SF世界を壊した神にチートスキル引っさげて復讐を誓います ~一緒に世界に渡った女神は意外にもポンでした~
すごく久しぶりの投稿なので、リハビリもかねて、プロローグ的な内容を短編で投稿します。
少し長いですが、楽しんで最後まで読んでもらえたらうれしいです!
西暦2147483647--
突如現れた侵略者『ゼウス』により、世界が終焉を迎えようとしていた。
次元、宇宙、すべての代表者により、ゼウスを消滅させるための組織『デストロイ』が設立されるものの、数カ月で壊滅。
世界の9割が消滅した頃--。
見かねた女神が神託と共に神の力を宿した決戦人型兵器『侵滅神機ブレイブグロウ』を僕たちに託してくれた。
その姿を一言で表すと空色の鳥。細身でありながら力強さを感じる。武器は全て別空間んに格納されており、エネルギー炉は謎の永久機関となっている。
そのパイロットにアカネ、そして専属エンジニアに僕が選抜され、世界はゼウスとの最終決戦に挑むこととなった。
『右舷、敵勢力の浸食あり!!』
『今すぐパージしろ!』
『ダメです! このままでは艦ごとブレイブグロウも--』
『くっ……仕方ないかーー』
艦長が近くのマイクに向かって大声で叫ぶ。
『アカネ、セツ、あとはお前たちに託す。世界の命運を頼んだぞ!』
『艦長!!!』
凛とした声が操縦席に響くと同時に、ブレイブグロウが艦から射出された。
『艦は!?』
船体のほぼすべてがゼウスに取り込まれ、艦の主砲がこちらに向いた瞬間ーー。中心から膨大なエネルギー反応を検知した。
『託されました。皆の希望--』
艦を中心に黒い渦が発生する。
『ブラック……ホール』
『うん、エネルギー炉を破壊したんだ……』
主砲が発射される前に、ゼウスもろとも艦は黒い渦に飲み込まれた。
『いくよ、アカネーー』
アカネは首元から垂れ下がるロザリオを力強く握りしめ。ぐっと涙をこらえるように見えた。
『うん、行こうセツーー』
宇宙の果て--。そこは星一つない暗黒の世界。目には映るのは一点の光のみ。
侵略者の核『ゼウスコア』がその存在感と共に目の前で躍動している。
その姿は巨大な心臓--。一定間隔で脈打ち、その周りには未成熟な『ゼウス』がモゾモゾと蠢いている。
『集合体恐怖症だったら吐いてるなーー』
『そうね。だったら、さっさと綺麗にしないとね!』
カタカタカターー。
『いける!』
ブレイブグロウが両手を突き出すと、機体が一瞬にして赤黒く染まった。
手のひらには青い光が生まれ、その光を包むようにブレイブグロウから赤黒い色が青い光に吸い込まれていく。
『怨嗟の業火に焼かれて逝きなさい--』
その瞬間手に凝縮されていたエネルギーがゼウスコアに向かって射出されーー。
細かく分散したーーまるで暗闇に光る星のように。
『全未成熟ゼウスに着弾!!』
『アビス!!』
一瞬すべてが青く塗りつぶされたと錯覚するほどのまばゆい光と共に、目の前に蠢いていた未成熟なゼウスが消滅した。
『続けて!!』
『グングニルいけるぞ!!』
ブレイブグロウの右手には一本のランスが握られている--。その手に青白い光が集まり、次第にランスそのものが青白く輝き始める。
『エネルギー充填完了!!』
『いっけえええええ!!』
超音速のグングニルを投擲し--。ブレイブグロウは追従した。
『グラム!!』
その一言で右手に実体のないエネルギーの剣が展開される。
グングニルが『ゼウスコア』に到達。コア内部エネルギーを放出しコアの3分の2を消滅させる。
『アカネ!』
『再生のスキは与えない!!』
右手に展開したグラムで残りの心臓を切りつける--。
『これで!!』
ガギンーー。
残った心臓から手のひらのようなものが突き出されていた。
