静かに忍ぶ霧
ーー夕方、授業の合間に涼は教室を出て廊下に足を伸ばした。長い訓練の疲れが体に残っている。廊下から差し込む夕日の光、今日はどこか違って感じられた。
涼
(…なんだか、これ…?妙だな…?)
そう自分に言い聞かせ、振り払おうとする。しかし、違和感は消えない。しかし去ろうとしたの時、視界の端に、見慣れた何か揺れるものが何かが居た――花壇の間から、微かに黒がゆらゆらと…
(……見慣れたはずの黒霧が…違う…?)
――一方、図書室にいる静も同じ異変に気づいた。
窓越しに中庭を見やる。木々や花壇に視界は遮られるが、ふと――
涼
「うん?霧…?気のせいかな…」
と首をかしげる。
しかし次の瞬間、木々の間に揺れる黒い影が目に入った。
涼
(……あ?!見えた…)
静は本を閉じ、警戒する。
そっと外へ出るように動き、気配を殺しながら図書室のドアへ向かう。廊下は周りの喧騒を忘れたかのように静かだった……
涼は視界の端で、ちらりと静の気配を感じる。まだ距離を保ったまま、互いに異変を察している。
黒の霧は、フワフワとした霧の状態から瞬く間に人型へと変化し、形を完成させつつあった。
涼
(これは…このままでは、いけない…!)
心臓が早鐘のように打ち、呼吸を整えながら警戒を固める。学園内で、未だ見たことのない危機が迫っている――つかず離れずの距離で、二人は確かにその異変を感じていた。
観察を続ける涼の耳に、静の低い声が届く。
静
「ここは俺が見ておく…誰か学園側に報告してくれ。暫くなら…なんとかする…」
涼
「……分かった…」
残すことへの不安はあったが、今は最善の判断だと理解する。
暫くその場を見守ると、黒の霧が微かに揺れ、明らかに反応している。
静
(気づかれたか…?!)
静は護符を掲げ、握る手に力を込め、戦闘態勢へと移行する。
静
「……来るなら、来い…!」
違ったその姿は、以前より明らかに攻撃的で、狙いは涼に――彼の強化された力を感知したか、狙い定めて迫ろうとしていた。しかし、静の前に立つことで霧の進路は阻まれる。黒霧はフワフワとした状態から、人型の形を瞬く間に固め、涼の方へと向かおうとするが、静の牽制がそれを遅らせた。
涼は距離を保ちながら、静の動きと霧の変化を観察する。
静
(絶対に涼に手を出さない…俺に任せて、託したんだ…!)
二人の間に緊張の沈黙が張り詰める。人型へ変えた黒霧の脅威に、二人は互いの役割を分担し、慎重に備えていた。
静は護符を握り直し、黒霧の動きを見極めながら前へ進む。霧が反応するたび、掌に伝わる力が緊張を増す。
静
「……ここで、抑える…!」
護符から漏れる光が黒霧の形を安定させず、完全な攻撃には移らせないよう干渉する。霧は人型へと変化しようとするが、静の牽制により完全には形成されず、揺らめきながら足踏みしているようだった。
静は距離を保ちつつ廊下を進む。手元には戦闘道具はないが、頭の中で状況を整理する。
涼
(静が抑えてくれている…まずは学園側に知らせなければ…)
静は護符を小刻みに動かし、霧の進路を阻む。完全に消せなくても、攻撃力を弱め、形を不安定に保つ。
静
(これで…しばらくは持つ…!)
黒霧は涼の力を感知し、狙いを定めようとするが、静の牽制により一歩も進めない。
静は護符を握りしめ、目の前の黒霧を睨み据える。
静
「……ここで終わらせる」
低く呟いた声に決意が宿る。
霧は涼を狙って蠢いていたが、その進路は静の存在によって阻まれていた。激しい衝突の中でも、彼の意志は揺らがない。
――涼が戻ってくるまで、この場は絶対に通さない。




