プロローグ もはやテンプレ
新作です。
はい、なにも聞こえません、新作なんですっ!
「にゃんだーぶれいくっ!」
俺の持つ、頭が巨大な肉球型のロッドから、極大の雷がほとばしり、目の前のジャガーウルフたちの息の根を止める。
これは、俺の横にいるルインを、助けた時に見つけた聖遺物だ。「レア武器」と言った方が分かりやすいだろうか?
最初見つけた時は、単なる棒だと思い投げ捨てようとしたのだけど、一応念のため、と持ち帰って鑑定してみたら、コレがなんと、「相手の持っているスキルをコピーして使える」という、とんでもない、ウルトラスーパーレアなアイテムだった。
ただ、コピーするためには、色々条件があり、その条件のために、昨晩はルインをたっぷりと虐め抜いた。
そのせいか、ルインは未だ頬を染めて俺のそばから離れようとしない。
「よしっ、これは大きな戦力アップだな。」
「よかったにゃんっ!全部ボクのおかげだニャンっ!」
ルインがそういってまとわりついてくる。
間違ってはいないが、素直にそう言ってやるのは、なんだか癪なので、俺はルインの尻尾を掴んで逆なでしてやる。
「ひぃにゃぁぁぁぁぁぁっ!それダメにゃぁぁぁぁ……!」
ルインはさっと飛び跳ね、俺から距離を取ると、「フーっ!」と威嚇してくる。
「はいはい、じゃれるのはそこまでにして、とりあえずご飯にしましょ。」
呆れた声を出しながら、間に入ってきたのは葛城美也子。俺の隣のクラスの委員長だった女の子だ。
そう……だった、のだ。
……あれから、まだ三か月しか経っていない……いや、三か月も経ったと言った方がいいのだろうか?
俺は、三か月前の出来事に想いを馳せる……すべてはあの時から始まったのだ。
◇ ◇ ◇
ジリリリリリリ・・・・・・・
耳障りな音で俺は目を覚ます。
その音の現況を見ると、時計の短い針は6を指している。
……まだ早えぇよ。
俺は手を伸ばし、リモコンを掴むと電源を入れる。
するとベッドサイドのテレビに、最近人気の高い女性キャスターの姿を映し出す。
そのキャスターの人気の秘密は何といってもその巨大な胸部装甲である。
ちょっと動くだけでたゆんたゆんと弾む胸部装甲には男の夢とロマンがいっぱい詰まっている。
そのロマン見たさに、世の中の男連中は朝からニュースを見ている。誇張ではない。その証拠に、このキャスターが出ている時間帯の視聴率は30%を超え、夏で薄着になったときは40%近くまで跳ね上がるという噂だ。
……そんなことはいいか。
俺はまどろみながら揺れる胸部装甲を見て、耳から入ってくるニュースを聞き流す。
ニュースでやっているのは、日本で初めてダンジョンが発見されてから1年経つという内容だ。
ダンジョン……。
その物語やゲームの中ではおなじみの、ファンタジーの代名詞。
それが、ちょうど1年前、東京と神奈川の境に出現した。
最初は単なる地盤が崩れただけ、と思われていたその穴には誰が作ったのか、ちゃんと階段があり、調べに入った役場の男性は、そのまま帰らぬ人となった。これがダンジョンによる被害者第一号と認定される。
ただの陥没してできた穴じゃない、そう悟った役場のお偉いさんはすぐに都に連絡。
それからの対応は早かった。
国により出入りは規制され、周りを自衛官が24時間見張り、特別編成されたチームが何組か調査に潜る。
何度かの調査の結果、国はこの穴を「ダンジョン」と認め、国の管理下に置くことを発表した。
ダンジョンの穴が見つかってから、1か月という、何事においても時間がかかるお国の仕事としては異例の早さだった。
それ故に、国はダンジョンの存在を以前から掴んでいたのではないか?という憶測が流れ始める。
しかしいくら憶測が蔓延しようとも、現にダンジョンが存在する今となってはまったく無意味なことだった。
ダンジョンが現れて3か月たった頃、次の異変が起きる。
ダンジョン付近に住んでいる者たちから奇妙な訴えが出始めたのである。
