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テンプーレ  作者: ポメヨーク


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ゴブリン討伐。ズバッと解決編②

「えっと。本気ですか? いえ正気ですか?」


「失礼なことを言うな。俺は真面目に提案しているし、状態異常にもかかっていない。いたって正常だ」


「ギョヘェェェ。タスケテ、タスケテ」


 ロープで縛り上げた、2匹のゴブリンを眼の前に、ピアは頬を引きつらせたまま、固まっている。


「心配するな。とろくさいお前でも確実に倒せるように、1匹ずつ野に放ってやる」


「野にって……。いえそうじゃなくてですね。いくら魔物でも、この仕打ちは人として、どうなんだろうって思うわけですよ」


「なに言ってんだ。実力を見せてくれるんだろ? それに奈落の底まで滑落させてやるから、ふん縛って連れてこいって言ったのはピアだろうが。早く地獄の釜に突き落としてやれよ」


 すでにずたぼろになっている、眼の前のゴブリンに向けて、あごをしゃくって催促してやる。


「少し待って下さい。ちょっと記憶を……」


「なんだ記憶障害か。情けない」


「うううっ。やっぱそんな記憶はありません」





「あ、あの~。ちょっといいですか?」


「お〜ら、おらおらおらあぁぁぁ。ぼさっとしとる奴から、その首斬り飛ばしていくぞぉぉぉ!」


「ギイャアアアアアアッ」


 銀線が閃くたび、人形の首をもぎ取るように、ぽんぽんとゴブリンの首が宙を舞っていく。


「そりゃあ3連チャンで背中に刺さったのは、謝りますけど、そこまで怒らなくても、いいじゃないですか」


「ふわははははっ! おいお前たち。もう逃げ道はないぞ。残りはお前たちだけなんだ、大人しく投降しろ」


「グギギギギッ」


 あの人は、ジャイアントゴブリンの死骸の上によじ登って、籠城しているゴブリン達に、降伏するよう呼びかけている。どこか嬉しそうなところが、また怖い。


「おい。お前だ、お前! お前がいちばん賢そうだ。俺の前までこい」


 品定めするように見回して、1匹のゴブリンを指名した。


 問答無用で斬りつけると思っていたのに、呼びつけるだなんて、この平和的な対応に、私は驚きのあまり声を漏らしていた。いったい何を企んでいるのか?


「グ、グゲ!?」


 指名されたゴブリンが、自分を指さして疑問の鳴き声を上げた。


「ギャアッ、ギャアッ、ギャアッ」


 周囲のゴブリンも、早く行けと騒ぎ立てている。


「さっさとしろっ!」


 ほとんど恫喝するような叫びに、観念したのか、しゅんとうなだれたまま、彼の前へと歩み出た。


「やはり俺が見込んだ通り、お前は賢いようだ」


 あの人はしゃがみ込むと、ゴブリンの肩に手を掛けた。


「アヒッ」


 あの人の背中越しから見ているので、推測になるが、たぶん笑いかけたのだろう。ゴブリンが絶望的な顔を浮かべているので、まず間違いない。


 そして、あの人はゴブリンの耳元で言葉を紡いだ。


「あの逃げた2匹を俺の前まで連れてこい。そうすればお前の命だけは助けてやる。どうだ? 悪い話ではないだろう」


「うわあ。悪魔の囁きだ」


 私の指摘は、あっさりと流された。


「ゲッゲッゲッ。……ゲヘゲヘゲヘ」


 ゴブリンは狂ったように笑いだした。しっかりと意味が理解できたのだろう。


「はっはっはっ。どうやらやる気が出たようだな。3匹までだったら、連れていってもいいぞ。なんなら集団を従わせる方法も教えてやろう」


「なに言ってんですか! 自分が何をしようとしているのか理解できてますか? 魔物に下手な知識を植え込むのは、危険が伴う行為なんです。それこそ従魔士法に抵触する可能性だってあるんですよ、やめてください」


