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狐我家物語  作者: sayusa
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揺れ動く挟まか闇か

 嫌々にもながら訪れた課外授業が始まり、異変のある山を探索していると何処からか大きな音と誰かの声が聞こえた……

 俺は音のする方へ走った。木々を抜けるたびに、霧が肌にまとわりつく。……冷たい。まるで骨まで凍らせるみたいな感触だ。

 息を切らしながら視界が開けると、そこには——涼。

 まさか…こんな場所で会うとはな。思わず胸が熱くなる。

 ……だが、涼の顔色は悪い。額に汗を浮かべ、歯を食いしばって何かを押し返しているようだ。そこでようやく周りの光景に気づく。黒い霧が立場だかり、迫り来るのを…

 霧は不規則に揺れながら、涼との距離を奪おうとじりじり滲み寄っていた。

 小鼬林星は数歩離れた場所に尻もちをつき、足腰が抜けて立ち上がれずにいる。

 そのすぐ傍では、甘鶴比奈と門秋晴翔が折れた太い枝の下敷きになり、うめき声をあげていた。


 静

「……涼、連絡を送ったか?


 涼

「まだだ。この馬鹿が涙こねて連絡を送りもしない。僕はこのっ、状況だから、送ることさえ、出来ない…っ!」


 静

「今、送った!そっちも手伝う!」


 林星

「お、俺は……うっ……っ……」


 膝に力が入らないのか、地面に座り込む。悔しさと情けなさが入り混じった泣き声が耳に残る。


 静

「林星、泣いてる暇があるなら息を整えろ。お前も五家の名を背負ってるならな。 最低限の役目は果たせ。……怪我人を優先しろ」


 わざと視線を外し、涼の方へ足を向ける。

 言い捨てると、俺はすぐに涼のもとへ向かった。

 苦戦しているようだが、あいつの技術は確かだ——だから、まだ持ちこたえている。


 涼

「このままだと埒が明かない。三式を使いたい…可能か?」


 静

「ふん、誰に言ってる。やってやるよ!」


 強力な式が完成し、霧は一瞬で掻き消えた。普通ならそれで終わりだ。

 だが——静の目には、まだ残像のように“白い手”が揺れているのが見えた。

 能力の高さが仇になる瞬間。あれは、ただの霧じゃない……。

 静は小さく息を吐き、視線を逸らした。こういう白いものは、どうにも苦手だ。


 同級生

「おい!どうした?!……これは、ただ事じゃなさそうだな。連絡は?」


 静

「悪いな、もうしてある。それと——さっき、霧と対人した。いつもと違ってた」


 同級生

「……そうか。怪我はないか?」


 静

「はい、この通り。……涼と力を合わせていなければ、全員…今頃どうなっていたか」


 同級生は一瞬だけ涼を見やるが、すぐに視線を逸らす。

(関わりたくはない……だが、あの目……)

 狐我静の眼差しは鋭く、迷いがない。本気で怒っている。


 同級生

「……こっちは手当を進める。お前たちはどうする?」


 涼

「危険は承知ですが、もう少し奥へ向かおうと思います。さっきの霧が現れる前、大きな属性元素を感じました。確認のためにも確かめた方がいいと」


 静

「僕も行きます。さっきの霧は、やはり変だった。……もし“アレ”があるなら、ここで見逃すわけにはいかない」


 同級生は小さく舌打ちをした。

 それでも、その場の空気と二人の表情が、彼の口を開かせた。


 同級生

「……分かった。もしもの時はすぐ連絡しろ。深追いはしない、いいな?」


 静・涼

「ありがとうございます」


 俺たちはその場を離れ、さらに奥へと足を進めた。

 途中、倒れた木々がいくつも視界を塞ぎ、その先——中心部に、ぽっかりと穴のような闇が口を開けていた。

 今にも全てを呑み込んでしまいそうな、底知れぬ暗さだった。


 静

「……小さいな。出来たばかり、か?」


 涼

「僕もそう見える。辺りの状況からしても……大元が出たのは間違いないな…」


 静

「そうだな…封印できるのは当主、時期当主、あとは学園長くらいだ。ここまで来るのに力を使い過ぎた……今は封印は無理だな。」


 涼

「最小限の被害で食い止められたと思えば、まだ良い方か……とにかく、報告しよう。」


 その後、連絡を終えて周囲を確認しながら先生たちの到着を待った。

 学園へ戻った時には、すでに夜になっていた。

 後日、負傷した二人は軽い怪我で済んだと聞かされた。


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