「頭の中で声が聞こえる」「目の前に文字が浮かぶ」などと言ったものだ。
これに対して政府は「それはスキル獲得による現象なので心配はない」と即座に情報を開示する。
どういう理屈かはわからないが、おそらくダンジョンに適応するための能力が開花したのだ、これは新しい進化の形だ、と専門家はいう。
その証拠に、ダンジョンに入ったもののうち7割が、ダンジョンを中心に1㎞圏内に住んでいた者たちのうち5割が、5km圏内で3割の者たちが、そう訴えてきていて、10km以上離れた地域の者たちからは一切そう言う訴えがなかったからだ。
それと同時期に、ダンジョンの中から『鑑定石』と言うものが発見される。
これは手をかざすと、その人の持つスキルが表示されると言うもので、政府は、この鑑定石が見つかり次第各地域に送り、国民のスキル検査を推奨した。
鑑定石を導入して1か月の間は、特に何もなかった。
スキルがあると判断されるのは相変わらず、最初に見つかったダンジョンに係わりのある者たちの中からだけだった。
唯一変化があったと言えば、最初の検査ではスキルがないと判断された、入り口の警備員が、1か月後に「気配探知」というスキルが発言したということぐらいだろう。
これは専門家の言う「ダンジョンに適応するための進化」という説を裏付ける判断材料になるくらいで、そう騒がれることはなかった。
ダンジョンが現れて半年が過ぎるころ、国内でぽつぽつと「スキル発現者」が現れ始める。
スキル発現者の地域が固まっていることから、そこから新たなダンジョンが現れるのではないか?と騒がれ始めたのが、この頃だった。
9か月も経つと、ダンジョンの存在はへの興味が薄れていく……つまり……。
「あぁ、ダンジョンね。あっち行ったら見に行きたいね。」
「ダンジョン?あぁ、あの境にできたでっかい穴だろ?」
Etc.Etc……といった具合だ。
国民の感覚では「古墳が見つかったから偉い学者さん達が調査している」程度にしか考えていない者たちが殆どだった。
スキルが発現した人たちも「だから何?」といった感じ……。何せ、スキルが発現したからと言って何か変わったことが起きるわけでもなかったからだ。
「スキルが発現したっ!」
「そうか。」
「おい、もっと何か言えよっ!普通、どんなスキルだ?とか聞くもんだろ?」
「あーはいはい。それでどんなスキルだ?」
「聞いて驚けっ!なんと『視覚拡張』だっ!遮蔽物を無視して遠くのものが見えるようになるスキルだと。」
「ほー、それはよかったな。で、遠くのものが見えるん?」
「聞いて驚け!なんと……視力が0.6から0.7に上がった!」
「……それって誤差のレベルじゃね?」
……とまぁ、こんな感じの会話がなされているのが現状では、仕方がないと言える。
世間がダンジョンに対し興味を失いつつある頃、ダンジョンの中では、亀の歩み程度ではあるが着実に情報を積み上げていった。
これまで分かったことをまとめると……。
・ダンジョンの中には「魔物」と呼ばれる個体が存在する。
一口に「魔物」と言っても、ネズミや蝙蝠、ウサギと言った小動物から、ゴブリンなどの人型、そしてスライムなどの、いわゆる「モンスター」まで様々であるが、共通しているのは……。
「ダンジョン内にしか現れない」「倒すと魔石を残す」「稀にドロップ品を残す」「死体は時間が経つと消える」
と言ったところだ。
ちなみに「魔石」とか「ドロップ品」というのは、専門家がそう口にしていたため、そのまま定着したようである。
その専門家は、たぶんゲーマーに違いない。
・ダンジョンの中では珍しい植物や鉱石を採集することが出来る。
地球上にあるものはもとより、だれも見たことのない植物や鉱石などが採れることもあるという。
ある時、銀色に輝く、銀に近しい、だけど明らかに銀ではない鉱石が見つかり、専門家はこれを「ミスリル銀」と呼んだ。
……専門家ってひょっとしたらゲームの専門家の事じゃないだろうか?
