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テンプーレ  作者: ポメヨーク
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新人冒険者の試練

 ギルド裏に整備された、一周1000メートルはあるだろうグラウンドに、俺は立っている。

 野次馬がありきたりな野次を飛ばす、歓声やら怒声やらを無責任にあげながら、俺と──俺と対峙している男を、取り巻いている。

 

 男は魔法使いの標準装備である、杖を掲げていて、掲げた杖で肩を叩いていた。

 服装は軽装だが、鎖帷子ぐらいは衣服の下に着込んでいるだろう。頭には丸くつばが反り返った帽子を被っていた──あれはカウボーイハットじゃなかろうか? 用途が違うような気もするが、個人の趣味にケチを付けてもしかたがないか。


 ひときわ強い風が吹き抜けていく。

 グラウンドの乾いた砂を舞い上げて、視界を薄っすらと茶色く染めあげた。こういう状況下で、ありがちな演出というものだろう、うとい俺でもそれぐらいは分かる。気象すらもテンプレの味方をしているようで、どうにも腹が立つが、あの男で解消してやればいいだろう。


「へっ、覚悟はできてんだろうな? 今から土下座して、命乞いでもするのなら、腕の一本へし折るだけで許してやるが、どうするよ」


 対峙している男が、何か言っているように見えなくもないが、ここからでは遠すぎて分からない。なにせ相手との距離が100メートルもあるのだから、まあ、聞こえたとしても、返答する気にもならないが。


 俺は黙って、腰に下げている剣を引き抜いた。

 それが気に入らなかったのだろう。奴は、どこか癇癪をおこしたように荒れだした。


「いい度胸じゃねーか! だが度胸だけじゃあ、冒険者として食ってけねぇんだよ。ちったぁ利口にならねぇと、命まで落とすことになるってことを、お前の身体に教えてやるよっ!」

 

 杖を振り回し、叫び声を上げている。なんと言っているかまでは、聞き取れなかったが。なんにしろ俺は、腕をくいくいと動かし、挑発してやった。


 それが戦闘の──名目上では戦闘訓練であったが──の開始の合図となった。


「おらっ、骨も残さねーぞ! くらえ」


 男が杖を向けてきて、魔法を展開するのが見えた。俺はそれを傍観するように眺めながら、どうしてこうなったのか、思い起こしてみたが。


「とくに理由もないし、俺に非があるわけでもないんだよな……いや、あいつの仲間の足をへし折ったのが、いけなかったのか? なんにしろ、アリベルトと出会ったのが運の尽きだな」


