表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプーレ  作者: ポメヨーク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/29

ゴブリン討伐。ズバッと解決編⑥

「あとはあなただけです。ほかのお仲間みたく、風船になって爆ぜるか、星になって煌めくか、もしくはなんの面白みもなく、ふたつに割れるか、今ここで決めなさい」


「うぐっ……ぐずっ」


「いきなりあなたが燃やすから、こうなったんでしょ。なんの為にテイムの真似事したんですか」


「つーか、ゴブリンも泣くんだな」


 あのあとお荷物になるからと、アリベルトが穴の中を焼き払ったせいで、ゴブリンが反乱を起こした。もともと従ってもいなかったが。


 そして数匹だけ残して、討伐は完了した。


 生かしたゴブリンに、扉を開けさせようとしたのだが、あんな事をしたんだ、素直にいうことは聞かんわな。

 なのでアリベルトは1匹ずつ拷問……交渉を持ちかけたが、失敗。


 あいつの言うように、膨らんだり、飛んでいったり、分割されたりと、まあ色々としてくれたおかげで、最後の1匹になってしまった。


「もちろん、この扉を開けてさえしていただけたのなら、あの大空を飛ぶ怪鳥のように、あなたの自由は保証しましょう。どうです? 悪い話ではないでしょう」


 アリベルトはゴブリンの肩に手を掛けて、話を持ちかけた。


「どこかで見たような、クソみたいな展開ですね」


「ほっとけ!」


「それとも解剖いってみますか?」


 アリベルトは調子のいい声で、ぐっと親指を立てた。


「飲み屋に行くような感覚で話すの、やめてもらえませんか」


 ピアは真顔でつっこみを入れているが、いつも通り、アリベルトは聞いた素振りもみせない。


「その大鎌だと解剖は無理だろ、このナイフを貸してやるよ」


 俺はポケットから、小さなナイフを取り出して、渡してやる。


「これはありがとうございます。非常に助かります」


「いやいやいや。そんなペンを貸すようなのりで、話を進めないで下さいよ」


 ピアが仰天したように驚くと、慌てて止めに入ってきた。


「ゲヘゲヘゲヘ」


 俺達のやり取りを聞いて、媚を売るような笑い方で、ゴブリンは近寄ってきた。精神が壊れかけたのかもしれない。


「それでいいのですよ。さあ開けなさい」


「ガフッ」


 ゴブリンはピアの前で、Vサインを作った。


「なんか腹立ちますね」


「我慢しろ」


 そのまま、とことこと扉の前まで歩き、作ったVサインで、人面の両眼を指で突いた。


 ぎいゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!


 飛び跳ねるんじゃないかと思えるぐらいの勢いで、扉に付いた顔は、絶叫を上げた。


 そして、ゆっくりと扉は開いていく。


「なんですか、このクソみたいな仕掛けは、反吐がでますね」


「くそくそ言わない。いちおう女だろ」


 俺の指摘に毒づくと、ピアはふてくされたように、そっぽを向いた。


「そうであります、クソなんてとんでもない。なんと素晴らしいロック機構ではありませんか。プッシュで解錠、自動で開くうえ、魔法防御まで備えている堅牢さ、このようなおもしろグッズ、ぜひとも教会の正面玄関にも採用していただきたいものです」


