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Cl⊱own  作者: Joker
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3章 11話-邂逅-

美沙について考えていた柊一はとある人物と出逢う。

その出逢いは彼に何をもたらすのだろうか。

 目を閉じながら1人の時間を謳歌する。遠くから風に伝わってギターのメロディが流れてくる。とても優しくも、悲しい音色だ。そして所々情熱的でもある。

柊一:「良い曲だな。」

誰が弾いているかわからない。だけど、とても綺麗な音色だ。最近、彼女は顔を出さなくなった。諦めたということはないと思うが1週間ほど顔を合わせていない。毎日のように顔を合わせていたというのにどうしたというのだろう。大学にも来ていないようだ。

柊一:「……まさか、な。」

連日で物騒な事件があったとニュースがあった。しかし、それだけじゃない。この感情を自分は知らない。なんと表現して良いものか。彼女が居なくて……寂しいのか。それとも不安だというのだろうか。なんともいえない気持ちになる。いや、以前にもこの気持ちを……深く考えるのはよそう。今日もいつものように公園のベンチまで辿り着く。座ろうとすると隣のベンチには先客が居たようだ。残念だが、この場所は明け渡そう。そう思った時、目の前の人物から声をかけられる。

???:「別に気にしていないわ、どうぞ。」

柊一:「……。」

自分と同じくらいの歳頃。だが、随分と大人びている。こういう女性を美人というのだろう。近寄り難い、クールな印象。白衣姿が随分と似合う美貌の持ち主。

柊一:「先客が居たのならやめようと思ってね。」

???:「……。」

目と目が合った瞬間に身体が動かなくなった。まるで石化したような感覚だ。

柊一:「……。」

互いに沈黙。彼女は池の方に視線をやりながらも微笑んでいた。

???:「冷たいのね。少しくらいつき合ってくれてもいいと思うのだけれど。」

冷たい美貌の持ち主。白衣姿の女性の座っているベンチの隣のベンチに座る。距離は離れているが互いにしっかりと声が聞きとれる位置。不思議な距離感。

???:「綺麗な音ね。」

柊一:「……そうだな。」

それだけ交わすと再び沈黙が走る。その空間に風と一緒に流れる綺麗で切ないギターのメロディ。何故だか嫌な気分にはならなかった。東雲美沙と一緒に居る時のように騒々しい時間ではなく、静かに流れる時間。

???:「……何を探しているの?」

柊一:「わからない……見つかるかどうかも……。」

自然と口が開いた。何を言っているのか……会話の意味が自分でも上手く理解出来ない。ただ、信じられないほど驚くようにすっと言葉が溢れ出た。まるで……ずっと昔から知っているような不思議な感覚。彼女とは……今、初めて出会った筈だ。

???:「当てもなく探すのもまた、一興……見つかるといいわね、探し物。」

柊一:「そうだな。」

まるで心が満たされていくような感覚。どういうことだ、彼女の存在は……自分の中で大きなものだと感じている。それが何故かわからない。頭では理解出来ないが、心が知っている。そんな上手く説明出来ない感覚。

柊一:「君は……何者だ?」

???:「水瀬秋弦……北色大、理学部所属。今は休学中。」

北色大、理学部……これはどういうことか。ウチの科ではないか。いや、なんとなく顔見知りかもしれないという感覚はこのせいだったのだろう。今は休学中と言っていた。彼女を見ていたとしても不思議ではない。

柊一:「そういったつもりで聞いたワケではないが?」

すると彼女は微笑むように小さく笑った。

秋弦:「あなたの名前は?」

柊一:「……神崎柊一だ。同じく、理学部所属。」

秋弦は機嫌が良さそうな表情だ。少しだけ調子が狂う。

秋弦:「これは変わった縁ね。柊一くん。」

名前で呼ばれたことなど一度も無いが不快な感じはしない。だが、なんとなくだが得体の知れない彼女の近くにいては危険なような気がした。

柊一:「随分と変わった言葉を使うんだな……さて、俺はそろそろ失礼するよ。」

ベンチから立ち上がってこの場から去ろうとする。この女はとにかく、不明なことだらけで危険だ。

秋弦:「そろそろ……大学に顔を出そうとしていたの。その時はよろしく、ね。」

どうやらつきまとうことに決めたらしい。その容姿、スタイルなら男も選り取り見取りだろうが。何故、自分につきまとうのか。彼女、東雲美沙もそうだが変わり者が随分と多いものだ。

柊一:「秋弦か……顔と名前は覚えた。」

秋弦:「似た者同士、仲良くやりましょう。それじゃ……有意義な時間だったわ。」

互いに顔を合わせず背を向けて歩き出す。なんとなくだが背筋がぞわぞわとする。異様な感覚だった。恐怖とかそういう感覚とは違う。なんと説明して良いかわからない独特の感覚。ただ何故だろう……俺は彼女を知っている。だけど、思い出せない。頭の中に霞がかかったように何も。そんな時だった。携帯の着信が鳴り響いた。ディスプレイを確認すると東雲美沙と表示されている。通話ボタンを押した時には秋弦と遣り取りした時の感覚は既に薄れてしまい、なんとかいつもの自分に戻れていた。

美沙:「久しぶり、神崎くん。」

柊一:「……あぁ。」

特に言葉が続かない。なんと声をかけるのが良いのか思いつかないからだ。いつもの彼女のような声だが、何処となく元気がない。

美沙:「……何も聞いてくれないの?」

柊一:「聞いて欲しいのか?」

その言葉に彼女は黙ってしまう。少しの間の沈黙後彼女が言葉を続ける。

美沙:「今から少し会えないかな……少しだけ、愚痴を聞いて欲しい。少しだけ、ほんの少しだけ聞いてくれたら……いつもの私に戻るから……。」

その言葉に思わずため息をついた。まるで手のかかる娘のようだ。

柊一:「わかった……何処に行けばいい?」

彼女から居場所を聞いて、俺は早足で東雲美沙の待つ場所へと急ぐのだった。

柊一は美沙に呼び出され、彼女の元へと向かう。

新たな出逢いに背を向けて。

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