表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

第3話

   

 今までは、歩きながら背中越しにチラッと見るだけ。だからマキさん本人だけでなく、彼女が描いている絵についても、じっくり眺める機会はなかった。

 池を描いている、という程度の理解だったが……。こうして改めて拝見すると、池を中心とした自然公園全体の絵であることに気づく。

 もともと散歩者も多くない公園だが、奇妙なことに、現実とは比べものにならないほどの賑わいが描かれていた。

 しかも、女性や中高年、年寄りは皆無。十代や二十代の若い男性ばかりだ。現実の自然公園を描いているのに、何となく非現実的な光景になっていた。

「……面白い絵ですね。男の人もたくさんいて」

 そう答えてしまった僕は、絵の中の男たちに少々やきもちを感じていたのかもしれない。

 同時に、初めて彼女を見かけた時の疑問が蘇る。

 マキさんみたいな女子大生ならば、こんな公園の絵を描くよりも、他に楽しいことがあるのではないか。それなのに、頻繁にここで絵を描いているのは、一体なぜなのだろう?

 口には出さなかったけれど、顔には出ていたのかもしれない。

「こういう絵って、描いていて本当に楽しいのよ。私はこの子達と戯れるだけで十分。大学の友人もいらない、って思えるほどなの」

 まるで僕の心を読んだかのように、彼女は答えてくれた。

 しかし『この子達』という言い方には深い愛情が感じられて、僕の嫉妬心も強くなる。

 それも彼女には見透かされていたらしく、マキさんは口元にコケティッシュな笑みを浮かべた。

「フフフ……。あなたも描いてあげるわ。この特別な筆で」

「是非お願いします!」

 彼女が取り出したのは、黒くて太い、見るからに存在感のある絵筆だった。それをキャンパスに触れさせて、僕の姿を形にし始めた途端……。

 僕はフッと意識を失った。

   

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