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23話 欲望の果てに…


「ハァ…あっ、メイ!BOSSはいた?」


「…いえ、館の中にはどこにもいらっしゃいません。」



エントランスでエレナとメイは合流し、イノチの行方を追っていた。



「そう…となると外に出たか…メイ!あなたはもう一度、館の中を捜索してもらえる?あたしは館の周辺を探してくるわ!」


「かしこまりました。」



エレナとメイがそう話し、再び捜索を始めようとしたその時、エントランスの扉が開いた。


二人が目を向けると、そこには清々しい顔を浮かべ、肩にかけたタオルで汗を拭うイノチの姿があった。



「BOSS!?」

「イノチさま!?」



エレナとメイは、そう言ってイノチのもとに駆け寄った。



「ふぅ〜良い汗かいたぜぇ〜!ん…二人ともどうしたんだ?」


「…BOSS、どこに行ってたわけ?」


「あ〜いやさ、今日のダンジョンでの反省を踏まえて、俺も鍛錬しないとなって思って、ちょっとその辺を走ってきたんだ!」


「ふ〜ん…お風呂のあとに?」


「そっ…そうだよ…!入った後に思いついたんだから…仕方…ない…だろ…」



ジト目で見てくるエレナに対して、イノチは口ごもりながら反論するが、エレナの後ろでメイも疑惑の目を向けてくることに気づいて、その威勢も小さくなっていく。



「ふ〜ん…メイ、どう思う?」


「…怪しいです…イノチさま…」


「…ぐっ…そんなに怪しまなくても…」

(やばいな…これ以上詮索されるとバレてしまう…ここは…強行突破だ!)



イノチはそう考えて、大きく咳払いをする。



「さっ…さてと、汗をめっちゃかいたからな…もう一回風呂に行ってくるわ!!アハ…アハハハハ。」



そう言って二人の間を通り抜け、イノチは風呂の準備をしに自室へと歩いていく。


その後ろではエレナとメイが、疑惑の視線をイノチの背中に向けているのであった。





カポーンッ


相変わらず、"ししおどし"の音が心地よく感じる。


イノチは湯気が煙る広々とした浴室で、仁王立ちしている。



「フフフ…ハハハ…ハハハハハハ!」



腕を組み、大きな声で笑い声をあげると、広い浴室にはその声が響き渡っていく。



「ここならば…あの二人に邪魔されずガチャを回せるはずだ…なにせここは、男湯だからな!!ハハハハハハ!!」



嬉しそうな笑みをこぼして、イノチは勝利を確信していた。


なにせ、先ほどのエレナたちの包囲網を潜り抜け、目標であったゴール地点にたどり着いたのだから当然も当然である。



「フフフ…わざわざ二人に風呂へ行くことを伝えたのも、突然、浴室のドアを開けられる危険をなくすため…我ながら策士だな!ハハハ!」



そう高らかに笑うと、イノチは右手を前に掲げてあの言葉を口にした。



「ガチャガチャ!」



右手が白くまばゆい光を放ち出し、目の前にガチャウィンドウが現れる。


初心者応援ガチャの表示はすでになくなっており、ノーマルガチャ、プレミアムガチャの2種類のアイコンが表示されていた。


その下のスライドでは、排出される職業と装備のラインナップが定期的に横移動している。



「さてさて、今回はプレミアムガチャだな!」



迷わず『プレミアムガチャ』のアイコンをタッチするイノチ。


画面が変わると1連、5連、10連のアイコンが3つ表示されて、全ての必要個数が半分になっていることが確認できた。



「ホホホ〜イ!本当に半分だぜ!そんじゃまあ、さっそく引いちゃいますかね!」



そう言って10連のアイコンをタップすると、お決まりの白髪白ひげの男が、相変わらずムキムキな上半身を見せつけるように、担いでいた大きな砂時計を反転させ始めた。



「あれ…?ガチャムービーはスキップに設定したはずなのになんで…?!」



効率よくガチャを回したいイノチは、必ずムービーをスキップ設定する派であった。先日の初心者応援ガチャの時の教訓から、携帯端末でスキップの設定をしていたはずなのだが…



