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Cl⊱own  作者: Joker
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1章 3話-表と裏-

白崎純一は部下の2人を心配していた。

互いにぶつかり合うまではいかないが、仁と美沙の相性は良くない。

なんとかして彼らに生き残って欲しいと彼は願っていた。

 どうやら仁と美沙はかなり相性が悪いみたいだ。選ばれた者同士だからか……最近の悩みの種でもある。2人の事情を知っている自分からすればその気持ちを理解することはさほど難しいものではない。互いにこのプロジェクトに対する想いは相当なものだ。だから私は敢えて彼らとは深く関わらない。その代わり、自分に出来ることは全て教えてやった。戦う術を……時には生き残る術も。今のところ問題無く仕事をこなしているようだが、それも時間の問題だろう。これからかなり戦闘は激しさを増していく。本州でしか目撃されていなかったネメシスの群れが此方でも確認されている。もうじき、それらを推し留める大規模な作戦も開始されるだろう。それらの作戦に彼らも投入されることになる。1人の力ではどうにもならない程の大きな波が押し寄せてくる予感に私は不安を拭えない。

???:「どうやら順調に戦闘データは得られているようだね、白崎君。」

純一:「はい、データの方は順調ですが……あちらのプロジェクトの方はどうでしょう?」

???:「安定的な生産はまだまだこれからの問題だよ。君が頑張っていることは承知の上だが、今は試作型の戦闘データが不足している。装着者への身体変化、安全性……出力の問題など……コスト的にもどれほど出力を抑えられれば妥当か……などね。」

その言葉に私は息を呑む。彼らを……彼らだけを危険な目に遭わせることなど……出来るだけあのプロジェクトが早く進むよう、私は全力を尽くし彼らの生存を優先しなければならない……。


 この女……かなりの手練れであることは間違いない。たった1人で5体のネメシスを相手にしてその命を刈りとった。なかなかの運動神経と格闘技術。

美沙:「……。」

ウェポンアーマーを解除させると彼女は此方に振り向くことなくこの場を去っていった。少しだけ急いでいるようにも伺える。

純一:「どうだ、仕事終わりに3人で飯でも。」

白崎さんは彼女に声をかけるが、申し訳なさそうに彼女は声をだした。

美沙:「すみません、学業の方がありますので。」

それだけ言い残すと彼女はさっさとこの場から去っていってしまう。いつもそうだ。白崎さんから聞いたが大学に通っているらしく、この仕事と両立しているのだという。なんにせよ、自分には出来ない器用さではある。

純一:「飯は野郎2人でいくことにするか。華が無くて悪いが。」

仁:「いえ、別に構いませんよ。」


 私は待ち合わせの場所で待っていた。美沙は……まだ来ない。今日は食事会があると言っていたのに。もう少しで集合時間になってしまいそうだ。

美沙:「お待たせ。」

樹里:「あ、良かった。もう少しで待ち合わせの時間だったから。」

美沙:「ごめん、ごめん。少しバイトで遅くなって。」

結構体力の要る仕事だと彼女は言っていたが詳しく聞いたことはない。彼女はサークルでとても人気がある。誰とでもすぐに打ち解けることが出来るし、気が利くこともあり男子学生からも注目の的だ。


 お店に入ると美沙は色んな学生たちから話しかけられていた。たぶん、彼氏とかもすぐに出来てしまうのだろう。そう思うと寂しい気持ちになった。どうせ、私なんか誰とも……そんなことを考えていると隣の席に彼女が戻ってきていた。

美沙:「ふぅ……ただいま。」

疲れたような様子だ。男子たちから質問攻めにあったのだろう。大変そうだとおもう反面、羨ましいとも思ってしまう自分がいた。

樹里:「おかえり、人気者だね。」

美沙:「そんなことないよ。」

一言だけそう言うと彼女の視線が1人の男子を捉えていた。じっと彼の方を見つめている。あの人は確か……神崎くんと言っただろうか。寡黙で普段から話したこともないけれどあまり人と関わろうとしない変わり者だ。他のサークルメンバーと話をしたところすら見たことがない。

美沙:「ごめん、ちょっとまた行ってくるね。」

それだけ言うと彼女は空いている彼の隣に座った。神崎くんは迷惑そうな表情を浮かべているが彼女の方はなんとも楽しそうだ。からかっているというか、ちょっかいをかけているというのか……他の学生たちと話す時のような遠慮がちな彼女とは少し違うような雰囲気を感じ取った。そうか……美沙は彼のような男がタイプなのだろう。なんとなくだけど、そんな風に感じた。そう言うと彼女は食事会が終わるまでほとんど彼の隣から席を外さなかったのであった。

樹里:「へぇ……美沙って神崎くんみたいな人がタイプなの?」

美沙:「ちょ、ちょっと……何を言って!……違うってば。」

少しだけ赤くなりながらも否定される。なるほど……少なからずは好意があるということなのだろうか。いや、少しだけ意識しているとかその程度だろうか。少しだけ彼女のことが羨ましかった私はここぞとばかりに彼女を責めたのであった……。


 上辺だけの関り。偽りの人間関係。話すことすら何もなく、ただこの場に席を置いてあるのみ。特にこれといって興味を引くものすらない。どうしてこんな場所に自分は居るのだろうと、自分の心に何度も問いかける。

美沙:『とりあえず。雰囲気だけでもいいから。』

一体何を考えてあんなふうに此方を誘い出したのだろう。彼女の考えていることが何一つだって理解出来ない。理解に苦しむ。どうして彼女は自分をこんな場所へと誘ったのだろうか。誰と話すことすらなくただ食事の席についているだけだ。

美沙:「どう?少しは慣れそう?」

いつの間にか隣に彼女が座っている。思わず不機嫌な顔を彼女に向けてしまう。

柊一:「慣れそうにない。こんな場所に呼び出してなんのつもりだ?」

美沙:「少しは慣れておいた方がいいって思っただけ。別に深い意味は無いよ。」

思わずため息がこぼれる。振り回されてばかりだ。

美沙:「この後、少しだけつき合って。」

此方にだけ聞こえるように小さな声で彼女は言う。

柊一:「もういいだろう。何の意味があって……!」

断ろうと思ったが彼女の表情は有無を言わさないような迫力があった。

美沙:「……お願い、何も言わずに私につき合って。」

柊一:「……。」

訳がわからなかった。彼女のその言葉に何も反論出来ず、深く息を吐き出した。どうやら彼女の言うとおりにしなければならないらしい。

真剣な表情の美沙の頼み事にはいったいどんな意味があるのだろうか。

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