「心配すんな。そのへんはちゃんと考えてある」


 あっ! この人、約束なんて守るきないわ。にんまりとした笑顔が、すべてを物語っていた。


「それに残りはこの場で処分するからよ。問題ないだろう」


「でしたら、連れていくのは1匹までにしてください」


「だとよ。お前が選べ。残りは処分するからな」


「ググググッ」


 選択するよう迫られたゴブリンは、難しい顔つきで、仲間を見ている。なんだか目配せしているようにも感じられた。


 すると予想外なことが起きた。


「ギャアハ」


 すべてのゴブリンが一斉に手を上げて、立候補してきたのだ。思った以上に、ここのゴブリンは知能が高いのかも知れない。


「ちゃんと収拾はつけてくださいよ」


「ふむ。そうだな」


 あごをさすり、迷う素振りを見せているが、迷いなど、露ほども感じられなかった。


「その1。あいつらを戦わせて、生き残った奴を行かせる」


 ゴブリンにも聞かせる為か、大きな声で提案してきた。横にいる私は怒られている気分ですよ。


「闘犬みたいですね。もちろん私的には却下です」


「その2。全員を向かわせて、捕縛して連れ帰ってきた2匹を、助命してやる」


「そんな事したら、逃げられるだけですよ」


「問題はないだろう。どうせ結界の外までは逃げられない」


 逃げられたとき、探すのが面倒でしょうが。


「その3。もうめんどくせぇ。俺に攻撃してくる奴は全員敵だ。この場で殺っちまうか」


「3番でお願いします。……あっ、でも。全員って、私も含まれているんですか?」


 恐ろしいことに、彼は答えてはくれなかった。


「ニッ! ニッ! ニッ! ニッ! ニッ! ニッ!」


「イチッ! イチッ! イチッ!」


 ゴブリン達が一斉に反応を示した。やっぱり2番が圧倒的に多い。そんな中で、2匹だけが、3番と必死に訴えている。なんでだろう?


「よし。2番を選んだやつ、降りてこい」


「ギャハ、ギャハ、ギャハ」


 ゴブリン達が喜んで集まってきた。眼の前のゴブリンも、手を打ち鳴らして歓迎している。呑気なものです。


 しかし、よく言うことを聞くもんですね。恐怖支配も考えものです。サティアさんも、隙を突かれなきゃいいんですけど、まあ、この人なら心配ないかな。


「ギョッペ!?」


「…………えっ?」


 サティアさんは剣を振り下ろして、最初に呼びつけたゴブリンの頭部を、打ち砕いた。


「ギャハギャハ、ギャへ?」


「悪いなぁ、お前たち」


 それだけ言うと、あの人は即座にゴブリンに斬りかかっていった。


「ギイヤァァァァァァァァァァァァァァッ」


 見えているのに、どのように動き、斬りつけているのか理解できない。相手の動きについていけず、把握できないのは、それは見えないのと同じだった。

 