「おかしいな…ちゃんと設定したはずなのに…くそぉ…またムービーを見なきゃならんのか。」



相変わらずムキムキしている男性だが、どことなくいつもよりアピール感が強い気がする。



「前のムービーと、どことなく違う気もするが…スキップだ!」



イノチは画面をタッチする…が、スキップできない。



「あれ…?くそ…!スキップできないぞ!あれあれあれ?!」



何度もタッチを繰り返すが、結局スキップできなかった。反転した砂時計がフォーカスされる瞬間、男がニヤリと笑ったように見えたのだが…


落ちていく砂の中から、輝いた光の球が飛び出してくる。



「くそぉ…なんか煮え切らんが…白球…白球…白…白…白…」



イノチは愚痴をこぼしながらも、飛び出すガチャ結果を一つずつ確認していく。

すると、思いもやらない結果が最後に現れたのだ。



「あれ…?今までにないムービーだ、これはもしや…!!」



そう期待してムービーを見ていると、最後に飛び出した白球に向かって、突然雷が落ちた。しかも、とてつもない爆音とともに…



「どわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」



画面からもその爆風が飛び出してきて、イノチは吹き飛ばされ、そのまま湯船にダイブしてしまった。






ドォォォォォンッ



「なっ…なに!?敵襲!!?」


「いっ…いえ…これは…浴室からです!」



リビングで紅茶を飲んでいた女子たちは、突然の爆発音に驚きの声を上げた。



「BOSS…!メイ、急ぐわよ!!」


「はっ…はい!」



二人はそのまま部屋を後に、浴室へと急いだ。


男湯と書かれた暖簾をくぐり、エレナはそのまま浴室のドアを蹴り開ける。



「BOSS!!大丈夫!?」



浴室に入り、エレナはイノチの姿を探すと、湯船に仰向けに浮いている人影を発見した。



「エレナ…さま、イノチさまは…ご無事で?」



メイも少し遅れて到着する。


股を広げたまま浮かぶイノチを見て、顔を背けて赤らめながらため息を吐つくと、エレナは親指でメイに結果を伝えた。


…が、エレナは異変にすぐに気づく。



湯船に浮かぶイノチの少し横。

桜色の髪を束ね上げ、気持ちよさそうに湯に浸かる後ろ姿に気づいたのだ。



「…何者…?」



腰に装備している『グレンダガー』に手をかけつつ、その人物に話しかける。


すると、その声を待っていたかのように立ち上がり、ゆっくりと振り向いた。



「あらあら、そんな物騒なものしまってもらえるかしら…?」


「あんた…だれよ…?」


「わたくし…?わたくしは真理を追い求める者!『フレデリカ=アールノスト』ですわ!」



ゆっくりと湯船から出て、仁王立ちで立つと、桜色の髪を一度かき上げる。


そして、エレナをビシッと指を差しながら自己紹介する彼女の胸には、たゆんと実る大きな二つの房が揺れる。



「なっ…なんか知らないけど…ムカつくわね…」


「…どうしたのですわ?」



自分と比べながら、ワナワナと怒りを我慢するエレナに、フレデリカは首を傾げる。



「…うぅ…はっ!ガチャは!?ガチャの結果…あれ?」



そんな中で目覚めたイノチは、湯船の中でキョロキョロと周りを確認すると、視界にはエレナともう一人、知らない人物が相対しているのが映った。



「あっ…あれ?なんだ…この状況は?」


「あら…目が覚めたのですわ?」


「君は…だれ?」


「フフ…わたくしはフレデリカ=アールノスト…フレデリカとお呼びくださいな、My BOSS!」



キョトンとするイノチに向かって、フレデリカがくすりと笑うと、改めて自己紹介をする。


イノチの目線は…

たゆんと実る大きな二つの房に…


あっ…鼻血…



「イッ…イノチさまは…エッチです!!」



メイの大きな叫びが、お風呂場に響き渡った。

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