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56話 乙女心の強かさ ※番外編「イノチのガチャ談」付


なんだか今日は、女性陣の雰囲気がおかしい。朝からみんなに避けられている気がする。


イノチは朝ごはんを食べながらそう感じていた。


朝起きて、顔を洗いに外へ向かうと、薪を持ったメイに会う。

「おはよう」と声をかけると、突然焦ったようにワタワタし始め、手に持っていた薪を豪快に投げ飛ばし、走り去ってしまった。


部屋に戻る途中でもエレナに会うが、何故だか思い切り無視されたし…


着替え終わり、食堂に向かう途中で、ミコトが前を歩いていたので声をかけると、振り向きもせずに走って行ってしまった。


そして今、食堂でフレデリカに会うが…

まぁ、こいつはいつもと一緒だな。おかずを頬張っては、口に白飯をかき込んでいる。



「なぁ…フレデリカ?」


「ングング…わぁんべぇすの(なんですの)?」


「昨日の夜、なんかあったのか?なんか…みんなの様子が変なんだけど…」



一瞬、フレデリカの箸の動きが止まる。

しかし、すぐに動き出すと返事が返ってきた。



「わぁんにも(なんにも)…ングング…わぁりわぁうぇんですわぁ(ありませんですわ)!!」


「本当に…?」


「ンックン…ふぅ…本当ですわ!」



再び別のおかずに手をつけるフレデリカ。

イノチは首を傾げつつ、自分の茶碗が空になったことに気づいた。



「まぁ…いいか。ご飯のおかわりをもらおうっと。」



そう言って立ち上がり、厨房に行こうとした瞬間、いつのまにか茶碗にご飯が盛られていることに気づいた。



「あれ?いっ…いつのまに?」


「今、メイがよそって行きましたわ。」


「へっ?全く見えなかったけど…」


「朝は忙しいんですの…BOSSだって今日もギルドに呼び出されているのでしょう?」


「そりゃそうだが、忙しいって言ってもさ…別に普通によそえばいいじゃん。」


「細かいことを気にする男は嫌われますわ!」



カチャッと音を立てて箸を置くと、フレデリカはそう言って食堂から出て行った。


気づけば、すでにフレデリカの食器も、テーブルの上から無くなっている。


イノチは不思議に思いつつ、箸でつまんだ真っ白なお米を口に運ぶのだった。


一方厨房では…



(まずいまずいまずいまずい!!イノチさまがいる!!いったいどんな顔でお会いすれば…フレデリカさまがあんなこと言うから!!)



隅でしゃがみ込み、顔を真っ赤にしているメイがいた。


昨晩のことが思い出される。




「言葉のとおり!!誰がBOSSの1番になるかは、dead or arrive!!なのですわ!!」


「あんた!いきなり何言ってんの!」


「そっ…そうですよ、フレデリカさん!」



メロンを揺らし、天を指差しているフレデリカへ、エレナとミコトが反論する。

しかし、フレデリカの言葉は止まらない。



「一つ屋根の下に、男一人とそれを取り巻く女たち!!何が起きるかは分かりきったことですわ!エレナもメイも、BOSSへ想うところはあるはずです!!」


「わっ…わたしは今日お会いしたばかりですから…」


「あまぁぁぁい!!突然のニューフェイスの乱入!!これは愛の物語には付き物ですわ!ミコトはある意味でダークホースなのです!!」


「ダッ…ダークホース…!?」


「メイ!!」



未だ理解が追いつかず、目をグルグルと回し、動揺しているメイにフレデリカがはっきりと告げる。



「今日のあなたのミスの原因…それは嫉妬ですわ!突然、見知らぬ女が舞い込んできたと思えば、それにデレデレするBOSS!!それを見たあなたは、気づかぬうちに嫉妬の心を燃やしたのです!!」


「はっ…!」


「さっきから言いたいこと言わせておけば!!フレデリカ!アホなことばかり言ってんじゃないわよ!!」



エレナは痺れを切らしてフレデリカに飛びかかった。


メイはそんな二人をよそに、フレデリカに言われたことで少し冷静になっていた。


たしかにイノチのことを想っている自分がいる。ミコトがやってきて、心の中がざわついたのも確かだ。



(恥ずかしい…そんなことでミスをするなんて…)



