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38話 神にもわからぬことはある


「イザナミ!!どうだったかい?」



声をかけられ、イザナミが振り返るとイザナギの姿が見える。駆け寄ってくる彼を待って、少し不満げに口を開いた。



「どうだったも何も…なぜ私があんな小汚い男の推薦者などにならなければならないのです。」


「その様子だと、無事に会えたみたいだね。」



笑いかけてくるイザナギを見て、鼻を鳴らすイザナミ。



「会えましたし、『例の物』も渡しましたよ。」


「そうかい。それはよかったよかった。彼、使ったのかい?」


「まだ…みたいですね。」



イザナミの顔に複雑な表情が浮かぶ。

どうやら彼女にとっては予想外の行動だったようだ。


イザナギはそれを見てフフッ笑う。



「まぁ、機が来たら使うだろう。その時が楽しみだね。ところで"Z"が呼んでるんだ。今すぐ集まれだってさ。」


「その呼び名やめませんか?いまいちわかりにくいのですよ…」


「でも、意外と気に入ってるんじゃないの?"IZMイザム"だっけ?」



イザナミはそれを聞くともっと嫌そうな顔をした。



「センスがないのですよ。ネーミングに…!」


「ハハハハ…でも、皆の頭文字から取ってるだけだからセンスも何もないさ。」


「もう少しひねりとか考えないのですかね。しかもなぜか私だけ3文字だし…」



イザナミは頬を膨らまして不満を態度で表した。

彼らが話しているのはゼウスが決めたコードネームのこと。


ゼウスは『Z』、ロキは『L』、アマテラスは『A』、イザナギは『I』というように、みな名前の頭文字からそれを決めているが、イザナミはイザナギと頭文字が被るという理由で彼女は『IZM』と命名されたのだ。


確かにイザナギとは一文字しか違わないから仕方ないかもしれない。名前のおしりから取って『G』や『M』というのもわかりにくい。


笑っているイザナギを見て、イザナミはあきれたように小さくため息をついた。



「もういいです…で、ゼウスさまたちはどこにいらっしゃるのですか?」


「ダメだよ、IZM。『Z』って呼ばなきゃあのじいさん怒るんだからさ。そこはよろしくね。で、今日は『世界の間』で話し合いだってさ。」


「ほんと面倒くさい…しかし、『世界の間』では人目も多くあるのでは?良いのでしょうか、そんなところで話し合いだなんて。」


「それは心配いらないって。あそこには個室があるらしいんだ。」


「…個室?ありましたかね、そんなの。」


「僕も初めて知ったよ。まぁ、あそこはZの管轄だからね。ある意味あのじいさんはVIPなんだろうね。」



肩をすくめるイザナギ。

それを見てイザナミは頭を抱えると、再び大きくため息をついた。





「みんな、揃っとるかのぉ?」



大きな体を揺らして、ゼウスが部屋に入ってきた。

他のメンバーは中央に並べられたイスに座り、テーブルを挟んで向き合っている。



「遅ぇよ、じいさん。自分から呼び出しておいて!」


「すまんすまん。ハデスやポセイドンたちに呼び出されてな。少々話すのに時間を食った。」


「げっ!感づかれた?」



ロキのその言葉に、ゼウスは首を横に振った。



「ハデスの奴は自分の眷属がやられたから、それに文句を言ってきおっただけじゃった。」


「ハデスさまの眷属とは…?」



イザナミが疑問を投げかけると、ゼウスは肩をすくめてイスに腰掛ける。



「リュカオーンじゃよ。この前、わしの推薦者が倒したんじゃがそのことに腹を立てとるらしい。」


「それはわらわの推薦者も一緒に倒した、あのユニークモンスターのことですね。」



アマテラスの言葉に、ゼウスが大きくうなずいた。



「あやつ、ズルしておったようだの。」


「ズル…?いったいどんなことしてたんだ?」


「ユニークモンスターに付与する『絶対防御』の耐久力の数値をこそっと上げとったみたいじゃな。」


「きったね!でもまぁ、あの人のやりそうなことだよな!」


「じゃな。しかし、わしの推薦者がそれを凌駕したもんだから難癖つけてきおっての。普通の設定ならランクが低くとも時間をかければ倒せなくはないことを指摘してやったら、黙って帰っていったわ!」



