着した。

 ここは来る時にも立ち寄ったものの、ハルキルク村の隣……という事くらいしか印象にない。

 とはいえ、今後は街へ行く際に毎回泊まる事になるので、どういう村なのかをしっかり見ておこうと思う。


「では、四名様と馬車一台ですね。夕食と朝食を付けて、金貨二枚になります。お部屋は、そちらになります」


 先ずは宿を押さえ、夕食前に村を散策する事に。

 ちなみに、金貨一枚で日本でいう一万円くらいだと思う。

 四人で一泊二食付きなのに二万円なら安いんじゃないかな。


「うーん。前に来た時も思いましたが、この宿はちょっと高めですよね」

「え? そうなの?」

「そうですよー。私の感覚からすると、倍……は言い過ぎですが、三割増しくらいの料金な気がします」


 そう……なのか。まぁクレアが言うのであれば、正しいのだろう。

 ちなみに、ハルキルク村は村人全員皆家族って感じで、作った作物や狩った魔物の肉などは、村の皆で分け与える為、貨幣がない。

 そのため、テレーズは元より、タチアナも金貨を見てキョトンとしていた。

 まぁ今の所は、それで良いと思う。住人もそれ程多い訳ではないし、殆どが未成年らしいし。


「領主様ー! 見てー! 何かあるー!」

「果物だね。せっかくだし、味をみてみよう。俺もどんなものか食べてみたいな」

「アデル様。これは、レイシという果物です。緑の皮を剥いて果肉を食べるんですが、中に大きな種があって、そちらは食べられないので気を付けてください」


 テレーズが店じまいをしている露店を見つけ、クレアが良い物を幾つか選んでくれた。

 露店の人に聞くと、俺たちが行こうとしている街で仕入れてきたものだとか。

 クレアに教えてもらい、ちょっと大きめのプチトマトみたいなレイシの皮を剥くと、中から白い果肉が出てきて……あ、なるほど。味で言うとライチだな。

 日本で食べたものより味は劣るし、見た目も違うけどさ。


「ふしぎな味ー!」

「確か、暖かい場所で作られているはずですので、この辺りでは珍しいかもしれませんね」


 なるほど。物珍しさで仕入れてきたけど、鮮度が落ちてるって感じなのかな?

 それから所々にある露店を見て回り……特にめぼしい物も見つからず、宿へ戻って夕食をいただく。

 ただ、売っているものは少なかったけど、ハルキルク村よりもちゃんと村をしていると思う。

 貨幣があって、食事処や畑もあるし、宿の裏手には客が自由に使える井戸もある。

 流石にお風呂はないけれど、何より住人が多い。ざっと見た感じ、村の規模はハルキルク村の三倍くらいあるのではないだろうか。

 特色こそないものの、しっかりしていると思う。


「まずはこの村を目指さないとな」

「アデル様? 何か仰られました?」

「いや、何でもないよ。おやすみ」

「はい。おやすみなさい」


 食事を終えたらクレアたちと別れ、それぞれベッドのある個室で就寝し……朝になって目が覚める。

 久々にベッドで……普通の寝具で眠れたからだろうか。

 それとも、寝ている間に寝相の悪いソフィに覆いかぶさられていないからだろうか。

 物凄くゆっくり眠れて、疲れが取れている気がする。

 食堂で朝食を食べている時に、さり気なくクレアに聞いてみたけれど、やはりよく眠れたそうだ。

 寝具だ。寝具を買わないと……と思っていると、


「うぅ……何だかホワンホワンしてて、よく眠れなかったよー」

「そうねー。ちょっと、布団が柔らか過ぎた気もしますねー」


 テレーズとタチアナは、逆に眠れなかったらしい。

 なるほど。慣れというものもあるし、いきなり大きな変更はダメか。

 少しずつ村の暮らしを変えていく必要があるな……と思いつつ、馬車を走らせる。

 ちなみに、今日はクレアが荷台に座り、御者席には俺の隣にテレーズとタチアナが座っているのだが……二人揃って俺の脚に頭を乗せて眠っていた。

 まぁよく眠れなかったと言っていたし、仕方ない……と思っているうちに、次の村に着いたのだが、


「クレア。これは……どういう事だ?」


 ほんの数日前に、この村で一泊しているのだが、その時と村の様子が大きく様変わりしていた。

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