「レッドアウト」


 男が呪文を唱えた瞬間、展開していた魔力が実体化していく、空間が真っ赤に染まり、熱を帯びだした。

 ギャラリーがひときわ大きな歓声を上げる。その中にいるピアだけは、悲鳴を上げているようにも見えた。


 そんな状況下でも俺は、どこか他人事のようにそれらを眺めて、他ごとを考えている。

 網膜を焼くほどの、高熱をともなった赤い輝きが、一種の公害のように、あまりにも雑に辺りに撒き散らされていく──己の不幸体質を恨みながら、俺は大きく飛び退いた。


 ついでに意識も過去へと遡っていく……




「サティアさん。これからおこるテンプレについて、説明しときますね」


 依頼の受注を済ませ、立ち去ろうとした時に、ピアから聞きたくもない話が飛んできた。


「いきなりかよ。休む暇もないな」


「言ったじゃないですかっ! 新人いびりは伝統だって」


 彼女もうんざりしているのだろう、どことなく疲れた様子で答えてきた。その常識的な反応に俺だけではなかったと、少しばかり安堵する。


「あの奥の席を陣取っている3人組が、今から事件をおこす、テンプレ犯です」


 彼らに悟られないように、ピアはこっそり指をさして教えてくれた。


「俺のことをずっと見てきていた奴らだな」


「サティアさんは、気づいていらしたんですね」


 これはアリベルト、感心したような声を上げてはいるが、視線だけは鋭く俺を射抜いている。

 やはりこいつはタヌキだったな。胸中で納得の声をだす、もちろん表情にも変化はつけない、ただアリベルトの問いかけに、黙ってうなずいた。


「なら話しは早いですね、あの人達は、新人アリゲーターです。それ専門の冒険者でして、職人と言っても差し支えないですね」


 新人アリゲーターはチーム名ですからね。

知りたくもないぷち情報を、ピアは小馬鹿にするように、教えてくれた。


「それと言われても、俺の理解の範疇(はんちゅう)を超えているんだが」


「新人冒険者に絡むために、ギルドに居ついている冒険者です。あのアホ共も毎回趣向を凝らしていますので、今日まで生き残ることができたわけですよ。だから暇なときに見学していれば、ちょうどいい時間潰しにはなりますよ」


「そんな奴らは、冒険者とは言わんだろうが」


 どことなく、めまいを覚える。


「そうは言いましても、個人的な依頼を請け負って、奴らも動いていますので、ある意味では冒険者ですよ。きっと」


 もちろんギルドは関わっていません。と、念押しするように、ピアは付け足してきた。


「そんなくだらん依頼をだす奴の顔が、見たいもんだな」


 冗談半分で言ったつもりだったが、彼女は、ぽりぽりと頬をかいて、あの人です。と視線だけで伝えてくれた。


 ピアにつられて、俺も奥まで続く通路へと、視線を向けた。

 ホール側にいちばん近い部屋の扉が、少しだけ開いていて、40代がらみの男がこちらを覗っている。金の髪に紺碧の瞳、顔も服装も整ってはいるが、どうにも威厳というか、覇気が感じられない。そんな男だった。

 俺と視線が絡んだら、パタンと扉を閉じてしまったが。


「あいつは誰だ?」


「ギルドマスターですよ。あの人が報酬を支払って、クズ野郎を雇っています。あっ! こういうのを指名依頼と言いまして、通常依頼よりも報酬が高いんですよ。サティアさんも有名になって、指名がわんさかくるように頑張って下さいね。そしたら私も儲かっ……いえ専属として喜ばしいですからね」


 ピアの最後に言いなおした言葉は、脇に置いといて、俺は皮肉を込めて告げてやった。


「俺の幻聴か? ンなくだらない依頼を、ギルドマスターがだす道理はないはずだよな。──てか、おもっくそギルドが関わってるじゃねーか」


「不名誉なことを言わないでください。ギルドは通していません。あくまでも個人依頼です、ギルドは個人の思想信条及び趣味嗜好に関与しませんから」


「……分かった、もう聞かん。だがひとつだけはっきりさせてもらおうか、依頼の目的はなんだ?」


「冒険者同士のいざこざに、絶妙なタイミングで現れて──そこまでだっ! このセリフが言いたいみたいですよ」


 今月はこの仲裁劇パターンがメインですね。と最後に彼女は付け加えてきた。

 今度ははっきりと間違いなく、こめかみに脈打つ痛みを覚えて、頭を押さえていると、ピアが慰めるように言ってくる。


「そのうちに馴れますよ。それよりも分かっていますよね? 新人冒険者として、最初の試練を乗り越えなければいけないことを、宿探しよりも先に済ませてくださいね。でないと専属である私にも、とばっちりがきてしまいますので」


