2章 9話-消え去る生命-
互いに仲間として打ち解け合い始める2人。
遂に2人で協力して作戦にあたることに。
そこで彼らが目撃するものは……。
戦闘中だが、自分の頭の中に靄がかかったようで……上手く物事を考えられない。明らかに思考能力が低下している。
上級ネメシス:『そのシステムが……お前たちだけのモノだとは思わない方がいい。』
そのシステム……ウェポンアーマーのことだと思うのだが。このシステムが此方側のものではないとすると、いったいこの兵器は……彼らのモノだったとでもいうのか?
仁:「……わからない。」
美沙:「珍しく考え事?」
仁:「いや……そうだな、俺らしくない。」
美沙:「……しっかりしてよ。前回みたいなことにはならないようにね。」
なかなかに良いチームワークが出来てきているような気がする。一時はどうなるかと思ったのだが、どうやら此方の思惑を超えて彼らは上手くやっているようだ。少しだけ、進藤の様子がおかしいのは気になるが、互いにカバー出来そうな関係値だ。
純一:「……2人とも戦闘に備えろ。12時の方向から敵が3体。」
連携も上手くとれているようだ。よし、これならばなんとか上手くやっていけそうだ。
敵を撃破して前に突き進む。敵は3体だけではなかった。次々とネメシスが沸いてくるように迫ってくる。過去にこんな数など……。
仁:「ハァ……キリがない……。」
美沙:「……幾ら倒しても……まだ出てくる……。」
体力が既に限界に達しそうだった。そんな時だった。そこへ、普通のネメシスとは違う個体が姿を現した。間違いない、人間の姿はしていないがこの間の個体のように上級ネメシスだ。深紅の色をしたそのネメシスは何処か女性のような独特なフォルムのネメシスだった。なんとなく戦い難い。距離をとって相手の出方を慎重に窺う。だが、相手は此方に仕掛けてくる様子は感じられない。
純一:「進藤、東雲。撤退だ。あまりにも分が悪過ぎる。」
仁:「待ってください……此処で諦めたら……コイツらは……!」
純一:「命令だ!こんな所でお前たちは命を落とすというのか!」
仁:「……!」
確かに……冷静に判断すれば白崎さんの指示は正しい。だけど、ここで彼らを放っておけば後にどんな損害に繋がるのか想像もつかない。本州のように此処で押されてしまえば……今の普通の生活だって出来なくなってしまうかもしれない。こんなところで死ぬことは出来ない。ならば……ここで踏ん張るしかないのではないか。死なないように戦って、明日からの平和な生活を脅かさぬよう、此処で彼らを食い止めるのが一番の理想ではあるが……出来るのだろうか。この数と上級ネメシスを相手にして……。
仁:「……ダメです、俺は……此処でこいつらを!」
純一:「進藤!撤退することは逃げることではない!冷静になれ!」
仁:「……俺は……コイツらを倒す!」
美沙:「……。」
一歩を踏み出し、戦闘体勢に入る。彼らも此方をじっと見つめている。そんな時だった。あの男の言葉が再び頭の中に響き渡る。
上級ネメシス:『フン……お前たちがよく言う。元々はお前たちから始めたことではないか。何を偉そうなことを。』
目の前の敵は動き出そうとしない。まるで此方の様子を窺っているように。
仁:「……俺たちの方から……始めた?」
自分の頭の中に過去の記憶がモノクロの映画を観ているかのように蘇る。家族が無惨にもこの世界から消えたあの日のあの映像。
仁:「お前たちの方から……始めた癖に……俺は……。」
葛藤している。此処で彼らを殺めてしまっては……繰り返しになってしまうではないかと。憎しみが更なる憎しみを生み、新たな戦いの火種となってしまう。今更その渦中にいる自分ではどうしようも出来ない。どうしようもならない……これは本当に正しいことなのだろうか。答えは出ない。
仁:「……ぐっ!?」
もの凄い衝撃が走る。まるで隕石が降ってきたあの日のような印象を受ける。此方の身体はアスタロトに変身した美沙が受け止めてくれていた。その前には……1体の見たこともないウェポンアーマーが立ち尽くしていた。此方側のウェポンアーマーとは違い、かなり禍々しい雰囲気のアーマー。しかし、機械で出来ているような装甲。間違いない、アレはウェポンアーマーだ。その黒い装甲と、隙間から溢れ出る蒼い光は独特の感情を此方に植えつけた。不安、恐怖。とてつもない力を感じた。圧倒的過ぎる。まるでそのウェポンアーマーは高次元体のような、明らかに自分よりも上位の存在であることを生命の本能で感じ取れる。こんなバケモノが……存在していいのか?そんな疑問は彼らも同じだ。ネメシスたちは生存本能からか、そのウェポンアーマーから少しずつ離れている。目を背けることなく後退していく。敵なのか味方なのかもわからない。刹那、虐殺が始まった。
ネメシス:「ギ……ギシャァ!」
目の前の1体のネメシスがいきなり弾け跳んだ。まるで内部から爆発するかのように爆散する肉片。あのウェポンアーマーがやったことなのだろうか。ネメシスたちはその脅威に向かって襲い掛かるが、ソレはその場からあまり動くことなく、彼らを向かい撃つ。もの凄い破裂音や衝撃音と共に彼らは肉片へと変わっていく。目の前の高次元体はただ一撃彼らに与えただけ。だというのにネメシスは粉々のバラバラになっていく。これは戦いというものではなかった。ただの虐殺。骨が砕け、肉の潰れる音が周囲に響きわたる。目の前のソレは一言も発さず、彼らに致命の一撃を与えていく。最後に上級ネメシスだけが取り残され、彼女は仲間たちの為にそのウェポンアーマーに立ち向かった。歯が立たないとわかっていて……彼女は行動に移したのだった。
仁:「……やめろぉおおお!」
思わず、何故だか叫んでいた。まるで、さっきの自分のように彼女は仲間たちの為に襲い掛かる。そしてもの凄い衝撃と共に彼女の首が蹴りで吹き飛んだのだった。なんのことはない普通の一撃一撃が全て必殺の一撃。まるで息を吹くようにその場の生命が全て消え去った……。
仁と美沙の前に現れた正体不明の漆黒のウェポンアーマー。
それはあっという間にこの場の生命を奪い去っていく。