 ゴブリンにとっても同様で、刈り取られてからようやくにして、己の状態に気付き、その瞬間にはもう、地面に倒れ伏している。


「なんか最低ですね」


 不意討ち、だまし討。ゴブリンの常套手段なので、同情はしませんが、こうも一方的に滅多打ちにするのは、なんだか良心が痛みます。


「怨むんだったら、あの非情で無能な命中率0%女、またの名を、人生崖っぷち女を怨むんだな」


 なんで私なんですか? そのあだ名も酷いですし。


「ほんっと、最低ですよ」


 銀線から一転して、朱色の残光が荒れ狂っている。それが血しぶきなのか、べったりと血に染まった刀身の軌跡なのかは、私には判別できないし、したくもない。


「ふうぅぅぅぅぅぅぅ」


 サティアさんは最後の1匹を叩き潰すと、大きく息をついた。


 あれ? もしかして疲弊してるのかな。


「よし、3番を選んだそこの2匹。おりてこい」


 ゴブリンはふるふると首を振って、拒絶の意思を見せている。あんな惨状を見せられた後では、当然の反応ですよね。


「ふむ。来ないな」


「当たり前でしょうがっ! むしろ来ると思っている、あなたの頭が心配ですよ」


 私の指摘に、誘い方を変えると言って、サティアさんはにやりと笑った。この人の場合、無表情のほうが説得力が生まれるような気がします。


「お前たち、いいことを教えてやる。そこの2匹が指名手配犯だ。みごと捕縛した奴には褒美を与えてやろう」


 ごそごそと鞄から縄を取り出して、ゴブリンへと放り投げた。ロープまで入れているとなると、やっぱりマジックバックだったんですね。べつに羨ましくありませんけど。


「ウソツキ、ウソツキ、デタラメ、デタラメ、オニ、アクマ、ヒトモドキ」


 うん。否定はできませんね。


「ゴブリンに嘘つき呼ばわりされたのは、人類史上初の快挙じゃないですかね。いちおう記録しときますね」


「うるせぇ。それに嘘はついてない。あいつ達の魔力の帯は、ちゃんと覚えている」


「魔力の帯ですか……なんですか? それ」


「体表から放出される魔力のことだ。もやとか霧とか筋とか、なかには炎の様だと表現するやつもいるみたいだがな。これは人によって見え方が違うから、仕方のないことなんだが」


「へぇー。魔眼もちだったんですか。それ自体、珍しいことですけどね。しかし、そんなふうに見えていたんですか」


 個人情報なので、マジックペンで用紙の裏側にでも書き留めておきますか。


 ふふん。魔力を流さないと文字が浮かび上がらないペンを使う。こんな些細なことにも気配りするのが、できる職員の必要条件ですよね。それに悪口を書いてもバレにくいですし。


「なんですか? じろじろ覗き見するのは止めてください」


「いや、なんでもない」


 しらけた顔を向けてくるだけで、なんにも言わない。なんだかいやらしいですねぇ。


「それよりも奴らは動きそうにない。プランBだ!」


「プランBってなんですか?」


「この膠着状態なら、飛び道具の独壇場だろう。攻めてくるやつは俺が仕留めてやるから、ピアは思う存分……本気(マジ)で活躍してくれ」


 なんですかその言いぐさ。金貨1枚もらっているので、文句は言いませんが、私でもカチンときますよ。


「仕方ありませんね。──はあっ!」


 ──カンッ!


 私の投げたカードは、うまい具合にゴブリンの隙間を縫っていき、後方の柱に突き刺さった。


「ふう。人生とはさも虚しいものですね」


「いろんな意味で紙一重だな」


 それは褒めてないですよね。


「ギャハハハハ。ヘタクソ」


 なっ! ゴブリンなんかに馬鹿にされるなんて、超絶悔しいです。


「はっはー。もう忘れたのかっ! 人生崖っぷち、いや、今ので崖下まで転落しちまったが、元々がコレだから、こっちの被害は0なんだよ。馬鹿どもが」


「グギギギギギギギ」


 なんで向こうが悔しがるんですかね。


「もの凄く泣けてきたんですけど。もう帰っていいですか?」


「なに言ってんだ! 人生谷底にいるんだったら、あとは這い上がるだけだろうが」


「這い上がるにしても、谷底なら断崖絶壁なんですけどね」


「ほれ、ひがんでないで投げてみろ。確率的に、そろそろ当たり頃だろ?」


 ひがみかなぁ?


