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第12話 魔物対策

 農業再開の為に、魔物から作物を守る方法か。

 すぐに思いつくものとしては柵だけど、木材を入手しようと思ったら、森へ行かなければならない。


「シモン。村から一番近い森って……」

「それなら、あちらの死の山ですね」

「だよなぁ」


 わかっていたけど、村から一番近い森は、北に見える死の山だった。

 竜が棲むとも言われる場所で、あの山の向こうには魔王の根城があるとも噂されている。

 当然、生息する魔物も強いだろうし、出来れば近付きたくないし、村人たちにも近付いてもらいたくない。

 という訳で、村を守れるスキルを……と考え、早速スキルを合成する。


「≪スキル合成≫使用。コレクト・トラッシュと識別:土」


――『コレクト・アース』スキルを入手。土を一ヶ所に纏めます――


 これで、土を硬い壁にして、塀に出来るのでは無いかと考えてみた訳だ。

 土を集めて、高く真っすぐに盛るイメージを描いたら、スキルを発動させる。


「≪コレクト・アース≫」


 俺のイメージ通り、周囲の土が集まり、高く盛り上がって……崩れていく。

 土の質の問題だろうか。

 それとも、ただ土を纏めるだけのスキルなので、硬くしたりは出来ないのだろうか。

 これでは、村の周りを覆ったとしても、壁や塀ではなくて土手なので、普通に魔物が登ってきてしまう。

 狙い通りのスキルが出来たのだけど、思っていた効果は得られなかったみたいだ。


「……いや、待てよ。それならこのスキルはどうだ? ……≪スキル合成≫使用。コレクト・アースと集中:静音」


――『コンデンス・アース』スキルを入手。土を凝縮します――


 合成したスキルへ更にハズレスキルを合成させ、スキル三つ分となったからか、スキル名も少し変わった。

 という訳で、早速使ってみると……今度は崩れない!

 俺が思った通りの形になり、そのまま固まってくれる。

 とはいえ、流石にどう考えても崩れるだろう……という無茶な形にすると、やっぱり崩れてしまったけど、無茶な事をしなければ大丈夫そうだ。


「これは……アデル様。ど、どうやったのですか!?」

「いやー、土を固めただけなんだけど……そうだ! ちょっと強度を見てみたいから、軽く蹴ってみてくれないか?」

「え? この土の壁をですか?」

「そうそう。魔物の侵入を防ぐには、シモンの攻撃に耐えられるくらいの壁でないと意味がないだろ?」

「なるほど。そう言われれば確かに……わかりました。では、全力で蹴らせていただきます」


 シモンたちは魔物を倒すというし、その獣人族の攻撃力に耐えられるのであれば、きっと大丈夫だろう。

 土を圧縮して作った壁は、三十センチほどの厚みがある。

 さて、どうだ?


「では、行きます! はぁっ!」


 シモンが短い助走から跳び蹴りを……おっ! 耐えた! と思ったら、そこからシモンが地面に着地する前に回し蹴りを放ち……壁に穴が開く。


「あっ! すみません……」

「いや、耐久性の確認だし、俺がやってくれって言ったんだから問題ないよ」


 土の壁なら、またスキルで作れるし。

 そう思って、早速壁を作ろうとして……ふと思う。

 俺の顔くらいの大きな穴だけど、これも形としては穴なので、なおせるのだろうか。


「≪キュア・ホール≫」


 穴を塞ぐスキルを使用すると、大きな穴でも問題無く埋まっていく。

 なるほど。コンデンス・アースだと、穴を塞ぐ為に土を必要とするけど、キュア・ホールなら土が再生されるので、新たに土を必要としないのか。

 現に、もう壁はなおったけど、シモンが蹴り飛ばして飛び散った土は、向こう側に残ったままだ。


「……ん? もしかして、これって……」


 何か凄い事に気付きかけたけど、考え込んでいると、傍で見ていたクレアが心配そうに声を掛けてくる。


「アデル様? どうかされたのですか? 何かご気分でも……」

「え? いや……もしかしたら、俺はとんでもないスキルを作ってしまったかもしれない」

「そうですね。土を集めて壁を作るスキルなんて、聞いた事がないです」


 確かに聞いた事が無いスキルだが……それよりも凄いのがキュア・ホールだ。

 さっきの事象が大丈夫なら、俺が思いついた事がきっと出来ると思う。

 ただ、今はまだ色々と足りない物が多い。

 この村が魔物の脅威から解放されて、普通に暮らせるようになった時……俺のスキルで凄い事が出来そうだ。

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