大きく笑っているゼウスの横では、『ウンエイ』ことヘルメスが乾いた笑いを浮かべていた。



(あなたも大概ズルされてますけどね…)



しかし、何かを感じ取ったゼウスが視線を向けてくる。

それに気づいてヘルメスは我関せずと言ったような態度で、再びキーボードに手を走らせ始める。


そこでイザナギが口を開いた。



「ポセイドンさまはどんなご用事だったのです?」


「ポセイドンの奴は…よくわからん。」



再び肩をすくめるゼウスに対して、ロキが声を大きくする。



「なんだよ…よくわからんって。」


「わからんものはわからんのじゃ。ハデスと話し終えてここに向かおうとしたら突然呼び止められてな…だが何を言うでもなく、ただニカッと笑ってどっか行きおったわ。」


「…それってさ…気づかれてるんじゃないの?」


「そうかもしれんな…しかし、まぁ気にすることはないじゃろ。」



ひげを触りながらゼウスはイスにもたれかかる。

大きな巨体を必死に支えるようにギシギシッと音が鳴った。



「ひとまずポセイドンのことは置いておいて、とりあえずは今日の議題について説明しようかの。」



ゼウスがそう告げると、ヘルメスがうなずいてキーボードに指を走らせる。


すると、スクリーンが現れて一人の人物が映し出された。



「これは?」



ロキの言葉にゼウスが答える。

他のメンバーもゼウスの口から出てくる答えを待つ。


しかし…



「わからん。」



その言葉に思わず全員がずっこけた。

1番ずっこけたロキは、テーブルにぶつけた額をさすりながらゼウスを見る。



「おっ…おいおい勘弁してくれよ、じいさん!まさか本当にボケちまったのか?!」


「そうですよ、ゼウスさま。こんな時にご冗談などおやめください。」



ロキとイザナギが声を上げる中、ゼウスはもたれていたイスから体を起こして、真剣な表情を浮かべていた。



「わしはボケとらんし、ふざけてなどおらんよ。今回の議題はこやつの正体について、なのじゃ。」



テーブルに両肘をつき、顔の前で手を組んで真面目な表情をメンバーに向けるゼウス。


その場に緊張感が走る中、ゼウスが再び口を開いた。



「こやつは先日タカハに現れて、アマちゃんとこのタケルっちを襲ったんじゃが…その時、イザナギのとこのミコッちゃんもおっただろ?覚えとるか?」


「あぁ、あの時の…確かに持っているレイピアはあの時と同じものですね。得体の知れない奴ではありましたが…と言うことは、こいつはプレイヤーではなかったということですか?」


「プレイヤーでないし、我々神側の者でもなさそうじゃ。現時点では本当に何者なのかわからんのじゃよ。」


「そっ…そんなことあり得るのか?俺ら神すらも正体がわからないなんて…。」



ゼウスはロキのその言葉に目をつむった。



「…ひとつだけ考えられることがある。」



皆はゼウスのその言葉に耳を傾ける。


ヘルメスがキーボードを打つ音だけが響き、画面ではそのレイピア使いの画像が拡大され、レイピアの柄部分が大きく映し出された。



「この紋様じゃ。」



ゼウスの見据える先には、レイピアの柄部分に彫られたある模様が映る。


するとそれを見たロキが驚いた顔でつぶやいた。



「これって…ガイアの紋様じゃないか?」


「ガイアって言うと…始まりの神のことか?」


「確かに似てますわ。これは大地の…山の紋様ですし…」


「そうですね。ガイアは地母神で大地の象徴と呼ばれていた方ですし…しかしこれは…」



アマテラスの疑問をゼウスが代わりに言葉にする。



「さよう…似て非なるものじゃな。」



一同は理解に欠けると言ったようにゼウスを見ている。

それに対して、ゼウスは皆を見回しながらこう告げた。



「こやつが何者かはわからん。この紋様もガイアのものなのかもわからん。わからないことずくめの人物が、なぜかタカハに現れて我らの推薦者を狙ってきたのか。これをどう考えようか。それが今日の議題じゃ。」

昨日お伝えした通り、今日以降から2日に一度の投稿ペースに変更いたします。


変わらぬご愛読のほど、よろしくお願いします。

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