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第二話 閉鎖学園

学校に向かう途中、いつもの道をかけていく。

いつも飲み手ではあるが、もはや普段見慣れた通学路ではない。

建物が半壊、瓦礫の山が道を塞ぐ。

「くっ、通れないか。」

俺は、瓦礫の脇を擦り抜けようとして、違和感を感じ飛びのく。

突然、瓦礫の陰の中からゴブリンが飛び出してきた。

俺は一瞬身を固くしたが、すぐに身をかわし逃げることを考える。

しかし、ゴブリンがぐるっと回りこんで、行き先を塞ぐ。

「やるしかないか…」

俺は物陰に隠れながら、震える身体を必死になって抑える。

「ご、ゴブリンなんて、じょ、序盤の雑魚……じゃねえか。っ、うわぁぁぁっ!」

隠れていた場所を覗き込んできたゴブリンに、俺は持っていた鞄をゴブリンに向かって投げつけ、その一瞬の隙をついて距離を取る。周囲を見渡しながら、どうやって切り抜けるか考えるが、ゴブリンは徐々に俺に向かってきやがる。


急に加速して俺に向かって突進してきた瞬間、俺は反射的に足を踏み込み、そのゴブリンの足を払い倒す。

倒れたゴブリンに向かって、近くに落ちていた、尖った木の枝を拾い上げ、全力で突き刺す。

ゴブリンが苦しそうにのたうち回るが、そんなのを確認している余裕はない。

俺はただ、がむしゃらにゴブリンの身体を突き刺していく。

ゴブリンの動きが止まっても、俺は気づかずに刺し続ける。

それはゴブリンの身体が消えて、突き刺すものが無くなるまで続いた。

「はぁはぁはぁ……うっ……。」

ゴブリンを突き刺した時の感触を思い出して、俺はえずく。

よく考えれば、朝も昼も食べてないから、はきだすものがなく、ただ胃液だけをまき散らすことになったのは良かったのか悪かったのか……。


だが、安心するのはまだ早い。周りにはまだゴブリンが残っているかもしれない。

呼吸を整えながら、俺は警戒しつつ、瓦礫の山を擦り抜けていく。


「はぁはぁはぁ……。」

俺は瓦礫の山から大分離れてからようやく息を吐く。

「マジか……あんなのが街中に出るなんて……。」

アレはマジモンの魔物だった。

俺は握りしめていた手を開くと、そこには小指の爪程度の大きさの赤黒い石がある。

さっきゴブリンを倒した時に堕ちていたものだ。

「これが魔石……か。」

俺はしばらくそれを見つめた後、ポケットにしまい、そのまま学校へと駆け出していく。

晴香……無事でいろよ。

それだけを念じながら。



「はぁはぁはぁ……おかしい。」

ようやく学園に辿り着いたものの、違和感を感じる。

が、しかし、何がおかしいのか分からない。

「何だ…この違和感は…」

ふと立ち止まって周囲を見渡した。そこには、見慣れた校舎と生徒たちの姿が広がっている。

いつもと変わり映えのない風景……どこがおかしいのだろうか?

そこまで考えて、どこがおかしいのかに気づく。

街があんなに変わり果てているのに、この学園だけがまるで何事もなかったかのように、いつもと同じ光景を保っている。それが違和感の正体だ。


俺は眉をひそめながら、周りをもう一度確認した。生徒たちはいつも通りの会話をし、教師たちも普段と変わらない様子で動いている。だが、その平穏さが逆に不気味だった。まるで時間がこの場所だけ止まっているような…そんな感じがした。