 しかし私にもプライドはありますからね。そこまで言われたら引けません。


「はあっ! たあっ! とりゃあ!」


「…………」


 小さいってのは、それだけで脅威ですね。


「ケケケケ。ムリスンナ、オバサン」


「なぬっ!?」


「くそっ! 若いと思っているのは本人だけなのに、痛いとこ突かれたぞ。どうする」


「お前にもだよっ」


「いやそれよりもだ。ゴブリンに気遣われたんだよな。これこそ文献に遺すべきじゃないか?」


「そんな必要ありませんよ」


「恥ずかしいなら壁画にするか、幸いここは古代遺跡だからな、不自然ではないだろう」


 この野郎。言いたい放題言いやがって。


「だから必要ありませんって。だって……」


「おいおい、それは卑怯だろうが」


「ウインドカッター」


「ギョオペェ」


 私の放った魔法で、1匹のゴブリンを処分してやりました。


「うふふ。みんなゴミ箱行きなんですから」


「お、おう。それは頼もしいな」


 ふふふふ。今日の風は興奮してますね。ぐるぐるぐるぐると、私の周りで舞っていますよ。今ならなんでも出来そうな気がします。


「次はあなたにしましょうかねぇ。乙女の心を傷つけた代償は大きいですよ」


「ゲェッ!」


 ごみを吹き飛ばそうと、腕を突き出して魔力を込めたのだが、うまく制御できない。手の先で魔力は収束せずに、ぎゅるぎゅると私の身体を取り巻いて、暴風のように荒れだした。


 ──あれ? おかしいですね。


 このままじゃまずい、魔法が暴発する。頭で分かっていても、得も言えない高揚感が抑えられず、昂った感情が、心の内に一種の全能感を生み出している。


 今なら凄いことが出来るんじゃないかと。


「そ、そうですよ。いまの私なら」


「ほら、少し落ち着け」


 とその時。サティアさんが私の手首を掴んだ。


 すると膨れ上がっていた魔力の波が、するすると私の体内に戻っていく。


「やっぱり魔物を殺したことは無かったんだな。、今のが初めてだろ?」


「えっ! どうしてそんなこと」


「少し前からそうなんだろうなと、薄々感づいてはいたが、その様子を見て確信した」


「ギョオヘェェェ」


「あっ。逃げられましたよ」


 あの2匹が逃げていく。


「追うな。問題ない」


 思わず駆け出しそうになったけど、腕を掴まれ止められた。


「やっぱり最初はキツイよな。いくら相手が魔物でも、命を奪うってのはよ。それも人型の場合はとくにな」


「……はい。そうなんですかね。私はむしろ戦えると思えてきてましたけど」


「興奮状態だっただろ? あれは魔力暴走の前兆だ。根拠のない全能感に支配されて、超人になった気分になる、魔力に飲まれると、誰でもそうなるんだよ」


「なんで分かるんですか? 魔法、使えないじゃないですか」


「魔女の受け売りだ。実際に何人も見てきたしな」


「……その人達は、どうなったんですか?」


「まあ。いい結果にはならなかった」


「だったら私が戦うのは無理ですよね。魔力暴走を起こすんですから。この先は、ただ逃げるだけの人生ですか」


 戦闘センスが無い自覚はありましたけど、そもそもの適正すら無いとは。

 

「そんなことはないぞ。人間ってのは適応能力にたけている、要は経験と慣れだな。ピアは今日はじめて魔物を倒したんだろ? なら最初の難関はこえた、今後は場数を踏んでいけばいい、そしたら心の動揺も無くなるはずだ。ただ魔法はもっとクールダウンしてからにして、今は武器を使え」


