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狐我家物語  作者: sayusa
13/15

静かに忍ぶ霧

 ーー夕方、授業の合間に涼は教室を出て廊下に足を伸ばした。長い訓練の疲れが体に残っている。廊下から差し込む夕日の光、今日はどこか違って感じられた。


 涼

(…なんだか、これ…?妙だな…?)


 そう自分に言い聞かせ、振り払おうとする。しかし、違和感は消えない。しかし去ろうとしたの時、視界の端に、見慣れた何か揺れるものが何かが居た――花壇の間から、微かに黒がゆらゆらと…


(……見慣れたはずの黒霧が…違う…?)


 ――一方、図書室にいる静も同じ異変に気づいた。

 窓越しに中庭を見やる。木々や花壇に視界は遮られるが、ふと――


 涼

「うん?霧…?気のせいかな…」


 と首をかしげる。

 しかし次の瞬間、木々の間に揺れる黒い影が目に入った。


 涼

(……あ?!見えた…)


 静は本を閉じ、警戒する。

 そっと外へ出るように動き、気配を殺しながら図書室のドアへ向かう。廊下は周りの喧騒を忘れたかのように静かだった……


 涼は視界の端で、ちらりと静の気配を感じる。まだ距離を保ったまま、互いに異変を察している。

 黒の霧は、フワフワとした霧の状態から瞬く間に人型へと変化し、形を完成させつつあった。


 涼

(これは…このままでは、いけない…!)


 心臓が早鐘のように打ち、呼吸を整えながら警戒を固める。学園内で、未だ見たことのない危機が迫っている――つかず離れずの距離で、二人は確かにその異変を感じていた。

 観察を続ける涼の耳に、静の低い声が届く。


 静

「ここは俺が見ておく…誰か学園側に報告してくれ。暫くなら…なんとかする…」


 涼

「……分かった…」


 残すことへの不安はあったが、今は最善の判断だと理解する。

 暫くその場を見守ると、黒の霧が微かに揺れ、明らかに反応している。


 静

 (気づかれたか…?!)


 静は護符を掲げ、握る手に力を込め、戦闘態勢へと移行する。


 静

「……来るなら、来い…!」


 違ったその姿は、以前より明らかに攻撃的で、狙いは涼に――彼の強化された力を感知したか、狙い定めて迫ろうとしていた。しかし、静の前に立つことで霧の進路は阻まれる。黒霧はフワフワとした状態から、人型の形を瞬く間に固め、涼の方へと向かおうとするが、静の牽制がそれを遅らせた。

 涼は距離を保ちながら、静の動きと霧の変化を観察する。


 静

 (絶対に涼に手を出さない…俺に任せて、託したんだ…!)


 二人の間に緊張の沈黙が張り詰める。人型へ変えた黒霧の脅威に、二人は互いの役割を分担し、慎重に備えていた。

 静は護符を握り直し、黒霧の動きを見極めながら前へ進む。霧が反応するたび、掌に伝わる力が緊張を増す。


 静

「……ここで、抑える…!」


 護符から漏れる光が黒霧の形を安定させず、完全な攻撃には移らせないよう干渉する。霧は人型へと変化しようとするが、静の牽制により完全には形成されず、揺らめきながら足踏みしているようだった。

 静は距離を保ちつつ廊下を進む。手元には戦闘道具はないが、頭の中で状況を整理する。


 涼

 (静が抑えてくれている…まずは学園側に知らせなければ…)


 静は護符を小刻みに動かし、霧の進路を阻む。完全に消せなくても、攻撃力を弱め、形を不安定に保つ。


 静

 (これで…しばらくは持つ…!)


 黒霧は涼の力を感知し、狙いを定めようとするが、静の牽制により一歩も進めない。

 静は護符を握りしめ、目の前の黒霧を睨み据える。


 静

 「……ここで終わらせる」


 低く呟いた声に決意が宿る。

 霧は涼を狙って蠢いていたが、その進路は静の存在によって阻まれていた。激しい衝突の中でも、彼の意志は揺らがない。

 ――涼が戻ってくるまで、この場は絶対に通さない。

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