徐々に心臓が人の形に変化する--その姿はまるで顔のないシリコン人形。あざ笑うためだけにつけられたであろう口が真っ黒な半月を描く。
『ちっ!!』
怯むことなくグラムを何度も振り下ろす。
そのすべての剣戟をことごとくを打ち払い、最後にはグラムの刃を片手で受け止めた。
『グングニル!!』
左手にランスが現れ、グラムを掴む腕にめがけて突き出す。
『これで!』
ベギンーー。
金属の折れる音が聞こえたーー。
『うそ--』
ゲッゲッゲヒッ--。
口角はさらに上がり不快な音がうっすらと聞こえてくる。
コアの手には折れたブレイブグロウの両腕が握られていた。
『それでも、私たちにはまだ足が残って--』
ベギンーー。
左足も折られ、奴の手の中にあった。
ゼウスは見せつけるようにその両腕左足でジャグリングまがいのことを始めた。
『遊んでる--。くそがあああああああ!!』
『アカネ!!』
僕は大声で叫んだ。
『なによ!!』
『いつも冷静に!--だろ』
『でも--通じないのよ。女神が与えてくれて、みんなが託してくれたこの力が--』
操縦席でうなだれ、力ない声と共に涙が舞う。
『うん、託してくれたんだ。僕たちに--』
僕はブレイブグロウにコマンドを入力し、コードを実行した。
『だから!! 絶対勝つよ!! それと--ありがとね、アカネ』
『え?』
その言葉と共に僕の姿は後部座席から消失した。
『セ……ツ……?』
『聞こえてる? アカネ。今から僕はブレイブグロウと同化する』
『え? どういう?』
『ブレイブグロウのリミッター解除。それをすることできっと奴に勝てるはずだ』
『それと同化に何の関係が?』
『リミッター解除条件が人間の魂との同化なんだ--』
『え? え? だって、最後まで一緒って……』
『うん、最後まで一緒だよ。 僕はブレイブグロウとしてずっとアカネと一緒だよ』
アカネが操縦桿に両手を叩きつける。
『勝手すぎる! 相談もなく!』
『言ったら止めるだろ』
『当然でしょ!!』
『だからだよ。僕の肉体は消滅する--でも、僕の記憶、魂はブレイブグロウと生き続ける。それに、操縦席でならいつでも会話できるからさ』
『身勝手、身勝手だよぉ……』
『身勝手だよ。でも、託された思いを無駄にしないためにも--奴を倒さないと』
グスッーー。
『託された思いなんでどうでもよかった。セツと二人で安寧に暮らせたらそれで……』
『だったら、この戦いが終わったら二人で一緒に暮らせばいいだろ。僕はずっと君のそばにいるからさ。だから、頑張ろうぜ!』
僕にできうる最高の笑顔、最高に明るい声で言葉を放った。
『本当に身勝手なんだから--』
アカネが操縦桿を強く握りしめる。
『だったら、さっさと倒してのんびり余生を過ごすわよ!』
『あぁ!!』
ブレイブグロウが茜色に輝く。その姿はまるで不死鳥。
コアに砕かれた両腕と左足は一瞬にして修復した。
『セツ……いくよ!』
『あぁ』
その瞬間、コアの胸に大きな風穴が空いていた。先ほどまで笑顔でゆがんでいた口元は驚愕の色を見せている。
『あんたのそんな顔を見ても、ただただ気分が悪いだけよ』
静かに呟きながら、右手でコアの顔面を掴む。
『侵滅の虚無』
超巨大なエネルギーの放出によりコアは分子レベルまで分解され、この宇宙から消滅した。
『終わった……』
『あぁ、終わったな』
『これできっと世界は救えたよね』
『きっと救え……アカネ!! 回避行動!!』
『え?』
宇宙が裂け、巨大な瞳がこちらを見据えていた。
瞬間ーーブレイブグロウの腹部に黒い輝きを放った槍が貫通した。
『なん……で……』
女神様、お願いします。どうか次の世界ではアカネと一緒に安寧な日々を--。その願いと共に360度に展開された黒の槍によってブレイブグロウは貫かれ。
--消滅した。
■
夢を見ていた。
最後の戦いの夢だ。
何故夢だと思うかって?
