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第4話
次に気が付いた時、目の前にはマキさんの顔があった。
真剣な表情をこちらに向けて、一心不乱に絵を描いている。その様子を、僕は彼女の真っ正面から眺めていた。
初めて見る角度であり、その珍しさを嬉しく思った直後、違和感を覚えた。慌てて周りを見回そうとしたけれど、首どころか、視線の向きすら動かせない。
この段階で、ようやく僕は悟るのだった。自分が絵の中に閉じ込められている、ということに。
マキさんの口元に、再び魅惑の笑みが浮かぶ。
「高橋くん、これであなたもずっと一緒だわ。これからもよろしくね」
甘い声で囁かれて、僕は「それもいいかな」と思ってしまった。
(「池のほとりで絵を描く女」完)