表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/290

5話 必要素材…パなくない?


「エレナ…お主、恨むぞ…」


「そんなこと言ったって、あんたが逃げ遅れるからじゃない。」



イスに座り、紅茶にレモンを絞るエレナと、その対面で紅茶を飲みながら不満を露わにするウォタ。


イノチはそれには関わらず、ベッドの上で携帯画面を確認している。



「あの後、大変であったのだ!ミコトに怒られ問い詰められ…我は悟ったぞ。このクランのカーストトップはミコトだ…あれに逆らってはいかん!」


「そっ…そんなに…?朝はそうでもなかったけど…」


「お主は気づかんかったのか?ミコトはまだ激烈に怒っとる!朝食の食べ方など、まるで修羅の如くであったぞ!」



ウォタは思い出して身震いした。

それを見たエレナも、今朝のことを思い出してみる。


エレナの記憶では、今朝の朝食でのミコトは笑顔で皆に挨拶していた。食べる時もいつもと変わらなかったはずだが…


それなのにウォタのこの怯えようは…



「今頃…ゼンは…はぁぁぁ…奴のことが心配になってきた…」


「あっ…あたしも怖くなってきたわ…」



カタカタと歯を鳴らし、小刻みに震えるウォタを見ながら、エレナは後でミコトに謝る事を決意する。



「まぁ、盗み聞きはよくないよな。」



話を聞いていたイノチは、他人事のように言いながら近づいてくると、携帯画面を二人に見せた。



「…これはなんだ?」


「ランクが『80』になった時に使えるようになった機能。朝話した通り、明日からは『超上級ダンジョン』に挑戦するから、その前にエレナを強くするんだ。」


「あたしを?ふーん、悪くないわ。」


「我は!?我も強くできんのか?!」



さっきまで浮かべていた恐怖の表情はどこへ行ったのか…ウォタは楽しげな顔でイノチに問いかけてくる。



「残念ながらウォタは無理みたい…この一覧にはウォタの名前が載ってないんだ。」



イノチは画面をスクロールして、ウォタへ説明する。



「推測だけど、ウォタはガチャ魔法じゃなくて、この世界で直接仲間になったから、俺の力が及ばないんじゃないかな?」


「なんだつまらんのぉ…まぁよい、我は強化なんぞせんとも最強であるからな。」



鼻を鳴らし、偉そうに腕を組むウォタに苦笑いしつつ、イノチはエレナを向く。



「今からエレナのレアリティを上げるんだけど、とりあえずこれ、確認しておいて。」



イノチの言葉に、エレナは差し出された携帯画面に目を落とす。



エレナ=ランドール(R)

【タイプ】物理アタッカー

【得意武器】短剣(二刀)

【性別】女

【種族】ヒューマン


【必要素材】

『オークの魔石(R)』×2

『暗褐色の巨人の心臓(R)』×3

『イービルアイの眼核(SR)』×1



『エレナのレアリティを『R』から『SR』へランクアップさせますか?YES/NO』



内容を確認したエレナは、携帯をイノチへと返して、小さくつぶやく。



「あたしは構わないけど、フレデリカは?文句言いそうだけど…」


「残念ながら、フレデリカは素材が足りないんだ。必要な素材がエグすぎてさ…」


「そんなに?」



イノチは再び携帯を操作して、フレデリカの『ランク解放』画面を開く。



「ほら…これ。」


「えっと…ん〜」



フレデリカ=アールノスト(UR)

【タイプ】魔法アタッカー、アルケミスト

【得意武器】剣、銃

【性別】女

【種族】ドラゴニュート


【必要素材】

『デーモンの魔石(UR)』×2

『メドゥーサの瞳(UR)』×3

『デュラハンの心魂(SUR)』×1


『フレデリカのランクアップに必要な素材が足りません。』



「げぇっ…何よこれ。」

「ほう…フレデリカのやつ、なかなか難儀よのぉ。」


「だろ?フレデリカもだいぶ不満そうにしてたけどな…ただこれで想像できることもある。」


「想像できること?」



イノチの言葉に、エレナとウォタが首を傾げる。



「あぁ…エレナの素材って、主に『上級ダンジョン』までで獲得できたものなんだ。特に『イービルアイ』は上級でしか出現しなかった。ということは、『超上級ダンジョン』ではSR素材をドロップするモンスターが多く出現する可能性が高いと、俺は考えてる。」