だって、目の前にこんなにも綺麗な青空が見えてるんだ--夢だって思うだろ。
「うあああああああああああああああああああああああああ!!!! クソ親父とクソ兄貴どもがああああああああああ!!!」
「なんだ!?」
けたたましい叫び声に身を起こし、隣を見る--。そこには気持ちよさそうな寝息を立てているアカネの姿があった。
よかった。アカネが怒り繰ったわけじゃないのか。
「こちとら地道に世界を構成して、やっと次の段階へ成長できるところまで育て上げたのに!! ここまでに何億年かかったと思ってやがる!!! はぁはぁはぁーー」
大きな声の聞こえた方に視線を向けると、ゲーミングチェアに座った少女が台パンしたり、頭をかきむしったりしながら泣き叫んでいる。
椅子に座っている少女に近づき--。
「あのー、すみません」
「わるいけど……今はまだストレスが発散しきれてないのよ。あなたたちは世界のサルベージにいそしんでくれる。少しでもいいから魂の回収をすすめて」
必死に怒りを抑えてくれたんだろう。体はプルプルと小刻みに震えている。
数秒後、バンバンバンバンーー激しく机を叩き始める。
これは当面話を聞いてもらえないな--そう思い、僕はアカネの隣に戻り周りをじっくりと見渡す。
空まで届くと思えるようなピンクの石壁がこの空間を囲んでいる。
真上を見上げると、その中央に36面体の宝石が一定の法則で回転している。
『セツ様でよろしいでしょうか』
辺りを見渡していると、どこからともなく声をかけられた。視線を移すと、そこにはボールに腕の生えたロボットがたたずんでいた。
『お初にお目にかかります。お嬢様の執事をさせていただいております。ロボAでございます。Aとお呼びください』
「これはご丁寧に。セツと申します」
『ただいま、込み入った事情により、お嬢様の情緒が不安定になっておりまして--しばらくこちらでごゆっくりしていただけますと幸いです』
そう言うと、Aはどこからともなく、椅子とテーブル、おいしそうなお茶とお菓子を出現させた。
『お連れ様が起きられましたら、事情は後程説明するとお伝えください。それでは私も作業に戻ります』
器用にお辞儀をし、ほかのロボと同じように周りの石壁の修復に戻っていった。
用意されたお菓子をつまみ口に入れる。
「お菓子うま」
■
アカネが起きた後は、出されたお菓子とお茶を食べながらのんびりと周りの様子を観察したり、雑談したりと楽しい時間を過ごしていた。
しばらくして、少女の奇声が鳴りやんだ。
その様子を察知したロボAがすぐさま少女の元へ移動し、諸々の状況説明をしたのだろう。
少女はこちらに視線を向け、ダッシュでテーブルに近づき--そのまま。
「本当にすまなかった!」
スライディング土下座をかました。
「と言われましても……」
状況がわからないのにいきなり土下座をされても反応に困る。
「私の名前はウリス。神の一柱よ。状況は今から説明するわ。あと、私に敬語は使わなくてもいいから。名前もウリスで良いわ」
早口言い終えると、こちらの反応を気にせず、ウリスは説明を始めた。
ここはウリスの管轄する世界のサーバーみたいなモノ。
石壁に書かれたコードの自動成長により世界が成長する仕組みになっているらしい。
その石壁に数カ月前から実の父親と兄からウイルスを送り付けられ、様々な対処を行ってきたが相手の戦力が5人、10人と増えていき、12人に達したときウリスの力及ばず撃沈。ウイルスの侵入を許すこととなり、その結果、僕らの世界が崩壊の危機を迎えたらしい。
崩壊の危機に対抗すべく、ウリスが造ったブレイブグロウを送り込んでくれたが、最後の最後に父親からのハッキングによりついぞ世界は消滅することになった。
「周りにいるロボたちは鋭意データのサルベージをしているんだけど、唯一救出できたのが君たち二人なんだ」
ウリスの顔をよく見ると、額には冷えピタらしきものを張った痕が。ここから見える机の上には空き缶のようなものが山のように積み上げられていた。