「街があれだけ変わってるのに…この学園だけが無事なわけがない」


俺は胸の中でつぶやきながらも、慎重に足を進めた。

何かがおかしい、そう思いながらも、今は教室に向かうしかない。

周囲を警戒しつつ、俺は教室への道を歩いていった。


扉の前に立ち、深呼吸をしてから、そっとドアを開ける。

教室の中も、まるでいつもと変わらない光景が広がっていた。クラスメイト達が、昼を食べ終わった後の断章に興じている。

窓から差し込む陽光もいつもと変わり映えもなく……でも、その全てが俺にはどこか作り物のように感じられた。


「一体、何が起きてるんだ…」


俺は訝しげに教室の中を見回しながら、自分の席に向かった。

「あ、かな……椚木君、お昼食べ終わったの?」

晴香がいつもと変わらない笑顔で俺に声をかける。

「あ、あぁ。」

俺は戸惑いつつも席に腰を下ろし、振り返って春香に声をかける。

「なぁ、は……北野。さっき地震なかったか?」

「地震?ないよ?」

「全くか?」

「うん、まったく……。」

晴香がそう応えた直後、校舎全体が突然ぐらっと揺れた。

思わず机に手をついて、何とかバランスを保つが、教室内は一瞬でパニックに包まれた。


「な、なんだ!?」


「地震!?」


生徒たちは口々に叫びながら、立ち上がって周りを見渡す。

机や椅子が音を立てて揺れ、何人かは床に尻餅をついてしまっている。

教室中がざわめきに満たされる中、俺もその異常事態を理解しようと必死だった。


すると、次の瞬間、ドォォォンという大きな爆発音が響き渡った。

教室の窓ガラスがビリビリと震え、生徒たちの悲鳴が一層大きくなる。


「爆発だ!早く逃げろ!」


誰かが叫び、それが引き金となったように教室内は大混乱に陥った。

生徒たちは一斉に出口に向かって殺到し、我先にと逃げ出そうとする。

机や椅子が倒れ、荷物が床に散らばる。

異常事態に気づいた教師たちもやってきてどうにか生徒たちを落ち着かせようとするが、その声はほとんど聞こえていない。


俺は混乱の中で何とか冷静さを保とうとしながら、状況を把握しようと必死に周囲を見渡した。

校舎全体が揺れているということは、これはただの爆発ではなく、何かもっと大きな異変が起きているに違いない。


「落ち着け…まずは外の状況を……」

俺の脳裏に、自宅周辺の惨状がよぎる。

俺はかかるく首を振り、その記憶を振り払う。

俺は混乱の波をかき分け、出口へ向かおうと決意する。

教室内は依然として混乱の渦中にあり、生徒たちの恐怖の叫び声が響いていた。

俺はその中を必死に進み、なんとか無事に外に出ようと足を踏み出した。

途中、春香の姿がない事に気づき、気になったが、今は周りに気を配っていないといけない。少しでも気を抜いたら、この人波に溺れてしまうからだ。

俺は上手く人波をかき分け、隙間を縫いながら昇降口へと向かう。


昇降口が近づくにつれて、混雑はさらに激しくなり、押し合いへし合いの状態に。何とか出口にたどり着こうと、俺も必死に進んでいたその時、目の前の光景に息を飲んだ。

昇降口の外、そこには見慣れない巨大な影がいくつも蠢いていた。オークだ。

ゲームや本でしか見たことがないような、筋骨隆々の大きな体を持つ魔物が何体も立ちはだかっている。彼らは生徒たちに気づくと、醜い笑い声をあげ、太い腕を振りかざして襲いかかってきた。


「オークだ!やばい、逃げろ!」


誰かが叫び、昇降口にいた生徒たちが一斉に後退しようとするが、もう遅い。

オークたちは生徒たちを次々と捕まえ、重い足音を響かせながら前進してくる。

その圧倒的な力と恐ろしさに、何人かの生徒はその場で足がすくんでしまっていた。


「危ないっ!」

俺は一人の女生徒に向かって飛びつく。

その勢いのまま、俺とその女生徒はもつれあいながら転がる。

女生徒がいた場所には、オークの持った剣が床にめり込んでいた。

「あ、あぁぁ……。」

「大丈夫かっ!呆けてる場合じゃないぞっ!」

俺は女生徒を抱きかかえ、階段下へと逃げ込む。

オークたちは、逃げ惑う生徒たちを蹂躙するのに夢中でこっちに意識を向けていない。

俺は一息ついたところで、女生徒の頬をぺちぺちと叩く。


「あぁぁっ……ハッ!」

「落ち着いたか?」

ようやく目の焦点があった彼女の顔を覗き込むように声をかける。

「あ、はい、私は……ひぃぃっ!」

「見ない方がいい。それより、動けるなら、この階段を上がって教室に戻るんだ。』

俺がそういうと、彼女はコクっと頷き、よろよろと階段を上がっていく。

その音で、こっちにも階段があることを思い出した生徒たちが一斉に群がってくる。

幸いにも、オークたちは、最初に捕まえた犠牲者たちを嬲るのに夢中で、大半の生徒たちが逃げ出すのに成功していた。


俺はせめてオークに一矢報いることが出来ないか?と考えるが、今の状況では無理だと、判断する。

オークに襲われている生徒を視界に入れないようにしながらお俺は階段を駆け上がり教室へと戻る。

「あ、彼方ぁ……よかったぁ。生きてたぁっ!」

教室から顔を出して廊下を伺っていた女生徒が、俺の姿を見るなり、跳びついて来る。

「晴香っ、早く戻ってっ!」

教室から、別の女生徒の怒鳴り声が聞こえる。

「あ、うん、彼方君、行こ。」

晴香は俺の手を握ると、引っ張る様にして教室へと戻るのだった。

非日常の始まりです。

キミは、生き延びることが出来……ゲフンゲフン……。

18禁Ver.は深夜更新です。



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