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テンプーレ  作者: ポメヨーク


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ゴブリン討伐。ズバッと解決編⑤

「かーもーめーかーもーめー。籠の中のゴーブーリン」


「ひっ。ひいぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」


 ゴブリンを正座させ、その後ろにアリベルトが立っている。大鎌をゴブリンの首に据えて。


「いーつーでーもー、首チョンパー」


「いやだぁ! いやだぁ! いやだぁ!」


 そして、その周りを5体のアリベルト人形が、ぐるぐると廻っていて、頭には数字の書かれた鉢巻きを巻いている。


「ツルッと手元がすーべぇーたー」


「助けてぇー! 助けてぇー! 助けてぇー!」


「なんであいつが関わると、ゴブリンは流ちょうに喋るんだ?」


「悪魔の遊びだからじゃないですか?」


 あれだけゴブリンのことを憎んでいたはずなのに、ピアの瞳は同情心でいっぱいになっている。


「後ろの正面──」


 すーっとアリベルトが屈み込み、ゴブリンの耳元に顔を近づけた。それに合わせて5体のアリベルト人形も、ぐわっとゴブリンの背後に集まった。後ろから、ゴブリンの顔を覗き込むように。


「だあーれだ?」


「ぎぃひぃぃぃ。さ、さんばん、さんばん」


「残念ハズレです。答えは1番でした」


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」


 ブンっと大鎌を振って、ゴブリンの首を飛ばした。


 最後の断末魔が妙に耳に残る。


「それで、これはいったいなんの遊びだ?」


「知りません。私は刃物で遊んではいけませんって、教育されましたから」


 ピアは無感情に答えてくれた。


「ふつうに答えるなよ。どうしてこうなったのか、悩んでたんだぞ」


「図らずもそうなっただけです。だいたいさっきの乱戦で、護符石を3つも失ったんですよ。今のメンタルでは、あの人が何してるのかなんて、理解する気力もありませんよ」


 そうなんだよ。さっきまでゴブリンと戦闘してたんだよ。それが気がつけば、あいつを中心に、ゴブリンと対峙する構図になっていた。


「剣を振るうだけで、5匹、6匹斬りと楽しめていたってのに、無双状態とはこういうことかと、爽快感すら感じはじめていたのに、どうしてこうなった! そしてあいつは何をやってんだ?」


「そこら辺については同意しかねますが……そうですか。無双状態に爽快ですか。そういう単語が飛び出すあたり、なんか染まりつつありますね」


 どういう意味か分からんが、いいだろ、俺だってストレス溜まってんだよ。


「さあ。早くそこの扉を開けなさい。それとも次は、だるまさんが転んだで、私と勝負しますか!」


「があぁぁぁぁぁぁっ!」


「そうですか、それがあなた方の答えなのですね。いいでしょう、受けて立ちます」


 ゴブリン共が咆哮を上げて、アリベルトへと突進していく。それらを見据えて、アリベルトは腕を突き出すと、大きく息を吸い込み。


「だるまさんが転んだっ!」


 大音声でアリベルトが叫んだ。


 しかしゴブリンの突進は止まらない。


「はい。そこアウト!」


 手の先から膨れ上がった純白の光が、アウトと断罪された、ゴブリンのもとまで流れ込んでいくと、足元へと突き刺さり、爆発炎上した。


 神殿全体が大きく揺さぶられ、爆煙が収まったあとに現れたのは、小さなクレーターと、消し炭になったゴブリン共だった。


「こらっ! 動いたら負けなのですよ。ルールを守って、立ち止まりなさい。勝手なルール変更は許しません」


 アリベルトの制止などお構いなしに、生き残ったゴブリンは、あいつへと群がっていく。


「ゴブリンにルールを求めて、どうするんですかね。そもそもあの人もルールなんて守ってないですし」


「あれって遊びだったのか? 俺はてっきりオモチャにしているもんだと思ってたぞ。それでアリベルトのいう、ルールってなんだよ?」


 げんなりとした様子で毒づいている、ピアへと視線を投げかけた。


「子供の遊びですよ。本来なら背中を向けて、決められた文章を唱えてから、振り向くんです。それでその時に動いていた人を」


「魔法で焼き払うのか? 庶民の遊びって、怖ぇーな」


「それが子供の遊びだったら、人類は滅んでますって! 一般人と奇人とを、同列に考えないで下さい」


 冗談だろうが、真に受けるなよ。


「あえて問いましょう。私が提案した、平和的なだるまさんが転んだで、勝敗を決めるのか、あなた方の主張する、混沌と暴力の世界。ルール無用のバトルロイヤル、とりあえず最後まで立っていたもん勝ち。これで決着をつけるのか」