「なるほどのぉ…確かに『メドゥーサ』や『デュラハン』はそこらのモンスターとは格が違うからな。本来はこの国にも分布しておらんモンスターたちだ。」


「え?そうなの?」


「あぁ…そやつらは『リシア帝国』や『ジプト法国』に生息するモンスターたちだ。そもそも、この『ダンジョン』と言うものも、昔とは様子が全く違う…」


「昔と今で『ダンジョン』が違うって…どういうことだ?」


「本来、『ダンジョン』というものは洞窟や山岳地帯に長年魔力が溜まり、自然的に発生するものだ。それが今では、突然、森や平原に姿を現しておる。」


「なるほど…なら、ダンジョンの不自然な発生が始まったのは?」


「この不可思議な『ダンジョン』が現れ始めたのは20年前くらいからだな。突然、ポツンと現れて気づいたら消えとる。我がナワバリにしておった『アソカ・ルデラ山』でも、同じことが起こっておったぞ。」



それを聞いたイノチは考えを巡らせる。



(ウォタの話から推察するに、やはり『ダンジョン』は"ウンエイ"が別に作り上げたものである可能性が高い、ということか…でも、現実に存在する世界でそんなことが可能なのかな…ゲームと称した"アクセルオンライン"と、現実世界である"バシレイア"…ウンエイの言うその"現実の世界"っていうのは、どこまで信用できるものか…)


「BOSS…難しい話は終わったかしら?そろそろ本題の、あたしのランクアップをしてくれない?」


「確かに!どこまでエレナが強くなるのか、我も気になるところだ!」



深く考え始めたイノチに痺れを切らし、エレナが頬杖をついたまま、イノチに声をかける。


ウォタも楽しげに尻尾をユラユラとさせている。



「…ん?あぁ、そうだったな。んじゃまぁ、エレナの『ランク解放』をしてみようか!!」


「「おおーーー!!!」」





「ゼンちゃん、ごめんね。」


「ミコトが謝ることではないさ。」



ミコトとゼンは、自室で携帯画面を見ている。


ミコトはその画面をもう一度見直してため息をついた。


明日から挑む『超上級ダンジョン』に備え、獲得キャラの『ランク解放』をしておこうとイノチと話した矢先、ゼンのランクアップに必要な素材を見て、ミコトは愕然とした。



ゼン(SUR)

【種族名】ファイアドラゴン

【属 性】炎

【タイプ】火炎の極意

【備 考】竜種、世界最強の一角


【必要素材】

『ドラゴンオーブ(SUR)』×1

『ドラゴンキラーの真核(SUR)』×1

『極意の極み(SP)』×1

『モユルモノ』×1


『ゼンのランクアップに必要な素材が足りません。』



「なっ…なにこれ…!」



どれもこれも、現時点では獲得不可能なものばかり…というか見たことも聞いたこともないアイテムばかりであった。


がっくりと肩をうなだれるミコトを、ゼンはなぐさめる。


ふと、外から声が聞こえて来ることに気づき、窓の外に目をやると、エレナとウォタが向き合い、何やら話しているようだ。



「カカカカカ…エレナよ。強くなった証を証明してみせぃ!!」


「後で吠え面かかないでよ!!」


「ふっ…ふたりとも!庭が壊れるからやれてくれよぉ!!」



エレナのランクアップが終わったのだろう。飛びかかるエレナをウォタがいなして、組み手を行なっている。


その横でイノチが泣いているが…


確かにウォタと刃を交えるエレナの動きは、今までに比べて格段に向上しているのが見てわかる。


ゼンはウォタを見据えていた。


その瞳には、ウォタの姿を映しつつ、奥に何かを宿しているのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] レアリティアップ素材が本当にエグいですねw URだけで賃貸かよ、とツッコみましたがまさかその上にSPが存在するとは。 仲間のレベル上げにも順序があって、それがストーリーに順序よく絡んできそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