「あなただって、おもしろグッズって言ってる時点で、扉として認めてないですよね」


 それよか開けかたを知られた時点で、防犯力ゼロだけどな。


「ガフゥガフゥ」


 ゴブリンが煌めく瞳をアリベルトに向けて、服の裾を引っ張った。


「そうでしたね、もうあなたは自由です。素速く大空へと飛び立ちなさい。でないと鬼に捕まりますよ」


 ぎらりと魔導人形達の目が光る。


「ギョヘェェェェ!」


 一転してゴブリンは青ざめた顔になり、一目散に逃げていく。


 そのままアリベルト人形達は、逃げたゴブリンを追いかけていった。


「これまたどこかで見た光景ですね」


「うるせぇ」


 俺はゴブリンは追いかけていない。


「そのまま残党狩りをしてきなさい。ただし私達の分も残すのですよ」


 アリベルトは伸びやかな声で、人形に指示をとばしてくれる。


「残さなくていいですから、そのまま全滅させなさいよ」


「しかし締めは大事かと」


「締めるんなら、この先の奴をきっちりと締めなさい」


「ですが鬼ごっこは大勢でやるから楽しいのですよ。よってたかって多数の鬼から追いかけられる、あのスリルはたまりません」


「追いかけられるって、そっちですか? あなたの場合は追いかけるほうでしょうが」


「そうですね。ですがリアル鬼ごっこでは、追うも追われるも楽しいですよ。とはいえ死霊術師が入ると、泥試合になってしまいますが」


 またくだらんことを、よくもまあピアも飽きずに指摘できるもんだ。あいつの言うことがどこまで本気か……分からんだろうに。


「ほら行くぞ」


 俺は扉の先に視線を向けた。


 そこは無駄に広い通路だった。両脇には、背中合わせに人面が彫られた円柱の柱が、ずらりと並び、道標のように奥の扉まで続いている。


「奥にも扉がありますね」


「見た感じ、普通の扉だな」


 数十メートル先にあっても、よく見える大きな扉。そこには取っ手らしき物も、ちゃんと取り付けてあるのが確認できた。


「サティアさん。これからボス戦になりますが、準備はよろしいですか?」


「あたりめぇだ! 誰に聞いてんだよ」


 ここまで来て、くだらん確認を取るなよ。準備ができていないのは、俺の後ろでぶるっとしてる、ピアだけだろうが。


「ふっ、愚問でしたね。ならばリハーサル通り、爆炎の中から飛び出して、15秒間の空中飛行の後に、敵からきっかり5メートル手前で着地して、テンプレの守護剣士、赤いウィンナーサティア! と名乗りを上げて下さい。もちろんカッコいいアドリブは可です」


「いつっ! どこでっ! 誰がっ! そんなリハーサルをした!」


「今日、ここで、私が、登場シーンを披露したではありませんか。もうお忘れになったのですか?」


「うわっ。マジで殴りてぇ!」


「ウィンナーって、なんか卑猥にきこえるんですが。下ネタはやめてください」


「下ネタではありません。ちゃんとタコさんウィンナーのほうなのですから、私の友達に不名誉なレッテル貼りは、やめてもらいたいです」


「やめろっ! 友達じゃない、友達になるな」


 俺は全力で否定するも、アリベルトは笑い飛ばすだけなので、どこか肩透かしを食らったように、もやもやした気持ちが、心のノイズとなって残る。


「とにかく行くぞ!」


 俺は気にせずに通路を進み、奥の扉へと向かった。とりあえずピアもアリベルトも黙ってついてくる。


 扉の隙間から吹き出てくる魔力風は、今までのゴブリンよりも、どろりとした屁泥のように重たいものだった。それがドア下からどろどろと俺の足元まで流れ込んできては、霧散して消えていく。


 この特徴はゴブリンキングか。


 魔素を通して部屋の中を探ってみたが、部屋の中には一体しかいない。そいつは座り込んでいるので、正確な体長はわからないが、多く見積もっても2.5メートルほどだろう。


 さらに奥にも部屋があるのか。

 扉が付いていないので探りやすくて助かるが、ふむ。そこにも無数の何かがいるな。これは……。


「どうしたんですか? びびったんですか」


 ピアはぷるぷる身体を震わせながらも、茶化してくる。


「サティアさんにかぎって、そんなことはありえません。きっとここに来た記念に、扉に書くべきは、サインかそれとも落書きか、どちらにするのか迷っているのです」


 真剣な顔付きで、アリベルトが答えをはさんだ。


 こいつら言いたい放題いいやがって。もういい、教えてやらん。


「よし、開けるぞ」


 木製の大きな扉を押し開ける。ギギギギギと、扉全体が侵入を拒むかのように歪み、軋む音を鳴らした。


 城の城門とまではいかないが、それでも大きく分厚い扉なので、押すだけでも重労働だ。それにどんな仕掛けなのか分からないが、扉が少し歪むので、押す力が分散されて、なおのこと開けにくい。


 こいつをこじ開けるには、複数人必要になる……。


「おいっ! アリベルト。なに後ろで見学してんだっ。お前も手伝えよ」


「そう申されましても、私の宝石に傷がつくやもしれません。リスクとリターンを考慮すると、やはり気が進みませぬ故。ここは熱い眼差しで見守るのが得策かと」


 つーかそんなもん、さっさとしまっとけよ。


「傷よりも、砕ける心配をしとくんだなぁぁぁぁっ!」


 俺が叫ぶと、アリベルトは一歩前に出て、俺の横に並んだ。


「ライバルである以上、私達は足を引っ張りあう関係にあります」


「んなもんっ。ライバルとは呼ばん!」


 ミシリと扉が軋んで、音を立てた。


「ですが私達はライバルである前に、はじめてのお友達という、固い絆で結ばれた間柄」


「ちくしょぉぉぉ! 出会ったのが不幸の始まりだったさ」


 ギギギギと少しずつ扉が開いていく。


「敵意と友情とはよく言ったものです。いがみ合っていた者同士が、共通の敵を前に、共同戦線をはるのですから、目の前の難敵を乗り越えた、その暁には、夕日の浜辺で全力疾走と洒落込みましょう」