メイは口までお湯に浸かって、ブクブク泡をたてる。


そこにミコトがやってきた。



「フレデリカさんはあんな風に言ったけど、わたしは今日会ったばかりだし、友達としてイノチくんのこと見てるよ。」



恥ずかしげに、にこりと笑ってそう告げるミコトを見て、メイは口を湯船から出した。



「いいえ…わたしもまだまだ修行が足りませんでした。イノチさまはみんなのもの…わたしは主人に仕える身。エレナさまのお言葉には感謝しますが、本分はわきまえなければなりません。」


「メイさん…大丈夫…?」


「もちろんです!!」




とは言ったものの、実際にイノチに会うと恥ずかしさが込み上げてくる。


今まで認識していなかったことを認識することで見え方というものは、まったく異なったものになってしまうもの。



「平常心…平常心…」



目をつむって両手で頬を挟み込み、メイがそう自分に言い聞かせていると…



「あっ…やっぱり!メイさん、いるじゃん!お皿…ここに置いておくね!」


「ひゃあぁぁぁう!?!」


「だっ…大丈夫?」



ものすごい声を出したメイを心配して声をかけるイノチ。


メイは顔を真っ赤にして、ぎごちない動きをしている。

手を振ったり、上げたり下げたり、座ったり立ったり…



「だだだだだだだ…大丈夫…大丈夫で…す…!」



訝しげな表情を浮かべるイノチに対して、なんとか声を絞り出してメイがそう言うと、イノチは「無理しないでね」と笑顔で言って厨房から出て行った。


その笑顔を見た瞬間、なんだか心が落ち着いた。モヤモヤしてたものが、スゥッと消えていったのだ。


メイには、その理由がなんとなくわかっている。


メイはイノチが出て行った厨房の入り口を見つめながら、少しだけ頬を赤くして口元で微笑む。



「さて!今日も頑張りますよ!!」



そう言って袖をまくりあげたのだった。





イノチは軽い足取りで部屋に戻ると、ベッドに腰を下ろした。


開いた窓の外に目を向ける。

遠くに『イセ』の中心地が見える。


もう少ししたらギルドに顔を出さねばならない。


昨日の野盗の話を少し調べておくから、もう一度来てくれとアキルドからお願いされたからだ。


そのままベッドに仰向けに倒れ込むと、イノチは携帯を取り出した。



「ムフフフフフ…」



ガチャのアイコンには、『プレミアムガチャ』の他に、『装備ガチャ』と『アイテムガチャ』が新たに加わっているようだ。


イノチは体を再び起こして、いつもの魔法を唱える。


すると目の前には、見慣れたガチャウィンドウが現れた。



「…やばい、鼓動が高鳴るぜ…グフフ」



久々の感覚に、もはや悪役でしかない笑みを浮かべ、ガチャウィンドウを見つめるイノチ。


今日はエレナたちに邪魔される心配はない。なぜなら、昨日ガチャを引くことについて言質をとっているのだから。



「ゆっくり…楽しんでやるぜ…なぁガチャちゃん!」



『プレミアムガチャ』のアイコンをタップし、ガチャ画面に移動する。


ドックンッ…ドックンッ…


久しぶり過ぎて、動悸が激しくなるのを感じる。目の前には1連、5連、10連ガチャのアイコンが並んでいる。



「ここは…ハァハァ…迷わず…ハァハァ…っんぐ…」



イノチは一呼吸おいて、目を閉じ、気持ちを落ち着かせる。そして、カッと開くと、力強く言い放った。



「10連…だっぜぇぇ!!!」



イノチは迷わず10連(黄金石20個)をタップした。



「『エラー:黄金石が足りません!』…?はぁ…?」



もう一度、タップするが…


『エラー:黄金石が足りません!』


タップ…


『エラー:黄金石が足りません!』


タップ…


『エラー:黄金石が足りません!』


タップ…タップ…タップタップタップタップタップタップタップタップタップタップタップタップ…



「だぁぁぁぁぁ!なんでたよ!!」



そう言って、イノチは自分の『黄金石』の所持数を確認する。



『黄金石×13個』…



チーンッ…

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