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狐我家物語  作者: sayusa
6/15

初めての…

 その日、夢を見た……


 天月

「今日は狐我家から、動くんと…」


 動

「お邪魔します。涼くん、元気にしてたか?」


 涼

「うん、元気だよ。また来てくれて嬉しいよ!」


 天月

「そして…弟の静も連れてきてるのよ!」


 少し緊張しながら玄関に出てくる静…


 静

「はじめまして、狗神涼くん。」


 素直に静が照れながら微笑みを浮かべ言う…


 涼

「あ、はじめまして……」


 天月

「動くん、涼、静くん……みんな元気に育ってくれて、母さんは本当に嬉しいわ。これからも仲良く、支え合ってほしいの。私は少し弱いけど、みんなのことはいつも願っているからね。ごめんね……ちょっと寝室で少し休ませてもらうわね…」


 涼

「大丈夫かな……」


 静

「ねぇ、涼くん、遊ぼうよ!」


 涼

「うん、いいよ!」


 しかし、しばらく飽きたのか静は動に声掛けた…


 静

「ねぇねぇ、兄ちゃん、少しだけ遊んでよ…」


 動

「うーん、ごめんね静、俺にはちょっとやらなきゃいけないことがあるんだ。庭で父さんと話を済ませないとね。」


 静は小さく肩をすくめ、躊躇いながら涼の方へ視線を戻す。その間、庭の片隅で父親と話す動の様子を見つめ、涼も少し切なそうにそれを見守った。


 涼

「動兄ちゃんはいつも忙しいんだな……」


 涼

「さ、遊ぼうか!」


 涼

「うん!」


 二人は庭先で無邪気に遊ぶ。

 しかし、遊べることもだんだん限られてきて、少し退屈になってきた。


 涼

「そろそろ、何か違うことしてみようか」


 静

「うん、でも何にしよう…」


 涼

「そうだねー?えーと……」


 静

「そうだ!ねぇねぇ、涼くん、あそこの洞窟、気にならない?」


 涼

「ん?ああ、前から気になってたけど、ちょっと怖いんだよね……」


 静

「でも探検してみたいな!こっそり行ってみようよ!」


 涼

「……わかった、じゃあ行ってみるか!」


 二人は遊びの途中でそっと抜け出し、気になっていた洞窟へ向かった。

 薄暗い入口の岩は凸凹していて歩きにくく、足元に気をつけながら慎重に進む。


 涼

「足元気をつけろよ、ここ……見た目以上に危なそうだ。」


 静

「うん、でもワクワクするね!」


 奥から何か暗いものが……


 涼

「な、なんだあれは……!」


 静

「あっ……足が……!」


 涼

「やばい、走らないと!」


 静

「あっ……足が……!」


 静は岩に躓き、足を捻ってしまう…

 慌てた涼は近くの石を拾い、投げつける。石は光を放ち、暗いものは後退した。


 静

「すごい…でも、なんで光ったのかはわからないよね…」


 涼

「うん。でも、助かったからよかった…」


 二人は慌てながらも家に戻り、庭先の井戸へ向かう。


 涼

「ここでちょっと休もう。冷たい水で手拭い濡らすからな…」


 涼は井戸の水を汲み、冷たい水で手拭いを濡らして静の足に優しく当てる…


 静

「あ、ありがとう、涼くん……」


 そこへ、家の方から動が険しい顔で近づいてくる狐我動か来ていた……


 動

「お前たち、どこに行っていたんだ?怪我までして……」


 険しい言葉の裏に、深い心配と不安が滲むのを感じる…


 動

「無茶をするな。お前たちのことを思うと……黙って見ていられないんだ…」


 涼「ごめんなさい…でも…俺たち、ちょっと遊びに行ってただけ…」


 動

「遊びで済む怪我じゃないだろう。だが、それ以上に……お前たちが無事でよかった。」


 静

「兄ちゃん……あの、ね洞窟で……黒い霧に会って……」


 怖い…声が震え、言葉が…出てこない……


 涼

「そうだ!逃げようとしたんだけど、静が足を捻ってしまって……」


 動

「そうか……無理はするなよ。お前たちの命が一番大事だ。」


 動

「だがあの洞窟で黒い霧とは……今まで聞いたことのないことだな……報告は、きちんとしないと……」


涼と静はうなずき、まだ少し緊張したまま兄ちゃんを見る…

狐我家当主、狗神贒(いぬがみまさる)の部屋。動が報告する


 狗神贒

「黒い霧の件だが、今後の動向をどう見極めるか……」


 狐我家当主

「子供たちの安全も確保しながら、迅速な対応を……」


 動は深呼吸をひとつして、落ち着いた声で口を開いた。

 動

「狗神家当主、申し上げます。涼と静が洞窟で黒い霧に遭遇しました。静が怪我を負い、涼が光属性の石で一時的に退けました。」


 報告に耳を傾ける狗神贒は、眉をひそめ机に手を置く。


 狗神贒

「以前からこの動きには懸念を抱いていた。異常な気配だ……涼もまだ若い。家族の安全も、学園や五代家の未来もかかっている。」


 狐我家当主も視線を鋭く巡らせる。


 狐我家当主

「深刻だ。だが、涼たちの安全を最優先にしつつ、迅速に対応せねば…」


 動はうなずき、深く息をつく。胸の中で、責任の重さをかみしめた。


 動

「承知しました。全力を尽くします。」


 部屋の外では、涼と静が庭で無邪気に遊んでいる。二人には会議の内容は見えず、聞こえない。だが、庭の向こうで響く大人たちの緊張した声と、重い空気は、わずかに届いていた。


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