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第十一話 ダンジョン探索 その1

「じゃぁ、校舎を出て、周りを探索することでいいな?」

俺の言葉に一同が頷く。

かすみたちを癒して合流した翌日、俺は皆と今後の行動について話し合った。

校舎内はある程度探索し終えているし、信也の情報からも、これ以上探しても生き残った生徒はいないだろうという判断から、目的を校舎内からその外へと向けることを、皆も納得した。


「あ、そうだ。かすみにこれをやるよ。」

「これは?」

俺が渡した一振りの剣を見て、少しだけ不思議そうな顔をする。

「それはな『くさないだぁー』という銘の剣で、植物系の魔物に特攻がある。剣術のスキルを持ったかすみの方が、俺が使うより、上手く扱えるだろ?」

「あ、うん、ありがと……大事にするね。」

かすみは、そこはかとなく嬉しそうな表情を見せて、くさないだぁーを帯剣する。


「当面は探索しながら、弱そうな魔物を倒してレベル上げとアイテム収集。余裕が出来てきたら探索範囲を拡げる方向で。」

俺の言葉に、皆が再び頷く。

現状、武器と言えるものは、かすみが持った「くさないだぁー」と、信也の持つ改造モデルガンのみ。

流石に心許ないので、美也子は調理室にあった包丁を、芽衣子は、購買部にあったヘアスプレーとライターを武器として携帯している。

俺と言えば、くさないだーをかすみに渡してしまったので、加工技術室にあった、バールをとりあえず代わりにしている。

……とりあえず、ゴブリンやコボルトから、奴らの武器を奪おうか。

ゴブリンは短剣や穴の開いた長剣を持っていることが多く、コボルトはナイフや石斧などを装備している個体が多い。

奴らを倒してその武器を奪えば、多少は戦力アップにつながるだろう。


そんな事を考えながら、俺達は校舎を出る。

先頭はかすみと信也。

信也の拡張された視覚と聴覚、嗅覚を頼りに、警戒しながら進み、魔物が出たら、かすみが斬り込んでいく。

その後ろを美也子、芽衣子がついていき、戦闘が始まれば、美也子がバフを掛けて後方へ下がり、有事に備えるのだ。

そして殿が俺。

前とは少し距離を開けることで、バックアタックを受けても、余裕を持たせる。

本当は「気配探知」などのスキルがあればいいんだけど、今はないものねだりをしても仕方がないからな。


特別棟の裏側には、俺達が良く使う「抜け穴」がある。

そこを使って外に出るのだが、「抜け穴」付近には、魔物がいることが多いから、俺達は警戒を強めながら、真っすぐそこに向かった。


結論から言えば、そこに大した魔物はいなかったが、「抜け穴」から外に出るまでに1時間以上の時間を有することになった。

なぜなら……。


「かすみぃ、そっちに行ったよぉ。」

「任せてっ……えいっ!……どう?」

「……ダメ、おねえゃん、もっと手加減して。」

「ごめん…今度こそうまくやるから……。」


「なぁ、兄弟……いい加減草むしりに飽きて来たんだが?」

「あー、まだアッチが時間かかりそうだからなぁ。……「草むしり」に飽きたなら「石拾い」をたのむ。」

「げぇ……マジか……。」

信也が、うんざりとしたような顔で、近くの岩肌を削り始める。


事の起こりは、抜け道を塞ぐようにトレントがいたことだった。

信也が、トレントの目の部分を打ち抜き、俺がバールで叩きつけ、かすみがくさないだーを振るう……それで終わりだった。

くさないだーを手にした俺一人でも、何とかなった相手だ、今更苦戦などするはずもなかった。

そこまでは想定内だったのだが、ここで思わぬ事態が勃発する。

トレントの陰からウサギが出てきたのだ。

額に角を生やしたホーンラビットという魔物。

それを見た芽衣子が「テイムしたい」と言い出したのだ。

しかし、テイムするには、ある程度弱らせる必要があり、また、芽衣子の熟練度にも関係するらしい。

かくして、「芽衣子のホーンラビットテイム作戦」が発動された。

幸いと言っていいか分からないが、この辺りに巣があるらしく、ホーンラビットのテイムに失敗し、処分することになっても、探せば何匹でも発見する事が出来たので、成功するまでやめない、と芽衣子が燃えた。

