喪失と悲しみの色
涼はボーしているとある事を出来事を思い出す……あれは…丁度学園に入って二ヶ月。
学園の廊下の音…。涼が背を向けて歩き出すところに静が慌てて追いかける
涼
「なんで……来なかったんだ……」
静
「悪い…けど!会えなかったのには理由があるんだ!俺だってお前を置いて行きたくなかった。でも、どうしても離れなきゃいけなかった時があったんだ!」
涼
「理由なんてどうでもいい。結果は変わらない。」
静
「わかってる…俺の責任だ。でも、だからこそ今ここでちゃんと話したいんだ。お前と離れたくない。生きる理由は涼だから……」
涼
「話すだけで変わるのかよ…?」
静
「変わる。お前だからこそ、誤解されたくない。家族なんて関係ない!」
沈黙が流れる・・・
涼
「……はぁ…わかったよ…」
涼
「……お前の話、聞く……でも…今はここじゃ無理そうだな……」
涼は静の真剣な言葉に心を揺さぶられつつも、周囲の視線が気になり始めた。教室の片隅でちらちらとこちらを見ている視線に気づく。
静
「ここでも駄目って事でないけどお前に知って欲しい。行こう…話せる場所へ」
二人は周囲の視線を避けるように、さっと人の少ない屋上へと向かう。
屋上に着くと、夕暮れの風が二人の間を通り抜ける。
涼
「ここなら落ち着いて話せそうだ…」
静
「……そうだな…どこから良いかな…」
二人だけの空間に静かになり涼は静の言葉に耳を傾ける。
静
「……あの日、兄さんが…戦いで亡くなった。俺たち狐我家は大きな混乱に包まれた。家族は泣き、家臣も慌て…皆がどうすればいいかわからなかったんだ……」
涼
「…ああ……」
静
「能力の結果として、俺が時期当主として立つことになった。兄さんの代わりなんて到底務まらないけど、家のためにできることはやらなきゃいけない」
静
「時期当主として色々やった…多分…お前が引かれる事も……」
涼
「…もっと早く知っていれば、俺も……」
静
「涼、分かるだよ…家族を失う辛さも、裏切られたように感じた気持ちも。だから俺は逃げたくはなかった。嫌われても誤解だけはしてほしくなかったから…」
涼
「ごめん……俺、ただ…怖くて、どうしていいかわからなかったんだ…」
静
「一人じゃない。これからは一緒に居るから。信じて…?」
涼は頷きそっと静の胸に泣き顔を寄せ夜になるまで泣いていた…
そんなの突然思い出すとは……なんだろう…
疲れてるのかな…?教室に戻らないと…
歩いていると廊下に意外な人物が現れる。遠くに天鴉家当主を見つける。
長い髪を整え、眼鏡の奥に冷静な眼差しを光らせている。涼は一瞬緊張しながらも、ゆっくり近づく。
涼
「…お久しぶりです、天鴉当主。」
天鴉家当主は静かに頭を下げる。
天鴉当主
「確か…狗神涼くんだったな?久しぶりだな…」
その声は落ち着いており、感情をあまり表に出さない。
しかしその眼差しには、状況を深く憂慮している様子が感じられた。
涼は軽く会釈を返し、言葉を探すが当主はあえて詳細を語らず、ただ短く言う。
天鴉家当主
「今は言葉少なにせざるを得ない…だが、我々は君たちの成長を見守っている…」
涼はその言葉を胸に刻み、小さく会釈してそのまま教室へ戻るのであった……