第四話 再会?
「い、いやっつ、いやぁぁぁっ!だれかぁっ!」
無駄だと思いつつ、美也子は助けを求めて叫ぶ。
異形の魔物の身体から生えた触手に、四肢を絡めとられていて身動きが取れない。しかも、魔物が分泌した体液が身体にまき散らされてしばらくしてから、力が入らなくなってきているため、もし四肢が自由だとしても動けないだろう。
だから唯一自由になる口を動かして、助けを求める。
しかし、現実は非情だ。いくら助けを求めても、誰もやってくることはなく、異形の触手が都に迫ってくる。
もうダメ……。
美也子が諦めかけた時、触手の動きが止まる。
そして、触手の持主の身体が倒れ込み……忽然と姿を消した。
「だ、誰……。」
美也子は助かったという安心感から、そのまま気を失ってしまった。
◇ ◇ ◇
「ふぅ……運がいいのか悪いのか。」
あの大蛇との戦いから2日が過ぎた。
大蛇との戦いは壮絶を極めた。
大蛇と言っても体長2mぐらい、多分魔物の中でも幼生体だったのだろう。
俺と同じく戦闘経験が少ない、それが辛うじて俺に勝機をもたらした。
頭4つの連携がうまく取れていないのを利用して、それぞれの頭の興味をバラバラに持たせ、罠にかけた。そして動けなくなった頭を個別に石で叩き潰し、動かなくなった胴体を包丁を使って切裂いた。
辛うじて大蛇に勝利したものの、途中嚙み砕かれた左腕は全く動かなくなり、左足も動きが鈍く歩くのも一苦労だった。
大蛇を倒したドロップで出たポーションがなかったら、俺はあのままあそこで倒れたまま、他の魔物の餌食になっていただろう。
大蛇を倒して得たものは、色違いのポーションが三本。そのうちの一本は既に使用済。
一振りの剣……鑑定してみると、「草薙いだ剣」というもので、草刈りに適した効果があるとの事……なんのこっちゃ?
そして、知識……。
ダンジョンの事、スキルの事、魔物の事などが頭の中に流れ込んできたのだ。
そして、1日かけて集めた情報から、色々な事がわかってきた。
校舎内のライフラインは、まだ生きていたこと、スマホがたまにつながる事があり、通話までは無理だが、そのわずかな時間で外部の情報を得る事が出来たことなどが、非常に大きかった。
それらの事から分かったことは、今俺達のいる場所はダンジョンの中であること。
校舎を中心に、街一帯がダンジョンに飲み込まれたそうだ。
外では、それなりの騒ぎになっているのではないか?と思ったが、日本全国でダンジョンが出現し、混乱しているため、この街の事も「そのうちのひとつ」という扱いでしかなかった。
つまり外部からの助けは期待できないということだ。
次に、ダンジョンについての基本的な知識。
ダンジョンは、時間をかけて大きく深くなっていく。
ダンジョンをつぶすには、最奥にある『ダンジョンコア』を破壊すればいい。
しかし、ダンジョンをつぶしてしまえば、そこから得られるはずの「資源」もなくなるわけで、日本政府は、ダンジョンをつぶすことは良しとしないだろうという事は容易に想像できる。
そのダンジョンを攻略するための力についても、ある程度分かった。
まず、ダンジョンで魔物を倒すと、その状況に応じて体が作り替えられていくらしい。いわゆるレベルアップというやつだ。
俺が、あの大蛇を倒せたのも、普段より動けたという事に理由がある。おそらくだが、あの日、学校に来る前にゴブリンを倒していたためレベルが上がっていたのだろう。
現に、大蛇を倒した今、以前より体が頑強になり力が上がっているのを実感している。
要は、魔物を倒してパワーアップし、より強い魔物を倒せという事なのだろう。
戦いの際に生じるエネルギーが、ダンジョンの餌になるらしい。
大きな力を使えば使うほど、ダンジョンが得られるエネルギーが膨大になる。
魔物のドロップや時折現れる宝箱、ダンジョン内で採集できる資源などは、すべて、人を呼び寄せるためにダンジョンが用意した餌だというわけだ。
最後にクラスとスキルについて。
ダンジョンを攻略するために便利な力、それがスキル。
天啓とも呼ばれる、突然授けられる固有スキルと、ダンジョン内の行動の結果得られる後天的スキルとに分かれるらしいが、後天的なスキルは「クラス」によって偏るという事。
クラスというのは、ゲームで言うジョブみたいなもので、剣士とか魔法使いとか、そう言ったものだ。
クラスが剣士なら、剣を扱う戦士としてより戦いやすくなるようなスキルを得やすい、といった感じだ。
「はぁ、まるでゲームそのものだな。」
正直、こういうのは、大好きだ。普段の俺であれば喜んでいただろう……代償が自分の命でなければ。
これはゲームじゃなくリアルだ。
動かない左腕が、そのことを訴えてくる。
因みに、俺のスキルは「無限収納」でクラスは「荷運び」だ。これが戦闘系スキルなら、あの大蛇との戦いはもっと容易くなったのだろう。
ただ、俺のこのスキルは、あの地震の後得たものだ。
タイミングからして、街がダンジョンに飲み込まれたことによって顕現した……いわゆる先天性の固有スキルだ。
だから、普通のスキルより強力なのは間違いないだろう。
そう信じて、色々試してみた。
結果、一度収納してしまえば、その物がどういうものかがわかるという事を発見した。
どういうことかというと、俺が持っている「草薙いだ剣」。
これは大蛇のドロップ品ではあるが、手にしたときは、それはただの錆た剣にしか見えなかった。
魔石などもそうだ。ただの変わった石にしか見えない。
だけど、収納してから、そのアイテムを選ぶと「草薙いだ剣」「デミヒュドラの魔石」と、言ったように、固有名称がわかる。
更に、そのアイテムに意識すると、詳細説明が頭の中に浮かぶのだ。
これは最早、鑑定スキルと言ってもいいのではないだろうか?