 まったく話など聞いていないゴブリンが、棍棒を振り上げて、アリベルトに襲いかかる。

 振り下ろすよりも速く、アリベルトの強力な蹴りが、ゴブリンを後方へと弾き飛ばした。


 吹き飛ばされたゴブリンは、後続のゴブリン共を巻き込み、ドミノ倒しの様に、ばたばたと倒れ伏していく。


「あの首チョンパも、あいつにとっては平和的解決方法だったのか?」


「今の蹴りも、おもいっきり暴力ですけどね」


「にしてもなぁー、美味しいとこ全部あいつが持ってっちまうから、俺達って完全にギャラリーと化してるよな」


「私はべつに構いませんが。こっちのほうが安全ですし」


 ゴブリンは即座に立ち上がり、またアリベルトへの猛攻が始まった。あの奥にある扉を、必死に守っているのだろう。

 もしくは扉から少し離れた壁の穴に、幼体が何匹か隠れているので、俺達に悟られないよう、注意を引きつけているのか。


「なるほど。覚悟を持って、進むべき道を示したのですね。ならば私も神官の端くれ、あなた方の決意、運命の壁となって立ちはだかりましょう。来るがよい! 宿命(さだめ)の子ら」


 なんで悪役っぽく振る舞うんだよ。お前は神官だろうがっ! いや、合ってるのか?


「あいつ、のりのりだな」


「悪ノリってやつですよ。相討ちになればいいのに」


 ピアって、たまに怖いこと言うな。……まさか本気じゃないだろうな?


「おっ! きたきた。ちょっくら行ってくるわ」


「いってらっしゃい。間違っても、私のほうには寄越さないで下さいね」


 一部のゴブリンが、俺達のほうへと流れ込んできた。俺は前に出て、迎え討つ構えを取る。


「へい、へい、へい」


 こちらに向かってきていたゴブリンに、アリベルトは中指を立てた。


「グゥガアァァァ!」


 途端に方向転換をして、標的をアリベルトに定めた。虚しいかな、ゴブリン共は離れていく。


「……あれは挑発スキルか? 納得できないが」


「たぶんそうなんでしょう。自信はありませんが」


「この世の中には、越えてはならない順序があるのですよ! 私の後ろに控えている、就活に失敗した、無職勇者に挑みたいのであれば、先ずはこの私を倒してからにしなさい」


「ほぉーう。ずいぶんと愉快な発言だな。ボルテージが上がっていくぜ」


 ぎちぎちと剣の柄が悲鳴を上げる。


「そして、その勇者の屍を越えてはじめて、世界の絶望と失敗を具現化した、大魔王への挑戦権が獲られるのです」


「ははは。誰のことですかね」


 勘づいているくせに、顔が怖いぞ。


「そうそれは。ギルドの爪弾き者、なにをやっても始末書仕事。右に行けば地雷を踏み、左に行けば落とし穴。ならば正面突破と勇んでみれば、失敗の連続更新、新記録! 増えるのはクレームと悩みと頭痛の種。まさに武勇伝」


「ぐっふ!」


 自覚あるのかよ。


「隅に隅に追いやられ、極めし住処は窓際席。心の安寧保つには、現実逃避に夢の中。押しも押されもせぬ勝手に自爆の追放者(ついほうもの)。あと一歩で追放、追放、マジ追放。大魔王追放受付嬢とはあの女! どうですか? 連邦の悪い通信士、蒼い流星群と恐れられた、この私ですら小者に見えてしまうほど、後ろに控えている存在は強大なのです。これで分かったでしょう。、テンプレ順序がいかに大事かは! さあ。先ずは私を楽しませてからにしなさい」


「あいつ、ぶっ殺してやりましょう」


「よしきた!」


 こうして俺達も参戦した、混迷を極めた泥沼の戦場で、俺は最後まで──とりあえず最後まで立っていたもん勝ち──の勝者として、立ち尽くしていた。


「……なんか虚しい」






「それでこの扉はどうやって開ける。もう壊しちまうか?」


 複雑な紋様が彫り込まれた大きな扉。この扉にはドアノブは無い。その代わりに、外にあった人面を模した石柱と、同じデザインの顔が付いていて、立体的に彫り出された顔は、どこか悍ましく感じられた。