その表情は疲れ切っており、目の隈もひどい。
つまり、彼女は彼女で、ずっと戦い続けてくれていたんだろう。
「で、その原因っていうのが--末の妹がウリスにべったりでむかつくからって……」
嫉妬による争いは過去何度も行われている。だからわからなくもない。わからなくもないんだけど--。
「なんだろう、この言い表せない怒り……」
「どうしようセツ。私今すぐその神様の顔面ぶん殴りたいわ」
珍しく同意見だ--。
「私ならいつでも殴られる準備はできているわ」
まるでまな板の鯉のようにウリスはあおむけで地べたに寝ころぶ。
「さぁ、殴って気が晴れるなら、いくらでも殴ってちょうだい!」
目じりにうっすらと涙を浮かべながらプルプルと震えている。
「待って待って、私が殴りたいのは父親と兄貴sの方で、ウリスを殴りたいわけじゃないの」
「そもそも、ウリスは世界を護るためにあらゆる手段を尽くしてくれたんだろ」
「それでも、救えなかったんだから結局同じよ」
「それでも、僕たちはお礼を言いたいよ」
「「ありがとう!」」
最高の笑顔でそう伝えると--。
「あっ、涙でそう--グスッ」
「とりあえず、一緒にお茶しましょ」
アカネがウリスの手を引き椅子に座らせる。
■
「で、どうにかそいつらに一泡吹かせる方法はないの?」
ウリスが口を着けていたお茶をテーブルに置き、テーブルに両肘をつき、どこかのロボットアニメの司令官のようなポーズをとる。
「あるわ! ただし、セツの力を借りないといけないけどね」
「ほほう、僕が力を貸せばそいつらに一泡吹かせられると? その話聞こうじゃないか」
かなり久しぶりに悪い笑みがこぼれてくる。
「まず、あいつ等が管理している世界にハッキングします!」
「「うん」」
「あいつらの世界のルールを改変し、アカネとセツに神に匹敵するチート能力を授けます」
「「うん! うん!」」
僕とアカネの目がキラキラと光りだす。
「で、あいつらの世界を乗っ取ります! これが一番の復讐になります!」
「「うおーーーーーー!」」
僕とアカネは咆哮を上げた。
「てっきり世界を破壊するって言い出すのかと思っていたけど--」
「破壊は何も生まないでしょ。それに破壊したところで、また創り直されるもの」
それもそうか。
「でもね。創造物が創造主の世界を乗っ取ると?」
珍しくアカネが頭を悩ませている。普段こんな話聞くこともないのに--。
「プライドが傷つけられ、怒り狂う」
「そう! そうすれば、あいつらは絶対に世界に干渉する。その時に神に匹敵する力を得た2人と神である私で応戦すれば--」
「神そのものを消滅させることができる!」
アカネが力強く答える。
「正解! そのあとは私が世界を管理すれば復讐は完遂されるわ!」
「最っっっっ高の復讐じゃん!! テンション上がってきたあああ!」
そういいながらアカネはシャドーボクシングを始める。
「で、僕はまずハッキングを手伝うことになると」
「そういうことよ。ちょっとこっち来てくれる?」
ウリスの方へ近づくと、額に手を当てられる。その瞬間、大量の情報が脳に焼き付けられる。痛みは無い。だけど、これはちょっとーー。
「吐きそう……」
「あとちょっとだから我慢してね」
可愛い笑顔でそんなこと言われたら我慢するしかない。
「はい、終わり! 次はアカネね」
同じようにアカネの額に手を当て、情報を流し込んでいるんだろう。数秒でアカネは嘔吐する。だけどウリスは手を止めず情報を流し続ける。その間、アカネはずっと嘔吐しっぱなしだった。
吐しゃ物は全てロボットが吸収し、チリ一つ残っていない。
「これで、2人に神の知識を渡したわ。 これからその知識を使ってハッキングを行うわよ。 ただ……アカネは使い物にならなさそうだけど……」
嘔吐のし過ぎで倒れてしまい、今はロボットに介抱されている。
「僕たちだけでやりましょう」
