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第一話 崩壊の始まり

キーンコーンカーンコーン……。


俺がゴールテープを切るように、手を上げながら門をくぐると予鈴が鳴る。

今日も助かった……。

俺の背後で、ごぉぉぉ……と大きな音をたてながら門が締まる。

一度門が締まってしまえば、自由な出入りは出来なくなる。

時間内に出る場合、事務で届け用紙をもらい、理由を書いて担任の承諾印をもらわなければならない。

その承諾印が押された書類を守衛に見せて、ようやく門を開けてもらえる。

守衛は常に交代で見張っているので、その目を盗んで乗り越えようとかは実質不可能である。


当然入るときも然り。

学生や関係者であれば身分証明を見せ、担当の先生に門まで来てもらう。

遅刻の場合は、すぐ入ることが出来るが、そのまま生徒指導室へ連行、尋問とお説教が待っている。

外来者の場合、相手が門まで来て門越しに用件を伝えることが多く、校内へ入るには、事前に許可が必要という徹底ぶり。

何でも、政府の何かのモデルケースになっているとかで、その関係で警備も厳しいのだとか。

大人の事情であり、俺たちにはよくわからない話だ。


もっとも、こういう場合にありがちな、「生徒だけしか知らない、秘密の抜け道」というのが、いくつか存在する。

ただ、その存在はトップシークレットであり、特定の団体内でのみ口伝で伝えられていて、たとえば、「野球部の連中だけが知っている道」だとか、「生徒会がこっそり利用している道」など、多種多様にわたっている。

もっとも、大半は同じ場所だったりするのだが。

それでも、複数あるのは間違いなく、俺が知っているだけでも3か所はある。

そう考えると、管理がばがばじゃね?と思うのだが、おそらくだけど、抜け道の事は教師の大半も知っていて、見て見ぬふりをしているのだと思う。


っと、そんなこと考えてる場合じゃなかった。

俺は急いで靴を履き替えると教室へと向かった。


教室のドアを滑り込むように開けた瞬間、時計をちらりと確認する。遅刻ギリギリ…なんとかセーフだ。息を整えながら教室に入ると、いつものようにざわざわとした雰囲気が広がっている。


「おはよう、椚木(くぬぎ)君」

すぐに、後ろの席の女子が俺に声をかけてくる。

北野春香……セミロングでぱっちりとした瞳の可愛い少女だ。ついでに言えば胸部装甲もなかなかである……朝のニュースキャスターには及ばないが。

春香とは中学からの付き合いであり、ずっと同じクラスという奇遇な仲だ。だからこうして、今でもちょっとした会話ぐらいはする。

クラスの中で唯一俺に声をかけてくる女子と言っても過言ではない。

もっとも、彼女は誰にでも気さくに話しかけるので、俺に気があるんじゃ?と勘違いしてはいけない。

勘違いして告白でもしようものなら……。「友達だとしか思ってなかった」と、痛烈なボディブローを受けるに違いない。

彼女の声は明るく、教室のざわめきの中でもしっかりと聞こえる。

振り返って軽く手を挙げ、彼女に挨拶を返す。

「おはよう、北野。今日もギリギリだったけど間に合ったぜ。」

俺の言葉に、彼女はクスッと笑う。その笑顔に、ドキッとするものの、必死になって心臓を押さえる。なんだかんだで、こうして毎日遅刻寸前で教室に入り、他愛もない一言二言を、春香と話すのが、俺の朝の日常になっている気がする。

この、ちょっとしたやり取りがすごく楽しい。春香もそう思ってくれていればいいんだが……。

俺は席に着きながら、いつも通りの教室のざわめきに耳を傾け窓の外を見る。

いつもと変わらない青空がそこには広がっていた……今日はどんな一日になるだろうか?

3時間目の途中、授業が進むにつれて、俺の頭の中は完全に別のところに行ってしまっていた。

机に肘をついて、視線は黒板を向いているけれど、意識はまったく別の場所。

家に放置してきた食材が気になって仕方がない。

あれ、全部クーラーボックスに入れたっけ?保冷材ってどれだけ持つんだろう??肉だけでも冷蔵庫に入れるべきだったか………?


そんな考えが頭をぐるぐると回っていると、ふいに背中をつつかれた。振り返ると、後ろの席の春香が俺に小さなメモを渡してきた。

「どうしたの?」とだけ書かれたシンプルなメッセージだ。


俺は軽くため息をついて、ペンを手に取る。

そしてメモの隅に「家に放置してきた食材が気になってさ。今すぐ帰りたい」って書き込んで、春香にそっと返す。

春香はそれを読むと、ちょっとだけ困ったような顔をしながらも、クスリと笑い優しく微笑む。

そしてもう一度メモが回ってくる。

「やっと食材買ったんだね。今晩作りに行ってあげようか?」

メモにはそう書かれていた。

マジかっ!