戦闘向けでない俺のスキルでさえ、これほど強力なのだ、戦闘向けの天啓スキルはどれほどのモノか?と、想像するだけで怖くなる。
まぁ、そんな感じで、大蛇戦の後、1日かけて回復と思考に専念し、ようやく動けるようになったので、校舎内を探索している。
外にはまだ魔物が徘徊している。一人で出て行くには、もう少し強くなる必要がある。
そのためには安全に休める拠点の確保が必要だ。
校舎内で確保しておきたい場所の候補としては、保健室、理科室、調理室、情報処理室、技術工作室あたりだろうか?
まず、保健室……あそこには様々な薬品がある。ダンジョンで受けた傷にどれだけ効くか分からないけど、気休めでも無いよりはましだと思う。そして何より、あそこにはベッドがある。教室の床で寝るのと、ベッドの上で寝るのでは、疲れの取れ方は段違いだろう。
次に理科室。
保健室と同じく、薬品がたくさんある。爆弾とまではいかないけど、攻撃用に使える何かぐらいは作れるかもしれない。それにあそこにはガスバーナーやアルコールランプがある。火が使えるって言うのは、この状況では非常にありがたい。
火を使うというのであれば、調理室が一番だろう。
その名の通り、調理するための道具が一そろい揃っている。
俺の収納の中には、買ったばかりの食材が入っている。
収納の中に入れておけば時間が止まるらしく腐ることはないが、調理できなければ持っている意味がない訳で……。
そういう意味でも調理室の存在は押さえておきたい。
後、絶対ではないが押さえておきたいのが情報処理室と技術工作室。
技術工作室なら、武器になりそうなものがあるだろうし、情報工作室にはパソコンがある。
不安定ではあるがネットに繋がるなら、スマホより外の情報を得やすい事は確かだ。
俺はそう考えて、取り敢えず一番危険がありそうな保健室に向かう。
保健室は1階にあり、昇降口にも近い。
ここまでの様子を見ている限り、2階以上に上がってくる魔物は少ない。
階段を上がるという概念がないのか、上がれないのか……もっと単純に上がりたくない……と言うか上がる必要がないと考えているのか……。
そういう意味では、安全な拠点は2階以上に作るのがいいのだが、それでも、ベッドだけは手に入れておきたい。
そう考えて、保健室へ進む。
そこで俺が見たものは、異形の、触手を生やしている魔物だった。
よく見れば触手というより、木の根と言った方がいいかもしれない。
……という事は植物型の魔物か。
俺は手にした、「くさないだー(草薙いだ剣)」握り締めてそっと近づいていく。
その異形の魔物……仮称:トレントは、目の前の女の子を襲うのに夢中で、こちらには気づいていない。
俺は、絶妙な位置に立つと、思いっきりくさないだーを振り下ろす。
背後から一撃を受けた、仮称:トレントはその一撃であっさりと息の根が止まった。
どうやら「くさないだー」には植物系の魔物に対しての特効があるらしい。
それが知れただけでも、この戦闘には意味がある。俺はそのままその場を立ち去ろうとするが、小さな声で「助けて……。」と聞こえて来たので、脚を止める。
……そう言えば、誰か襲われていたっけ。
俺は近づくと、そこに女生徒が倒れているのを発見した。
服は粘液で溶かされたのか、あちこちが破れ、溶け、かなり危ない姿になっている。
……と言うか、この子、あの時助けた子だよな?
女生徒の顔に見覚えがあった俺は、昇降口で襲われていた子だったと気づく。
俺は、このまま放置するかどうか悩む。
この時俺の脳裏によぎったのは、春香の姿。
どうせ、こいつも、助けた後裏切るんだろ?
そんな声が聞こえてくる。
裏切られるぐらいなら……俺が選択するのは……。
現在、本編を書いてから、18禁の方で付け足し、削除、改変を行っているのですが、どうしてもエロ方面に思考が……(--;
先に18禁版書いてから、エロ関係を削除した方が早いかなぁ?
色々試行錯誤してますので応援よろしくお願いします。
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