 ピアはにっこりと微笑み、手を振って送りだそうとしてくれる。


「誰が関わるか! さしあたっての宿探しのほうが、俺にとっては重要だ」


「へんなプライドは捨ててください。サティアさんも、あっち側にいけば楽になりますよ」


 さらりと怖いことを言ってくれるじゃねーか。

 俺はピアに嫌悪の視線を向けると、彼女は助け舟を求めるように、アリベルトに話題をふった。


「ほら、アリベルトさんもなんか言ってくださいよ。こんなときにしか役に立たないんですから」


「そうですね……今回はピアさんの意見に賛同できません」


「なんでいきなり、まともぽっくなるんですか」


 うろたえたように、ピアの身体はぐらりと揺れた。

 久方ぶりのまともな発言に、俺は小さくガッツポーズを取った。横から突き刺さる、ピアの悔しそうな視線は、とりあえず無視をする。


「彼らを見てください、あの場所から動こうとしません。それがどういった意図があるのか、ピアさんには分かりますか?」


「意味なしギャグほどの意味もないと思いますけど……」


 困惑しながらも、ピアは返事を返した。


「そうですね、多面的に見ればそうかもしれません。なにせあれは、待ち伏せ型テンプレなのですから」


「待ち伏せ型テンプレ?」


 俺もピアも疑問の声を同時に上げた。その反応を待っていたかのように、アリベルトは悩ましげに額に指をあて、頭を振る。


「彼らの座るテーブルの位置と人数、一見普通に見えます。しかし、それらの位置関係に問題があるのです」


「奥の席に3人組が座っているだけに、見えるんだが」


 俺は見たまんまを口にした。問題点と言われても、とくに不審な箇所はない。


「よく観察してください。その中のひとりが、妙に通路側へと飛び出しています、もちろん、彼が短足であることも否めませんが、しかしそれを差っ引いたとしても、あれは間違いなく、待ち伏せフォーメーションピョッコリです」


「聖職者なんですから、人の悪口は言わないほうがいいと思いますよ。言いたいのであれば、せめて私服に着替えてからにしてください」


「今の発言の問題点は、ピョッコリのほうだろうが」


 俺達のやり取りを無視して、アリベルトは続けた。


「このまま、のこのことサティアさんが近づいていった場合、彼は足を突き出して、サティアさんをこかそうとしてきます。もちろん、貴方も空中3回転半ひねりなどをいれつつ、顔面から床に突き刺さり、みごとに鼻の骨をへし折って、テンプレを完結してくれると信じていますが」


「ふざけんなっ! 誰がやるか」


 俺の反論に珍しく同意するように、首を縦に振ってきた。


「そうです。彼らなど、相手にする必要もありません」


「おっ?」


「なんでですかっ! 相手にしましょうよ」


 ピアの叫びを、首を横に振って否定すると、アリベルトはどこか怒気の含む声で、続けてくれた。


「こんな使い古された古典的な手法、ていたらくにもほどがあります、我々テンプレ満喫クラブを侮辱している証拠ですよ。いま流行りの売り込み型テンプレを用いるのなら、私もサティアさんを送り込むことに、賛成していましたのに」

 

 言い終えたアリベルトは、よく分からない涙を流して、落胆のため息を漏らした。


「古典的って、それこそテンプレじゃないのか?」


「私もそう思いますけど」


 俺達の意見を聞いて、眉をぴくりと上げると、アリベルトの眼光が鋭くなった。


「古典こそ、テンプレですか……。どうやら私はサティアさんのことを、見くびっていたようですね」


 感嘆の声を漏らして、アリベルトは身を震わしている。どことなく嫌な予感がして、俺の頬は自然と引きつり、気がつくと後退りもしていた。

 

「テンプレを始めるには、まずは古典から。まさかサティアさんがこの言葉を知っていようとは」


「そんなこと一言も言っていないんだが」


「そこまで分かっているのなら、なんの迷いもないのですね。ならばこれ以上は無粋というもの、私はもう止めたりは致しません」


 話しの流れが理解できないが、なんだか雲行きが怪しくなってきたのは、理解できる。

 ピアも勘付いたのだろう、俺の横で……


「しゃあ!」


 はばかることなく、ガッツポーズを取った。思わず取った行動に、恥じらうように口元を押さえ、ピアは静かになる。


「さあ、いきましょうサティアさん、なにも恥じることはありません。我々は胸を張って、堂々と絡まれにいけばいいのです」


「あんたが言うと、絡みにいくようにしか、聞こえないんだが」


「よく分からないことをいいますね。3回転するのはサティアさんですよ」


「まだ言うか! そんなにしたいなら、ひとりでいけよ」


「なにをおっしゃいます、リーダーが不在では、始まりますまい」


 結局のところ、押し切られる形で3人組の所までいかされて、アリベルトの言った通り、短足の男が足を突き出してきた。その差し出してきた足を、俺は思いっきり、踏みつけてやった。


