月が来るまで
昨日の出来事が衝撃すぎたのか、今朝はふと昔の夢を思い出してしまった。
はぁ……今日は移動教室だったかな。
まずは顔を洗おう。
一つ目の授業が終わり、意外な人物が訪ねてきた……
涼が窓の外をぼんやり眺めていると、三年生の小鼬安曇が近づいてくる。
教室のざわめきが収まる中、三年生の小鼬安曇が涼の席に近づいてくる。
涼が窓の外をぼんやり眺めていると、三年生の小鼬・安曇が近づいてきた。
小鼬安曇
「涼くん、知ってる?今年は三年生の人数が減って合同授業が増えてるの。だからペアを組まないといけないのよ。正直、あんたみたいな奴と組むのは面倒だったけど……仕方ないから、私がパートナーになるわ…」
涼は幼い頃、安曇にちょっかいを出された記憶を思い出し、小さく息を飲む。
狗神涼
「お、おう……仕方ないな……」
小鼬安曇
「手は抜かないでよ。昔のことは忘れたわけじゃないから。」安曇は鋭い目つきを少し和らげた。
涼は少しドキッとしながらも、口ごもる。
教壇に立つ教師が出席を確認し、教室の空気が少し引き締まる。
涼はちらりと横目で安曇を見るが、彼女はすでに視線を前に向けている。
……やっぱり苦手だ。子どもの頃から、どうも調子を狂わされる
授業開始のチャイムが鳴り、二人の間に重たい沈黙が落ちる……
授業が終わると、昼休みのざわめきが教室を包む。
涼は弁当を手に、廊下へ出ようとしていた。
安曇
「涼くん。お昼、一緒に食べない?」
振り返った涼は、一瞬だけ目を細める。幼い頃のちょっかいを思い出し、口元に薄い笑みを浮かべた。
涼
「いえいえ、お忙しい先輩の貴重なお時間を、凡人の私などに割いていただく必要はございません。」
安曇
「相変わらず口が回るわね。…でも今日は譲らないわよ。」
その時、廊下の向こうから狐我静が現れた。
静
「お、涼。昼一緒に行くだろ?」
涼は二人を見比べ、わずかに舌打ちして横を向く。安曇は友達に目配せしつつ、涼に向かって一言残す。
安曇「じゃあ、また後で捕まえるわね。」
そう言い残し、安曇は屋上へ歩き出す。静は涼の肩に軽く触れ、フォローするように涼の隣を歩く。
安曇はそう言いながら屋上へ向かって歩き出す。
昼休み。涼は安曇先輩とのやり取りに少し疲れ、廊下をぼんやり歩いている。
遠くから静が駆け寄り、優しいけど少し照れくさい笑みを浮かべて声をかける。
静
「涼…?今日の顔、いつもより疲れてるな。何かあった?」
涼
「安曇にペアを組まれたんだ。あいつは昔から苦手でな……」
静
「そんな時は、俺を頼れよ。俺だけは絶対に味方だから…」
涼は一瞬驚いたように見開く。
――いや、そんな風に言われても、素直に受け取れるわけない……
でも、なんだか心が少し軽くなる気がする……
少しだけ微笑みを浮かべ、視線を落とす。
涼
「ありがとう、静。お前がいるのは心強いよ……」
静はほっとしたように微笑み、涼の隣を歩き始める。
昼休みの廊下でのやり取りを終え、しばらく歩いた後、静が少し間をおいて切り出す。
静
「そういえばさ、放課後、少し時間あるか?」
涼
「別に、特に予定はないけど……」
静
「なら、少し付き合ってくれよ。話したいことがあってさ。」
涼は軽く肩をすくめるが、断る気はなさそうだ。涼はまだどこか疲れた表情を浮かべていたが、静との会話で少しだけ気持ちが和らいだ。
二人は無言のうちに距離を縮めながら、和やかな昼食の時間を過ごした。
放課後の屋上。夕陽が差し込む中、静が涼に声をかける。
静
「来てくれてありがとう。ちょっと話があってさ。」
涼
「ん?何だよ、そんな大層なことじゃないだろ?」
静
「大したことじゃないんだけど、気になることがあってな。聞いてくれる?」
涼
「まあ、いいけど。どんなこと?」
静
「なあ、気づいたか?あの黒い霧、いつもと違うってこと…」
涼は少し迷いながらも頷く。
涼
「ああ、あの時とは違った。光の石が効いたのもそのせいだろう…」
静
「問題は、学園にどう報告するかだ。大騒ぎになるかもしれないし、課外授業も厳しくなる…」
涼
「……でも隠しておくのも危険だ。正確に伝えないと、もっと大きな被害が出るかもしれない…」
静
「うん、慎重に動かないと…」
廊下を歩きながら話を続ける
静
「学院はこの異変、すでに把握してるのかな?」
涼
「わからないけど、三年生の課外授業の数が増えてるのは事実だし、死者も出てるって話だ。学園側も何かしら気づいてはいるはずだ。」
静
「でも、もし本当に把握してて何もしなかったら、それこそ最悪だ。俺たちでできることを考えないと。」
涼
「俺も、今まで家の中であまり役に立てなかったけど……こういう時こそ、何かできるようになりたいと思ってるんだ。」
しばらくして、学園での授業や課外活動をこなす中、涼と静はあの黒い霧の件について考え続けていた。一ヶ月ほど経ったある日、現天鴉家当主が学園に訪れることになった…