「そうね」
ウリスは天に向かって手を挙げ、そのまま手を下に下げる。
上空に浮いていた36面体がゆっくりと地面に近づいてくる。
「これに手を当てて」
言われるままに手を当てる。その瞬間、自分の意識が別空間に飛ばされた。
『ここが……』
目の前に小さな扉が一つある。
『そうよ。クソ親父のサーバーへのバックドアよ』
『なんでこんなものが?』
『親父に頼まれてちょっとした拡張世界を創ったのよ。その時についでに仕掛けておいたの』
『ぬかりない……』
そう呟いていると--。
『ほら、時間もないんだから、早くいくわよ』
扉の先には大量の本が並べられた空間が広がっている。
『世界のルールを司るライブラリ。ここにある特定の書籍を書き換えることで、貴方たちに最強の力を与えることができるわ』
そう言うとウリスは両手を広げ空中にキーボードを出現させる。
『じゃあ、やるわよ! 私は『スキル一覧』と『来訪者と来訪者ルール』を担当するわ。 セツは『スキルルール』をお願い』
『了解!』
そういいながら僕も空中にキーボードを展開する。
目にもとまらぬ速さでキーボードをたたく。
スキルルールの書籍の中身を改変する。それと同時に管理者から見つからないように数秒毎に書き換わるセキュリティに対応するシステムを組み上げる。
中身の改変も不自然さがないような改変を進めていく。
スキルルールでの改変は大きく3点。
一つ、来訪者は取得できるスキルの数が無制限となる。(ただし初期で取得できるスキルの数は2つまで)
二つ、来訪者は神のスキルを使用できる(ただし、代償は必要となる)
三つ、来訪者はスキルを自由にコピーできる。(ただし、コピー者の能力に見合わないスキルはコピーできない)
スキルルールには必ずメリット、デメリットが必要なるらしい。
そのため、極力軽いデメリットを考え追加していく。
改変点は少ないのにーーこれは骨が折れる。数千万、数億ほどの情報を一気に処理しないといけないなんて。
『ウリスから貰った力がなければ速攻で詰んでたな』
『口を動かす余裕があるなら手を動かして! あと、そっちが終わったらこっちのセキュリティ対応お願い』
『了解!』
体感時間約24時間--やっとスキルルールの改変が完了した。
ウリスの方はまだ終わっていない。スキルの全スキャンと全コピー、さらに追加を同時に行っているんだ。そう簡単に終わるわけがない。
『そっちのセキュリティ対応受け持つよ!』
『よろしく!』
流石にかなり疲れてきた。どこまで集中力が持つか。
『あとはスキルのコピーだけだから! もうちょっとだけがんば……やばい! 気づかれた!?』
『え!?』
嘘だろ、気づかれた気配は一切なかったぞ。
『いや……これは……あいつら、さすがにやりすぎでしょ』
ウリスがブツブツと呟いている--。
『セツ、スキルの4分の3はコピーできたわ。戻るわよ!』
右手を振り上げると意識が元の場所に戻った。
ゴゴゴゴゴゴゴーー。
「うわっ!?」
空間全体が揺れている。
「あいつら、この空間を破壊するつもりね--A、あとどれくらい持つ?」
『長くても5分程度かと』
「わかったわ」
ウリスが36面体に触れ、コードを展開。
その瞬間粉々に砕け散り、破片が扉の形に変化した。
「この扉からあいつらの世界に転移できるわ。 私はいくつかやることがあるから、貴方たち先に行ってちょうだい」
僕はうなずき、この状況でも唸りながら寝ているアカネを背負い、扉の前に立つ。
「それじゃあ先に!」
「えぇ、あとはよろしくね」
サムズアップし、扉を通ろうとした瞬間。アカネが両腕で扉の縁を掴む。
「待って!」
「ぐえっ!! な、なんだよ……いきなり」
「ウリスも一緒じゃないとダメ。 そんな気がするの!」
これまでの戦いでもアカネの第六感に助けられた場面は多々ある。というこは--。
「ウリス、僕らも手伝う」
「ダメよ! 2人は早く行って!」
「3人でじゃないと--」