 ──ごぎんっ。


「ぎいやあぁぁぁ」


 骨を折るつもりはなかったが、折れてしまったのはしかたがない。男は絶叫を上げると、椅子ごとひっくり返り、床へとうずくまる。痛みに抗うように、両手で右足を押さえている。


「てぇめえ! いきなり何しやがる」


 リーダー格だろうか、カウボーイハットを被った男が素早く立ち上がり、杖を向けてきた。もちろん杖の先に魔力を集中させて、いつでも発動できるようにしている。もうひとりの男も通路へと飛び出して、腰を落として身構える、指先は剣の柄へと伸びていた。


「それはこっちのセリフだ! 俺の前に足を突き出し──」


「なんて雑な対応を取るのですか! これでは待ち伏せテンプレが、台無しではないですか」


 後ろから吠えたけるアリベルトが、俺の威勢を台無しにしてくれた。


 ふたりの男もテンプレと断言されて、途端におよび腰となる、こんな時の対応マニュアルがないのだろう、おろおろと不安げな瞳を、こっそり近づいてきているギルドマスターへと送る。


 なんとも情けない奴らだな。と思っていたら、勢いよくピアが割り込んできた。


「そこまでですっ! 冒険者同士の私闘は禁止されています。これ以上の行為をおこなうというのであれば、査問会議にかけることなく、殺処分の対象としま──あっ」


 最後の間の抜けた声が、妙に大きく聞こえてきた。


 言い終える直前に理解したのだろう。ピアは青ざめた顔で、近くまで来ていたギルドマスターを見ていた。


 彼は憤死してしまうほどに、殺気だっている。それもそのはず、俺の横まで来て──そこまっ──ここまでは俺の耳にも届いた、そして、ここで途切れたが。


 くだらないとは思うが、当人にとっては重要な事だろう。なにせ依頼までだして用意した、ここ一番の見せ場を、あっさり奪われたのだから。

 怒りと悲しみを織りまぜた、なんとも表現しがたい顔で、ぷるぷると震える人さし指を、彼女に突き付けた。


「ぴ……ピア、あとはお前が責任を持って処理しておけ。なお来月の給料袋の中に毒ヘビが入ってても、気にはするなよ」


「……はい」


 気のない返事しか返せないピアに、食ってかかる、もちろん小声で。


「お前はなんで飛び出してくるんだよ、事態が複雑になっただろうが!」


「だって、挟撃されたじゃないですか! 心配になって、つい飛び出しちゃったんですっ」


「あほ、ピンチも含めての劇だろうがっ」


「だってだって、うぅぅぅっ」


 最後は言葉にできなかったのか、うなり声だけを上げて、ピアは睨み返してくる。俺達が小声のやり取りをしていると、立ち去り間際に、ギルドマスターが吐き捨てるように言う。