「ぬうぉりゃぁぁぁぁぁっ!」


 ばっん! と激しい音を立てて、完全に扉は開いた。


「大丈夫ですか?」


 ピアが聞いてくるが、今は答える余裕はない。首を振るだけで精一杯だ。


「大丈夫そうですね」


「……なんで……そうなる」


 喉の奥から声を絞り出して、抗議してみたが。


「ほら、大丈夫じゃないですか。声も出せてますし」


 ピアからは、冷たい言葉が返ってくる。


「そうです。私の強化魔法とサティアさんのど根性があれば、勝てない敵はおりません。ここは我々の友情パワーの勝利なのです」


 お前からは、なんの魔力も感じなかったがな。


「よっしゃあ。あとはあいつだけだ」


 呼吸を整えて、即座に臨戦態勢をとる。


 視界の先、広間の最奥の壁側は、広間よりも数段高くなった、見るからに玉座の間と呼べる造りとなっていた。そして玉座の間の両隣には、更に奥へと続く出入口がある。


 ゴブリンキングは石造りの玉座には座らずに、その隣に、無造作に山積みにされた、骨の上に座っていた。


 そもそもあの体格だと、玉座に座ることはできないか。


「あれは、椅子取りゲームの準備でしょうか?」


 アリベルト、お前正気か?


「ていっ!」


「ぎゃあっ!」


 アリベルトの精神状態を疑っていたら、ピアがすねを蹴り上げて、黙らせてくれた。


「ゴブリンキング……勝てますよね?」


「キングだろうとなんだろうと、所詮はゴブリンだ。俺が負けると思うか?」


「……それは」


 うわはっはっはっ。下等生物ども、その首置いていけぇぇぇ。


「うん。思いませんね。ここにきて心強く感じます」


「お前、絶対失礼な想像しただろ」


 とにもかくにも、俺達はゴブリンのもとまで歩みを進めた。少し遅れて、アリベルトもついてくる。


 ……あれは?


 ゴブリンキングの頭には、王冠がのっかっている。人ならかぶっていると表現できるが、なにせあの巨体だ、王冠も小さく見えるし、ちょこんとのっけてるようにしか見えない。


 それよりも問題は、あの王冠だ。


 王冠から伸びる魔力の筋が、幾重にも重なりあって、ゴブリンキングの身体を包んでいた。

 すでにゴブリンキングは、あの王冠に完全に支配されている。


「なるほどな。そういうことか」


「なんですか?」


「いや、たいした事じゃない。心配しなくていい」


 俺達は目標であった、ゴブリンキングと対峙した。奇しくも、ゴブリンなんぞに謁見する構図となってしまったのは、気に食わないところだが。


 目の前の敵をゴブリンと思わないほうがいいか。


「よう。潰しにきたぜ」


 今だに動きを見せないゴブリンに、挨拶をしてやる。


「あの、ふつうに話しかけてますけど、言葉は通じるんですか?」


 異常者を見るような目で、俺を見るな。


「ふん。外が騒がしいと思っていたが、性懲りもなく、また来よったか」


 骨の山に背中を預けていたが、ぐっと上体を起こして体勢を変えた。その動作だけで、小さな山が動いたようにも見える。


「ずいぶんと流ちょうに喋りますけど、どうしてなんですか? サティアさんは動じないってことは、何か知ってるんですよね?」


 俺の背中に隠れて、ピアが質問してくるが、今は奴と話がしたいので、返事は返さずに、後ろに手を回し、静かにするように促したのだが。


 いや、手を握るな、腕を掴むな、しがみつくな! 頼むから放してくれ。何故いつも人の動きに制限をかけるんだ、俺だって刺されでもしたら死ぬんだぞ。


「……魔族が、隠し宝物庫を嗅ぎつけたか」


 じろりとアリベルトを睨みつけて、ゴブリンキングが、侮蔑とも取れる声を漏らした。


「魔族? いったいなんの話ですかね」


「ん、さあな」


 俺とピアは後ろを振り向いて、宝飾品をじゃらじゃらと身に着けた、アリベルトに視線を送った。


「? どうしました。私の後ろに誰かおられましたか?」


 こともあろうに、あいつは後ろを振り向いて、首を傾げやがった。


「それよりもだ」


 ゴブリンの声に意識を引き戻された。


「どうして人間が、魔族と行動を共にしている」


「人間?」


「魔族?」


 ばっとピアの腕を払い、俺は……俺達は、お互いを見合った。


「ひとつ言っておくが、俺が人間で、お前達が魔族だよな?」


「なにをおっしゃるのですか、清く正しく美しい心と、こよなくテンプレを愛する私こそが人間であり、おふた方が魔族、いえ悪魔ですよ」


「バカ言わないでください。あなた達の所業は、私が見届けていますよ。おとなしく魔族と認めてください」


「貴様らはどこで喧嘩をしておる」


 さっきとは違う軽蔑の声が、ゴブリンから聞こえてきた気がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