扉の前でアカネは座った。
「ここを動かないよ。 一緒に復讐するって言ったじゃん!」
ウリスは目を丸くし、頭をかいた。
「あー、もう、A! 各員のメモリ射出。集めたメモリをここに」
ウリスが地面に円を描く。
『わかりました』
その瞬間、空が白で覆いつくされた。
大量の白い石が円に吸収され大きな柱が出来上がる。
「神の楔--これが私をここに縛る枷なの。これを壊さないと私はここを離れることができない。だから貴方たちだけでも」
「壊せばいいじゃん」
「無理よ。この楔は神の力で壊すことはできないの。もう時間もないし、貴方たちは早く……」
「ふーん」
アカネが楔の下部に手を当て、一週する。
「アカネ、行けそう?」
「うん、余裕かな」
「へ?」
瞬間アカネは拳を振り上げーー。
「いくよ」
思い切り殴り飛ばした。
ベギィーー。
ウリスの顔から血の気が引いている。それが普通だ。今の音は完全に骨が折れる音。普通の人が思い切り石柱を殴れば拳は砕ける。
だけど、アカネの場合は違う。
ピシィーー。
アカネの殴った場所から石柱にヒビが入り--粉々に砕け散った。
「楔って言っても石の柱でしょ? 鋼の扉を殴り壊すよりもたやすいよ。 ってことで、ウリスも一緒に行けるね!」
「アカネ、そろそろやばい。急ぐぞ!」
口をあんぐりと開け、放心状態になっているウリスの手を引き、俺とアカネは扉へ駆け込んだ。
■
とある村の入り口。あの扉はココに繋がっていたようだ。入口の看板を見ると『村のリロ』と書かれていた。
表記が特殊だが、この世界の言語体系なんだろうと思っていた--が。
村に入ると目の前に広がる光景は、村の女性が全員見た目幼女。男性は一般的な背丈をしている。
隣を見るとウリスがうずくまり頭を抱えていた。
「まぁ、なんだ、親の性癖を知るのってつらいよな」
「そうよね、私も昔父の部屋にあったエロ本でショックを受けたものよ」
「決めた。私絶対にこの世界を乗っ取ってやる」
殺気すら感じるような声がウリスから聞こえてきた。
「まてまて、自分の父親の性癖が恥ずかしいからって殺気はダメだろ」
「そうよ。ここに住んでる人たちは平和に暮らしてるんだらから、穏便に乗っ取らないと」
穏便に乗っ取るってどうするつもりなんだろ。神の奇跡で信奉させるのか。
「当然、穏便に済ませるわ。でもね、私が創った世界をあそこまでグチャグチャにしたくせに、自分の世界はこんなにも平和。最後の光景を思い出すだけでむかつくのよ」
その場で地団太を踏むウリスを見て、何故か頭を撫でてしまった。
アカネもいつの間にかハグをしている。
「よし、じゃあ、みんなで円陣組むぞ!」
それぞれ肩に手を置き--。
「ウリス。掛け声よろしく!」
ウリスがうなずき--。
「絶対にあのクソ親父に復習してやるぞー!」
「「おー!!」」
僕とアカネもできうる限りの大きな声で応える。周りから変な目で見られているが、そんなこと関係ない。
だって僕たちにはーー。
「そういえば、僕たちに付与してくれたスキルってなんなんだ?」
「ふっふっふー! それはね!」
ウリスが空中にキーボードを開き、僕たちのスキル一覧を見せてくれたが……。
スキル『????』
僕とアカネのスキル欄は全て、『????』で埋め尽くされていた。
「……スキル一覧でコピーできてないスキルを付与しちゃってたみたい!! てへっ!」
この女神、優秀だけどポンだな。
チートスキルを持っているであろう僕ら3人の復讐劇がここから始まるのであった。
「まずはスキルを調べるところから始めるか」
「まっ、仕方ないでしょ」
「ごめんなさいいいいいい!」
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました!
この先もちょっと読んでみたい!等の意見がありましたら、長編の方で書いていけるよう考えてみようと思います。
ではまた、ご縁がありましたら。