「お前達もギルド内で戦闘行為をしようとしたのは看過できんが……今回は不問にしよう。だが、アレはないからな」


 アレとは報酬のことだろう。こいつ達の様子から察しがつく、なにせ物凄い剣幕で睨みつけてくるからだ。

 大失態をしでかしたのはピアなのに、怒りの矛先は、何故か俺に向いていた。


 ギルドマスターが部屋に入ったのを確認すると、カウボーイハットを被った男が、詰め寄ってきた。


「おいっ! そこのボンボン。仲間の足の骨を折ったうえ、今日の報酬までふいにしやがって、おめぇはこの落とし前、どうつけるつもりだ⁉」


「知るかっ! それ以前に、お前らも冒険者なら、普通に依頼を受けて稼いでこいや」


 負傷させたことはさらりと流して、常識的な反論をすると、男は目を吊り上げて、息巻いてきた。


「バッキャロー! 俺らは普通に依頼を受けて、まっとうに稼いどるんじゃボケッ! それにそこのクソ神官。おめぇもさらっとテンプレって叫んでんじゃねーぞ。神官ならデリケートな問題だって分かんだろうが、顧客が興冷めして依頼を出さなくなったら、それこそ死活問題なんだよ!」


 なんとなく正論ぽく聞こえはするが、なんとも見苦しい奴らだ。


「たしかに、貴方の言っていることにも一理ありますが、ですが手抜きテンプレをしたのも事実。どうでしょう、ここは別の方法で決着をつけては?」


 アリベルトが無駄に優雅な仕草で一礼を入れると、男に提案を持ちかけた。


「ちっ、楽して儲けようとしてたのがバレたか、さすがはメルフィス教の神官だな、恐れ入ったぜ。それで? プランBってのは、俺の想像通りの殺り方でいいんだよな」


「なにこの会話?」


 俺は重くのしかかってくる嫌悪感を、隣にいるピアへと手渡すつもりで、尋ねてみたが。


「私に聞かないでくださいよ」


 あっさりと、受け取りを拒否られてしまった。


「いえ、ここは公平を期するために、過去の事例を参考に、判断したいと思います」


 アリベルトは、すっーとピアへと手を伸ばし、静かに告げた。


「ピアさん、テンプレ集をここへ。私がメルフィス神の名のもとに、審判を下します」


「そんなもんねーよ」


 つい地がでたのだろう、いつもと違う言葉づかいになっている、ピアは気がついていないようだが。


「冒険者ギルドなのに常備していないとは、なんと無防備な」


 アリベルトの目が驚愕に見開かれる。


「常備薬みたいに言わないでください」


 ピアが大声で叫び声を上げた。

 この時にはもう、俺は手近な椅子へと、腰を落ち着かせていた。


「はっ、どうやら俺の殺り方でいくしかないようだな。心配すんな、今度は伝統を遵守してやるからよ」


 片膝をついて、絶望しきったアリベルトに、男は得意げに言い寄っていく。


「分かりました、それしかないようですね。こうなったらもう──」


 アリベルトは立ち上がり、近くまできていた男と睨み合うと──同時に口を開いた。


「リーダー同士の一騎打ちだ!」


「はっ?」




 俺はここまで思い出したところで、意識を集中させた。

 忌々しい記憶を吐き捨てるように、唾を吐く。奴の放った炎がちりちりと頬を焼いたが、言いかえればたったそれだけなのに、男は自信満々で杖を振り回して、喜んでいる。


「まったく当たってもいないのに、よくあんなにも喜べるよな」


 着弾地点の土は焼けて、灰色になってはいるが、周囲に変化はない。よくいっても、魔法の威力は中の下といったところだ。


 本人は大規模魔法を見せてやると、凄んでいたが、本物を見たことがないのだろう。なにせ本物だったら、このグラウンドを飲み込んでも、まだ余るほどだからな。


 中級魔法にやっと届く威力の魔法を、大規模魔法と豪語する時点で、この男の底は知れている。まあ、剣士と魔法使いの訓練で、しかも剣士に不利な遠距離からのスタートを強要してきたときには、失笑を誘っているのかと、訝ってしまったからな。


「さっさと終わらせて、宿探しにいかないとな」


 男はギャラリーに腕を上げて応えていた。よそ見しているのは余裕の表れなのだろう、その余裕がいつまで続くのか楽しみだな。


 俺は皮肉を込めて笑うと、対峙している男に向かって、走り出した。

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