夕食を作りに春香が俺の家に来る?

そうしたら当然……


イケナイ妄想が、頭の中をぐるぐる回る。

すると、そこにまたもやメモが回ってくる。そこには……。

「やっぱやめた。なんかやらしい目してるしぃ。身の危険を感じる。」

……うん、俺の妄想はバレバレだったようです……反省。


授業が終わると、俺は購買に行く振りをして、秘密の抜け道から家へと向かって走る。

俺の通う学園は、午前3時間、午後3時間という変則的な時間割なので、昼が比較的早い。だから周りもまだ昼時前なので道行く人は少ないのが救いだ。

俺はせっかく外に出たので、近くのコンビニで弁当を買う。

家で食べてから学校に戻ればちょうどいい時間だろう。

そうして寄り道をしながら家に着くと、ちょうど正午の5分前だった。


「おっ、やっぱり戻ってきてよかったぜ。」

クーラーボックスの中の氷が全て溶けていて水が溜まっている中、水浸しになった肉のパックを取り出す。

パックになっているため、中まで水は入っていないが、夕方まで放置していたらどうなっていたか分からないだろう。

俺は冷蔵庫を開け、適当に中に肉のパックを押し込み扉を閉める。

「これで良し、と。」

今日は早く帰ってきてカレーでも作るか。

カレーなら一度に食材を多量に消費できる。その分できた量が半端なくなるが、その代わり数日間料理の必要がないのがいい。

「はぁ、マジに晴香ちゃん夕食作りに来てくれねえかなぁ。」

冗談だったのは分かっている。

しかし彼女がこの家で、エプロン姿でいることを想像するだけで、イケナイ妄想が頭をよぎる。


『彼方ぁ……デザートは、私……じゃぁ、ダメ?』

脳裏に裸エプロン姿の晴香で一杯に……。


ピンク色の妄想に耽っていると、突然、家全体が大きく揺れる。

「なんだぁ!?」

俺が慌てて、部屋の中央に移動しようとすると、がくんっと大きな衝撃が起き、……収まった。

「なんだったんだ、今のは?……っ!」

現状を確認する間もなく、突然に襲ってきた頭痛に俺は頭を抱える。

「な、なんだ……これは……。」

頭の中に浮かび上がるイメージ?文字??……何と表現すればいいのだろうか?無理に表現するとすれば、声がイメージとなって流れてくる?といった感じだ。

訳が分からないが、内容ははっきりと伝わってきた。


「これが「スキルの顕現」か。」

俺は頭痛が収まるとそう呟く。

俺の頭の中に流れ込んできたイメージは、自分が得たスキルと、その特性について教えてくれた。

俺が得たスキルは『無限収納(インベントリー)』だ。

亜空間を使って、自由にものを出し入れする機能……だそうだ。

使い方は簡単。収納したい物に触れて、しまうイメージをするだけ。取り出す時は、収納のイメージを呼び起こせばリストが出てくるので、それを選ぶか、取り出したい物をイメージするだけでよかった。

俺は、試しに目の前にあったコンビニ弁当を収納してみる事にした。

手に触れて仕舞うイメージをしてみる。

すると、目の前の弁当が姿を消し、頭の中にコンビニ弁当のイメージが残る。

「おぉ、すげぇ。」

俺は面白くなり、調子に乗って家の中のモノを、手当たり次第収納していく。

10分後、気づけば家の中が空っぽになっていた。

……引っ越しの時楽そうだよな。

そんな事を考えていて、ハタッと現状に気づく。

「そうだっ、学校っ!」

俺は慌てて家を飛び出し……その異様な光景に絶句する。

目に飛び込んできたのはまるで地獄絵図のような光景だった。

空は薄暗い雲に覆われ、太陽の光は地面に届くことなく遮られている。

周囲の建物は倒壊し、一部はかろうじて形を保っているが、今にも崩れそうだ。

道路には瓦礫や破片が散乱し、人々の気配はほとんど感じられない。

まるで世界が一変してしまったかのようだった。


「学校にいる晴香は無事なのか……?」

胸の奥で膨らむ不安を抑えきれず、俺は足を動かし始めた。

ゴーストタウンのように静まり返った街の中を駆け抜け、友の安否を確かめるために学校を目指す。

今回シリアス路線の予定ですが、それだけにえちえちなシーンの入る余地がないですねぇ。

まぁ、18禁だからと言って、そういうシーンが必ず入るわけじゃないですし……。

……二話目にして早くも行き詰ってしまった。

うん、何とかなるでしょ。


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