表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
218/290

91話 ミコト×ゼン=…


「ドラゴニックフォームッッッ!!」



ゼンがそう叫ぶと、ミコトの体が輝きに包まれた。

気づけば自分も同じような輝きに飲み込まれていく。



「なっ…なんだぁ!この光は…!?」



一方で、突然目の前で輝き始めたミコトに驚いた八岐大蛇だが、目に染みるほどの強烈な眩しさに目を開けていられない。



「な…この光は何!?」



ミコトも突然のことに驚きを隠せずにいた。

しかし、いつの間にか自分のそばにゼンの姿があることに気づく。



「ミコト…無事でよかった。」


「ゼンちゃん!!」



歓喜と安堵の視線を向けるミコト。

光の中で顔を合わせる二人…ゼンも笑顔を浮かべて話しかける。



「詳しい事情は後で説明するから、今は私に従ってくれないか?」



その言葉にミコトは笑顔でうなずいた。



「もちろんだよ!私はゼンちゃんが無事でいてくれただけで満足だから!でも、この光はいったい…」


「これは私とミコト、二人のスキルの効果だ。」


「私とゼンちゃんの…?」



突然のことに理解が追いつかないのだろう。

ミコトは、キョロキョロと周りの光を確認するように首を動かしている。


そんなミコトに、ゼンは事情を端的に説明を行う。



「時間もないようだから簡単に。これはミコトと私が力を合わせて使うスキルのようだ。そして、その力は覚醒体にも及ぶらしい。」


「覚醒体に…と言うことは八岐大蛇のことも…」


「あぁ…」



覚醒体に及ぶほどの力を発揮できるスキル。

そう聞いてミコトは嬉しそうにゼンに顔を向けた。


対するゼンもミコトの目を見つめる。


そして、二人同時に息を合わせて言葉を発したのだが…



「倒せる!」

「止められる!」



まさかのシンクロならず…

二人とも驚いた顔を浮かべていたが、先に口を開いたのはゼンだった。



「ミコト…まさかオロチのやつを倒さずに止めるつもりなのか!?」


「う…ん…やっぱりダメかな?」



自信なさげにも笑顔を浮かべるミコト。

そんな彼女に理由を問う。



「なぜだ?あれだけ大変な目に遭ったというのに…やつを許せるのか?体もそんなに傷つけられたというのに…」


「そうだね、確かにたくさん嫌なことはされたけど…でも、だからと言ってやっつけちゃうのは、なんとなく違う気がするんだ。うまく説明できないんだけどね。」



そう言って苦笑いを浮かべるミコトを見て、ゼンは改めてあることを感じていた。


今回自分が覚醒体へ至るための条件をクリアできた理由。

それはミコトなのだ、と。


八岐大蛇にすら"思いやり"を向けることができる。

そんな彼女の優しさに触れてきたからこそ、覚醒体へ至る条件をクリアできたのだろう。


まだ、アマテラスの言う"それ"が何なのかは具体的にわからないが…


ゼンはミコトへ笑顔を向けた。



「わかった。ミコトの意思を尊重しよう。」


「ありがとう。」



二人は顔を合わせ、手を取り合う。

そして、自然に頭に浮かんできた一つの言葉を唱えたのだ。



「「フュージョン…」」



その瞬間、ミコトとゼンの体が再び大きく光り輝き、二人の体が重なり合い始める。


ミコトの頭に二本の角が生え、その髪の毛が赤く染まっていく。


両腕、両脚にはゼンと同じように竜種の鱗を纏い、着ていた服は上から下までゼンの鱗の色と同じ真紅へと変化する。


そして、その胸には赤い宝石が一つ現れ、妖艶な輝きを放って煌めいた。


閉じていた瞳をゆっくりと開けば、その中に現れたのは竜種によく似た綺麗な細長い瞳孔。


臀部から伸び上がった赤く美しい尻尾が揺らめくその姿は、まるで小さなゼンのようにも見える。


ミコトの体はスキルにより大きく変貌を遂げたのだった。



「こ…この姿は…あれ?ゼンちゃん?どこに…」



自分の変わりようにミコトは驚いていたが、ゼンの姿がないことに気づく。


キョロキョロと辺りを探しているミコトだったが、頭の中でゼンの声が聞こえてきた。



『私はここにいるぞ、安心しろ。しかし、変わったスキルだな。これは…私自身ががミコトの中に溶け込んでいるような…』


「ゼンちゃんと私が…?」


『あぁ…しかし、今までの私と比べ物にならないほどの力を感じるな。力がとてつもなくみなぎるぞ。』


「そう…なんだ…私にはまだよくわからないけど…なんだかコスプレしてるみたい…で、恥ずかしいな。」