・ダンジョンの中ではまれに宝箱が出現し、その中からは、現代科学では解明できないような品が存在する。
ゲームやファンタジー小説でおなじみのポーションや魔道具などが、ごく少数であるが見つかっている。
これらの調査結果から、日本政府は本格的にダンジョンを「資源」と見立て、このダンジョンを攻略するための組織……いわゆる『冒険者ギルド』の設立を宣言したという。
そして、ダンジョン発見からちょうど一年目の今日の正午に、「冒険者ギルド」の発足と、一般人に向けた「ダンジョン探索者」の一般公募が発表されるという。
……そんな内容のニュースを、たゆんたゆんした男のロマンを眺めながら聞いていると、テレビ画面のある一点が気になった。
俺は、まさかと思い、そこをじっと注視する。……どうか見間違いであってくれ、と。
……しかし、見間違いではない。
その証拠に、俺が見ている目の前で、その下一桁の数字が一つ大きくなる。
……そう、画面の右上に表示されている、時刻を表す数字。
俺は枕元の時計を見る。
短針はまだ6を指している。
テレビを見る。
右上のデジタルな数字は「8:11」……ヤバい。予鈴まであと20分を切っている。
そんな俺の焦りを増長させるかのように数字が11から12へと変わる。
どうやら時計には遅延トラップが仕掛けたあったようだ。
俺は慌てて飛び起き、着替えながら歯を磨くという暴挙に出る。
朝ごはん?そんなの食べてる余裕はねえだろ?
そう思った俺の視界に、昨日買った食材の山がスーパーの袋に入れたまま放置してあるのが写る。
……昨日買ったまま放置して寝てしまったか。
しかし、悠長に冷蔵庫に放り込む余裕はない。
そもそも出しっぱなしにしてあるのは、冷蔵庫に入らず、中身の整理をしようとして面倒だったから放置してあるのだ。
今から冷蔵庫の中身を整理している時間などあるわけがない。
俺は転がっているクーラーボックスに保冷剤を入れ、食材を入れる。そして上から製氷皿にあった氷を全部入れてクーラーボックスの蓋をする。
これで夕方ぐらいまでは大丈夫だろう。
俺は手早く片付けると、家を出る。勿論施錠も忘れない。
テレビを消した時に見た時間が、8:20。俺の家から、学園までは歩いて20分程度の距離だ。全力で走れば5~6分で行けるから、ギリギリ間に合う計算だ。
……こんなことばかりしてるから、自然と基礎体力がついてしまっている。
うん、世の中のアスリートの皆様も、ギリギリ生活をお勧めします。
無理なトレーニングしなくても、ほらこの通り!
っと、バカなことを考えている暇はなかった。
俺は通いなれた通学路を全力疾走していく。
これが最後の通学だと知っていれば、もっと余裕をもってゆっくり歩くのだった、と、俺は後に後悔することになる。
この作品ちょっとチャレンジします。
深夜に18禁版をアップします。
※R18版はミッドナイトノベルズで。
https://novel18.syosetu.com/n3159jm
内容は、この全年齢版にエッチシーンが加わります。
勿論、内容的にエッチシーンが入らない場合は、同じものになりますが……。
ひょっとしたら視点を変えるかもしれません。
※18禁版は、更新日の深夜0時0分に更新されます。
とりあえず、暇な人も、そうでない人も、両方呼んで、ついでにブクマ・評価してくれると嬉しいです。
ご意見、ご感想等お待ちしております。
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