最初こそ手伝っていた俺と信也だが、俺達がいると「過剰戦力」となり、ホーンラビットが逃走してしまう為、早々に「戦力外通知」を言い渡された。


暇になった俺は、今までずっと放置してあった地竜を始めとする、魔物から得たドロップアイテムをひとつづつ調べていく。

すると、ドロップアイテムの一つに『基礎錬金術の書(地)』というものが1冊、『素材回収の書(地)』というものと『素材回収の書(植)』というものが各7冊あった。

俺は試しに、『基礎錬金術の書(地)』に触れると、そのアイテムは光の粒子となり俺の中へ吸い込まれていく。

同様に、『素材回収の書(地)』『素材回収の書(植)』にも触れてみると、同じように光の粒子になって俺の中に吸い込まれていく。

そして唐突に頭の中に知識が流れ込んできて、スキルが生えたことを理解した。


「はぁ、そういう事か。」

「どうした兄弟。何かあったか?」

「あぁ、面白いものがあったぞ。表紙に手のひらを当てる様に触れてみな。」

俺は信也に『素材回収の書(地)』と『素材回収の書(植)』を差し出す。

「ん?こうか?」

信也は疑いもせず、そのアイテムに触れると、俺の時と同じように光の粒子となって信也の中に吸い込まれていった。

「これは……なるほど、そういう事か。」

信也が納得したようにウンウンと頷く。

『素材回収の書(地)』『素材回収の書(植)』がもたらしたのは「採集」というスキル。

(地)(植)と付いているように、数多ある素材の中で、「地」に関するもの……土や鉱石など……と、「植」に関するもの……植物系素材など……の、判別方法や鑑定、採集の仕方などがわかるスキルだ。

現に、近くの草むらを見ると、その中で、光って見える草があるのがわかる。

じっと見ると、ポーションの素材になる薬草というのがわかる。これがスキルの力なのだろう。


「そういう事だ。で、取り敢えず、目につく素材を集めて来てくれよ。」

「まぁ、暇だからいいけど、兄弟は何するんだ?」

「俺は、「錬金術」の劣化スキルを手に入れたから、試してみるつもりだ。」

「錬金術?」

「あぁ、お前が集めてきた薬草で「ポーション」を作る。」

「ポーション……だと?……出来るのか?」

「あぁ、現状では、初級の「劣化ポーション」だけみたいだけどな、熟練度が上がれば、ハイポーションや状態異常回復薬なども作れるっぽい。」

「おぉ、それはすげえな。よし、素材集めは任せろ!」

そう言って意気揚々と草をかき分け薬草を採集する……曰く「草むしり」を開始した信也。

俺は集まった薬草を、収納に入れてより分け、錬金術スキルを使って劣化ポーションの作成を始める。


そして1時間が過ぎるころ……。

「もぅ、草むしりも石ころ拾いも嫌だぁ!」

そう言って地面に転がる信也と、その周りに転がる空き瓶。

信也が「疲れた」というたびに、作ったばかりの劣化ポーションを飲ませてみたのだ。

人体実験……ゲフンゲフン……俺の優しさの効果は、草むしりで突いた擦り傷や浅い切り傷などは即座に治し、エナジードリンクより少しだけ疲労回復効果があったみたいだ。


「はぁはぁはぁ……おにぃさんっ!ついにやりましたぁっ!」

芽衣子が嬉しそうに駆け寄ってくる。

その手には、ぐったりとしたホーンラビットが……って、それ死にかけてない?

「お姉ちゃんの手加減をミスった攻撃にも耐えてましたし、この娘きっと強いですよっ!」

……いや、だから、死にかけてない、それ?

俺はとりあえず、地面に転がっている劣化ポーションを、そのホーンラビットに降り掛ける。

すると、表面から滲んでいた血は止まり、傷口が見る見るうちに塞がっていく。

「ほら、もう一本」

俺が芽衣子ちゃんにポーションを渡し、飲ませるように言うと、芽衣子ちゃんはようやくウサギの惨状に気づく。

「酷いっ!誰がこんなことを……。」

……いや、キミ達でしょ?

天然なのかな?

俺がそう思っていると、芽衣子はポーションを断り、スキル『仲魔回復』を発動させる。

見る見るうちに、残っていた傷も癒され、ウサギは元気を取り戻す。

「おにぃさん、この子『ライトニングホーン』っていう種族です。とっても強いですよぉ。これで私も戦えますっ!」

……いや、戦うの芽衣子ちゃんじゃなくいてそのウサギだよね?

やっぱり天然なんだろうか?

因みにライトニングホーンはホーンラビットの上位種、アル・ミラージの変異種だそうで、通常のアル・ミラージは、炎属性を持ち、火焔を放つらしいが、ライトニングホーンは雷を操るという。

そう簡単にテイムできる魔物じゃなさそうだが、そこはやっぱり、ユニークスキルってことなんだろうと思う。

俺達は、その場で一度休憩し、皆の体力、気力が回復したところで、「抜け穴」を通って、校外へと向かうのだった。

うーん、最初の予定では、ダンジョン探索まで行くはずだったのが、その手前で終ってしまいました。

なので、ダンジョン探索は次回に。

そろそろタイトル回収が出来そうなのですが……ってこれもネタバレ?



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