 ちょっとは希望が持てましたよ、ありがとうございます。


「しかしそうですか。魔法はなしですか」


 私はゴブリンの群れを睨みつけ、奴らにはっきりと言ってやる。


「おいごみ溜めども、とっとと逃げた2匹を連れてこい。でないと、うちの番犬をけしかけて、地獄の谷底まで追いかけ回したうえに、血華を咲かせるぞ」


「…………がるるるるる」


 私に威嚇して、どうするんですかねぇ。


「アヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」


 おっ。それでも効果てきめんですね。ロープを持って、追いかけていきましたよ。


「自分の武器を使えよ」


「使いましたが?」


「…………」





「言ってたよな?」


「あはははは。似たような事は言いましたねぇー。でも明言はせずに、婉曲的な発言でしたので、あなたの受け取り違いでしょう」


 お前の発言は、遠まわしに言いましたと、白状したようなもんだぞ。


「ホウビ、ホウビ」


 仲間を連行してきた2匹のゴブリンが、俺の服を引っ張りせがんでくる。ちなみにこいつ達もぼろぼろなので、内乱でも起こしたのだろう。


「そうだったな、褒美をやる約束だったな。なにが望みだ」


「オンナ、オンナ」


「女か、今すぐに手に入る女といったら」


 俺は振り向きもせずに、立てた親指で、クイクイとピアを指差した。


「トシマシマシ、ゴメンコウムリマス」


「はっはっ。こうむるとは、また難しい言葉を知っているな。なかなか利口ではないか──はっ!?」


 後ろで、ピアの魔力が噴き上がるのが分かった。


「いま失礼なこと言ったよな」


 怒りからくるものは、魔力暴走とは違うので心配はないが、俺へのとばっちりだけは避けたい。


「ギョッペ」


 俺は即座に、ゴブリンの頭部を叩き潰した。もう剣ではなくて、ただの鈍器と化している。


「さてと。最初に提案したように、こいつらはピアが始末してみろよ。なに難しくはない。そのカードでぶすぶすと刺しまくればいいだけさ」


「いや……あの」


「タスケテ、タスケテ」


「強くなりたいんだろ。そんな願望があるように感じ取れたが」


「そりゃあ、まあそうですけど……でも」


「安心しろ、野に放つってのは冗談だ。縛り上げたまま立たせると、訓練での標的に見えるだろ? これだと精神が乱れることも無ければ、魔力暴走も起きない。安全だ!」


「それだと処刑場の罪人に、見えるんですけど」


「オネガイ、オネガイ」


「ふむ、となると剣のほうがいいのか。返り血でべっとりと汚れているが、かまわんか?」


「いいわけないでしょうがっ!」


 剣が駄目なのか、汚れてるのが嫌なのか、どっちなんだろうか?


「タスケテ、オバチャン」


 横からゴブリンが訴えてきた。しかしそれは禁句だった。


「ああん。いまなんつった」


 ピアの闘気を受けて、ゴブリンがたじろぐ。


「ア……アア。タ、タスケテ、オ、オンナ、オンナ……イキオクレ、ツルペタ」


 つかつかと無言のまま、ピアは歩み寄っていった。


「ジュクジョ、ショウフ、ヤマンバ……メスメスメスメス」


 メスと連呼するたびに、ピアの笑顔が怖くなっていく。


「タスケテ、メスブタッ!」


 ゴブリンにとっては褒め言葉なのだろうか? 必死な形相からは、蔑む感情は感じられなかった。


 ──シュボッ。


 ピアの人差し指の先に、火が灯った。


「ん?」


 どうするのだろうと訝ったが、疑問はすぐに解決へと向かった。


「置かれた状況わかってんのか、このごみ共がぁ!」


「ギャァァァァァ」


 ピアは指先の炎を、ゴブリンの腕に押し当てた。


 なるほど魔法の応用技か。


 ふむ、殺さずに痛めつける。やり方は陰湿だが、経験と慣れを稼ぐための、実践的アプローチとしては最適だな。

 しかし問題は、そのへんのチンピラがやりそうな行動原理で、見た目が下品なところか。


 それにしてもピアの発想力は大したものだ。あの魔法の使い方は、常人には思いつかないだろう。


「ふぅむ。まさかピアのすることに、感心させられる日がこようとは、思ってもみなかったぞ。うわさ通りギルド職員ってのは、有能な人間が多いんだな」


 ゴブリンの身体に水ぶくれを増やしていく、ピアの背中が頼もしく感じられる。早くもひと回り成長したようだ。


「もう処分していいですよ」


 くるりと振り返ったピアの顔は、とても満足な表情をしている。


「へいへい」


 水ぶくれだらけになったゴブリンに、とどめを刺すのは、なんだか気がとがめたが、俺はきっちりと引導を渡してやった。

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