 そして外の物とは違い、顔の口は開いている、まるで口の中に手を入れろと言わんばかりに。


「単細胞ですか? 面倒くさいからって、すぐ破壊行為にいかないで下さい。単純な仕掛けなのは見ればわかりますよね。ほら遠慮してないで、口の中に手を突っ込みなさいよ」


 さっきのはバトルロイヤルなんだろ? 助けなかったからって、そんなに怒るなよ。護符石のおかげで怪我はしなかっただろうが。


「おふた方は、おさがり下さい」


 アリベルトが前に出て、指を突きつけた。


「お、おい。ばか止めろって」


「ライトニング」


 アリベルトの指先から放たれた光線は、一直線に扉へと突き刺さるも、音も衝撃もなく、とぷんと水面に波紋が広がるように、魔法は吸収された。


 すっーと紋様に光が走り、輝きだす。


「すぐに離れろ!」


 俺の警告と同時に、光は人面の口へと収束して、眩く発光しだす。


「うえ、なんか危なそうですよ」


「そう思ってんなら、はよ横に飛べ」


 口の中の閃光は、光弾となって撃ち出された。とんでもない勢いでアリベルトへと飛んでいく。


「ふっ。こんなものですか」


 アリベルトの反応速度も負けていない。軌道を冷静に見極め、横へと跳躍した。


 光弾がアリベルトを通り過ぎた直後、くん、と鋭く曲がり込んだ。


「くっ」


 光弾を避けきることが出来ずに、アリベルトに直撃した。爆光が視界を奪い、衝撃波が空間を貫いて、鼓膜を震わせる。


「ふう。大丈夫そうだな」


 直撃したように見えたが、アリベルトは大鎌の腹で受け止めていた。


「ふむ。魔法を無効化するだけではなくて、反射までするとは、全くもって面白みの欠片もありませんね。帰りましょうか」


「ちょっと待ちなさいよ! この先が本番じゃないですか。なに諦めて帰ろうとしてるんですか」


 すでに歩き出しているアリベルトに、ピアが噛みついた。


「魔法でどかんと吹き飛ばすのが好きなのですよ。それが出来ないとなると、私としても面白さ半減以下ですので、疲れるぐらいなら、帰りとうございます」


「よくそれでミスリルランクになれましたね」


 ずとんと頭に重石がのったかのように、ピアは項垂れて答えた。


「ここまで来て、引き返したくなかったら、破壊するしかないだろうが。できればの話だが」


「う、う~ん。ちょっと考えさせて下さい」


 ピアは頭を抱えて悩みだした。そこまで迷う事なのだろうか? 俺が言うのもなんだが、ここまで破壊してきたんだ、最後の扉ぐらい、壊したって目立たないさ。


「おっと、ゴブリン共がきたぞ」


 後ろからぞろぞろと、小規模な群れがやってきた。奴らはしきりに幼体のいる穴を気にしている。子供を助けにきたんだな、泣かせてくれる。


「しかたありません。ゴブリンをテイムして、彼らに開けさせましょう」


「そりゃあ理屈でいったら、巣穴にしているゴブリンなら、開けられるとは思いますが、テイムですよ、できるんですか?」


「お前はテイマーでもあるのか? なんでもありだな」


「私は違いますが、親戚の叔父さんがテイマーでして、やり方を見ておりました。さすがに実践したことはありませんが、ゴブリン程度でしたら、なんとかなると思います」


「簡単に言ってくれますね。従魔士は特殊な技術が必要ですし、そもそもあなたのような人間性では、出来ないと思いますよ」


 ピアはアリベルトを完全否定した。俺もピアの意見に賛成だ。こいつに従魔士の資格はないと思う。


「まあ見ててください」


 それだけ言うと、すたすたと壁の穴に向かって歩いていく。


「ギャア、ギャア、ギャア。ギギギギギギッ」


 ゴブリン共が焦ったように、鳴きだした。


 アリベルトは穴の前で立ち止まると、腕を穴に向けて、ぼっと魔力火を灯した。


「ケケケケケ。おいゴブリン共、この穴ぐらにガキ共がいるのは、分かってんだ! ガキ共焼かれたくなかったら、私のいうことを聞け!」


 やっぱりあそこに幼体が潜んでいることは、知ってたんだな。


「グギギギギギギギッ」


 ゴブリン共は怒りからか、身体を震えさせて、憎悪の目で、アリベルトを睨みつけている。


「……テイムってなんだろう? これは絶対に違うと思うんだが」


「全くもって同感です。こんなの従魔士が見たら、怒るでしょうね」


 だが効果はあったようで、ゴブリン共は頭を下げた。ただしアリベルトから視線を外すこともなく、睨みつけたまま。


「はい。テイム完了です」


「こいつらぜってー裏切るぞ」

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