自分の姿を見回して、モジモジと恥ずかしそうに体をよじるミコトと、それを笑うゼン。


そうしているうちに、二人を包んでいた光が静かに霧散していき、目の前には八岐大蛇の姿が現れた。



「て…てめえは…なんだその姿は…?竜…?」



光の中から現れたミコトの姿を見て驚く八岐大蛇。

そんな八岐大蛇に対して、ミコトは眼差しを強めてこう告げた。



「さっきまではやられたい放題だったけど、今度はそうはいかないよ!」



ビシッと指を差してそう口上を切ったミコトに対して、八岐大蛇は先ほどのイラ立ちが再び込み上げてきた。



「なんだかよくわかんねぇけど…やっぱりイラつくぜ。ゼンの野郎はどこへ行った?」


『私はこの子の中にいるぞ!お前は私とミコトで止める!』


「その女の…中?なんだそりゃ!!しかも俺を止めるだと?お前らがか?さっきまで俺にやられっぱなしだったお前らが?…ちょっと姿形が変わったからって、調子に乗るんじゃねぇ!!」


『調子になどのっておらん!私も覚醒したのだ!通常とは違う形だがな!』


「覚醒…だとぉ…!?その姿がそうだってのかぁ!?」


『そうだ!』



そこまで聞いた八岐大蛇は口を閉じ、肩を震わせた。


覚醒?女の中に入り込むことが?それで竜種の覚醒だというのか?


拳を強く握りしめ、音がたつほどに歯を食いしばる。


目の前の同胞は何を言っているのか…


そして、再び口を開く。



「ゼン…てめぇは…何を言ってやがるんだぁぁぁ!!!」



そう叫んだ八岐大蛇は、突然ミコトへと飛びかかった。

そのスピードはこれまでで一番速いと言っていいだろう。


それほどまでに八岐大蛇の怒りは高まっていたのだ。


一気に間合いを詰めて、目の前のミコトに向けて鋭い爪を振りかざす八岐大蛇。


しかし…


その手は空を切った。



「なっ!?」



予想していなかったミコトの動きにその姿を見失う。

驚き、その行方を必死に追うがミコトはどこにもいない。



「くっそ!ど…どこへ行った!?」


「こっちだよ!」



真後ろから聞こえた声に振り返れば、そこには仁王立ちで腕を組むミコトの姿があった。


まさか背後を取られるとは思っていなかった八岐大蛇。



「て…てめぇ…その動きは…」


「だよね!自分でも驚いてます。」


「あぁ…?」



その言葉を聞いた八岐大蛇は訝しげな表情を浮かべた。

しかし、今の動きに一番驚いているのはミコト、そしてゼンだった。



『ミコト…これはすごいぞ…』


「そうみたいだね。八岐大蛇の攻撃がとっても遅く感じて、自分の動きがとっても速く感じた…ていうか、全部の動きがゆっくり見えるよ。」


『確かに…これが覚醒体の力…私とミコトの力か。いけるぞ、ミコト!今度はこちらから仕掛けよう!』


「う…うん!!」


「てめぇら、何をごちゃごちゃと話してやがる!!」



再び咆哮を上げる八岐大蛇。

だが…



「大丈夫!もう話は終わりだから…」


「なっ!?」



気づけば、いつのまにか自分の懐の中にいるミコト。

その姿に八岐大蛇は驚愕した。



(見えなかったぞ…やはりさっきの動きは…!)



その瞬間、ドンッと鈍い音が響いた。

腹部に今まで受けたことがないほどの衝撃を感じる。



「な…?が…はっ…」



吐血しながらものすごい勢いで吹き飛ばされていく八岐大蛇。


木々を薙ぎ倒し、地面を抉って転がっていき、少し離れた位置で轟音とともに大きな砂ほこりを巻き上げた。



「す…すごいパンチ力だね…。」


『う…うむ…』



撃ち抜いた右拳を前に出したまま、目の前の光景に愕然とするミコト。


同様に、ゼンも驚きを隠せないでいる。



「調子に乗るなぁぁぁぁぁ!!!」



突然、砂ほこりの中から八岐大蛇が飛び出してきて、そう叫びながらミコトへと拳を放つ。


…が、ミコトはそれをいとも簡単に左手で受け止めてしまった。


小さな衝撃波が辺りに波紋のように広がっていく。


驚きに目を見開くも、八岐大蛇はすぐに左脚で蹴りを放つ。


しかし、今度は右手でそれを防がれてしまう。



「ちぃっ!!」


焦った八岐大蛇は、今度は尻尾で攻撃しようと体を捻ったが…


不意に、掴んでいた八岐大蛇の拳を手離したミコトは、八岐大蛇が認識できない速さで下から蹴り上げたのだ。



「グハッ…!」



自分が空高く蹴り上げた八岐大蛇の姿を見て、ミコトは小さく笑みをこぼす。



「あは…けっこう高く上がったね。」



ゼンはその言葉に一瞬、違和感を感じたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